妖怪クラスの放課後怪奇譚

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序章

フレッシュゴーレムトンカラトンVS鬼・首なし騎士・野干・狼男

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 全身を包帯に包まれ、トンカラトンと化したクラスメイトを目の前に、僕らは大苦戦を強いられていた。まず、先程までと違い、動きが早い。早すぎる。普段の継早であれば自重のこともあり、素早い動きというのはあまりできないのである。「やろうと思えばできる。が、やってしまうと腱とか骨が大変なことになる」と言うのが彼の主張だった。
 そんな彼の恐らく全力であろう動きは僕たちの予想を遥かに超えていた。今僕らがいるのは、先程までの狭い路地などではなく、路地から少し離れた公園である。

 なぜそんな場所にいるかといえば、取り押さえようとした僕らを力尽くで引き剥がした継早トンカラトンは、参戦しようとした夜湖と、トンカラトンの包帯から解放された銀羽目掛けて僕達を投擲。もみくちゃになって吹き飛ばされる僕らを他所に剣持のママチャリを盗んで逃げ出そうとした。
 そのまま走って逃げ出したほうが確実に早かっただろうに、態々自転車に跨るあたりが律儀な怪人である。
 だが、トンカラトンにとって誤算だったのは、彼が乗っ取ったのが体重は余裕で3桁という継早だったことだろう。立ち漕ぎをしようとした矢先に、ママチャリはあっさりと壊れてしまったのだ。これに悲鳴を上げたのは自転車の主である剣持だ。デュラハンである彼にとって愛馬とも呼べる自転車が無残にも目の前で分解したのだから、仕方がないことだろう。非常に良い悲鳴だった。

 銀羽と僕が慌てて追いかけると、彼は全力疾走で逃げ出した。ここで僕らにとって想定外だったのは、予想以上にその動きが俊敏であったことである。
 短距離走選手スプリンターばりの素晴らしい走行スタイルで走る継早トンカラトンと4足機動になって全力で追いかける狼男の銀羽による追いかけっこは、銀羽が公園に追い込むというところで終焉を迎えた。だが、そこからがまた大変であった。
 変身状態の銀羽の動きに容易に対応する程に、トンカラトンの動きが凄まじく向上をしていたのだ。原理としては、実に単純なものでトンカラトンが継早に無理やり全力を出させているということなのだが、その全力が自分に匹敵するものであるということに銀羽は驚きを隠せなかったらしい。
 しかも、変身したことで体躯を巨大にせざるを得ない自分と異なり、継早はそのままのコンパクトな状態での能力向上である。動きの鋭敏さにどうしてもジワジワと差が出てしまい、継早トンカラトンの体を押さえつけようと両手を伸ばした状態で懐に潜られ、ガラ空きになった顎に痛恨のアッパーを叩き込まれて気絶をして伸びてしまった。

 僕らが到着をした頃には丁度その場面であり、普通であれば滅多にお目にかかれない状況に思わず絶句をしてしまったぐらいだ。

 「継早の話だと、全力は出せないってことだったと思うけど…どういうことだ?」
 「多分あの包帯トンカラトンが原因じゃないか?本来ならとっくに分解しててもおかしくはないんだろうけど、あれが強固な皮膚の代わりになってるから全力を出せる、と。銀羽が狼男に変身出来なかったのと違って継早は元々の身体能力が変身した銀羽と同じぐらいだったから、あんな真似が出来るんだろう。で、変身した銀羽と同じぐらいの身体能力で狼男よりも遥かに小柄だから」
 「嗚呼言う結果になったと。戦いたくねぇ――」

 愚痴っても仕方がないだろう。やらなければならないのは確定事項だし、勝算がないわけではない。

 「作戦はこうだ。僕と剣持であいつを引付けるから、夜湖はタイミングを見てあいつに狐火を頼む。さっき銀羽の包帯を燃やせたみたいに、多分あいつの弱点は火だ。」
 「なるほど、確かによく燃えそうだけど…中身ごと燃えるんじゃないか?意識ないなら尚更危険だけど…。」
 「大丈夫じゃね?…多分。」

 全身を包帯に覆われているトンカラトンだが、左目部分だけは剥き出しになっており、真っ赤な瞳がこちらを見据える。どうやら次の標的として認められたらしい。

 「ト……トンカラトンと言ぇ…トンカラトンとYeahhhhhhhhhhhhhh!」

 大分トンカラトンらしくなってきているが、まだどこかおかしい。もしかしたら中身に釣られておかしなことになってるのかもしれないが、元々こういう喋り方なのかもしれない。
 日本刀を使わず、こちらに向かって弾丸のように飛び出してきた継早トンカラトンをまずは僕が真正面からぶつかって押さえ込む。ゴスンともズドンとも聞こえる凄まじい衝撃音が辺りに響き、僕は僅かにたたらを踏むが、なんとか動きを止めることに成功した。すぐに剣持が警棒でトンカラトンの関節を叩いて動きを鈍らせようとし、夜湖が両掌を硬質化させて狐火の準備をしようとするのだが、僕の体は軽々と継早トンカラトンに持ち上げられてしまい、攻撃してこようとした2人に僕を叩きつけて攻撃を邪魔させる。
 用が終わった僕は、そのまま地面に叩きつけられてしまい、視界が明暗する中で見えたのは顔へと振り下ろさんとする継早の右足裏であった。

 「くぉの!っが――!」

 両腕を顔の前で交差して踏みつけスタンピングに耐えるが、何度も何度も繰り返される攻撃に意識が朦朧としていく。いよいよ以てまずいと諦めかけた時、奴は突然その場から離れた。夜湖の狐火である。だが、さっきと違い掌を打ち叩く音が聞こえなかったので、恐らく本物の狐火ではなく狐の幻覚、幻視であろう。

 「た、助かった…。にしてもやばいな、継早トンカラトン。強すぎるだろ。」
 「お前が無事ならそれでいいよ。正直俺1人だったらとっくに諦めてたところだ。」
 「剣持は?あいつは無事じゃないのか?」
 「体はあそこジャングルジムにあるけど、頭が見当たらない。多分どこかに吹き飛ばされたんだと思う。体が動かないところを見るともしかしたら気絶してるのかもな…。」

 大ピンチはどうやら続いているらしい。3人がかりでやりあってもギリギリだっていうのに、更に1人減るとか諦めたくなるな。
 だが、目の前に広がる景色を見てとある解決方法を1つ思いついた。多分怒られるんだろうなと予想をしているのだが――僕は徐に夜湖の襟を掴んで自分に引き寄せると、相手に聞かせないように耳元で囁いてみた。

 「ちょ、なにすんだ―――あ?お前、本気で言ってんの?」
 「やらないよりもずっと勝率は高いはずだ。さぁ、時間はない。それが終わったら次は剣持の頭を探してきてくれ。」
 「チッ…おい、どうなってもしらないぞ!!」

 狐ン、狐ン!と掌を打ち付けて狐火を自分の周囲に複数発生させ、相手目掛けて連続で放たれる。飛んできた狐火を受け止めることなく難なく躱し続けるトンカラトン。それもそうだろう。受け止める=着火を意味するのだから避ける以外の選択肢は奴にはない。だが、避けさせることに意味が有るのだ。夜湖が放った狐火は真っ直ぐに奴へと飛び、避けられてもなお消えずに飛び続ける。そうして到達する場所にいるのは―――


 「熱ッッッチィィィィィィ!?」

 気絶をしていた銀羽がそこにはいた。



 背中部分を大きく切り開かれただけでも災難だというのに、尚且つ味方の攻撃で燃えてしまった銀羽の制服が剣持の自転車に次いで今日一番可哀想な被害者だろう。鎮火させる為に地面をゴロゴロとのたうち回る姿に継早トンカラトンも流石に困惑の色を隠せないようだ。左肩越しに背後を振り返り、事の顛末を見ている。ダメージが多少あるが、それでもなんとか気絶から復活させることに成功し、僕は内心でホッとした。これで火が点いても目が覚め無かったらこんがり焼けた狼が出来上がるだけだからだ。
 
 「ブルーってところだな。良い焼き加減だ、シェフ。」
 「お前、後で絶対に銀羽に謝れよ。」
 「これが無事に終わったらいくらでも謝るよ。それじゃあ予定通り剣持の捜索を頼んだ!」
 「了解!」

 なんにせよ、これで状況は変わったと言えるだろう。真っ向から対峙してわかったが、こいつは基本左目でしかこちらを見ていない。右目部分は塞がっているので、死角となっているのだ。現に今も後ろを振り向くときは左肩越しに左目で見ている。
 そうとわかれば、僕は相手の右側の死角から大きく弧を描くように接近をする。

 こちらの足音に気づいたのか、奴が振り向き直ると、そこには公園の外に飛び出そうとする夜湖の姿が。逃がすかと追いかけようとするトンカラトンの横面に僕の体重を乗せた拳が突き刺さる。包帯越しでも確実に破砕したであろう手応えを感じた。それでも少しよろけるだけで倒れるまででもなかったらしい。結構本気で殴ったんだけど…。だが、体勢を立て直そうとする背後から狼男に変身をした銀羽が羽交い締めにせんと襲いかかった。
 今が好機と、僕も続くように下半身へのタックルを試みるが、背負投げのように銀羽の体をトンカラトンが持ち上げ、そのまま僕の真上へと銀羽を叩き落とした。

 「ぐぇ――」
 「がっ――」

 避けることも出来ず、肺の中の空気を吐き出させられながら潰される僕と、僕のことを気にも留めず立ち上がらんとする銀羽。だが、そんな銀羽の顔にトンカラトンの拳が叩き付けられ、銀羽の巨体は後方へと吹き飛ばされようとしていた。地面に這い蹲った状態の僕だったが、起きざまに飛んでいく銀羽の足首を掴むと、先程トンカラトンにやられたことを今度は銀羽で再現する。

 「銀羽ギンパ、気合入れろ!!」
 「お?ぉぉぉぉぉぉぉ!!?」

 僕の行為に驚く銀羽とトンカラトン。
 
 突然ではあるが、僕は黒髪黒瞳で然程大きくない、平均的でなんら特徴を持ち合わせない躰を持つ、一般人にしか見えない外見である。だが、僕は人間ではない。人間であれば最初の1合で恐らく亡き者にされているだろうし、吹っ飛ぶ狼男の巨体を空中で掴んでそれを武器がわりに振り下ろすこともできない。
 僕の前髪の一房が黒から赤に変わり、角のように逆立つ。角ではない角こそ僕を『鬼』とせしめんとする最大の特徴である。
 鬼は古来より悪さをするものとして人々によって恐れられ、鎮伏され続けてきた。一時は全滅の危機さえあったのだが、世界が変わった『あの日』以降、人と魔が手を取り合って共存をするという世界の規則ルールが定められてから、鬼は全滅の危機からなんとか脱することが出来たのだ。『鬼』ではなく『人』として生活を始める者もあらわれ、そうした者達の子孫は生まれつき角が存在せず、見た目も人と何ら変わりはないのだ。
 だが、一度鬼として覚醒をすると、鬼としての名残からか、こうして角が顕現するようになる。
 普段はただ打たれ強いだけなのだが、角を出して鬼になった僕には狼男やフランケンシュタインにも負けないほどの鬼の腕力が備わる。欠点としては使用後は暫く筋肉痛に襲われるので、両者のように頻繁に使うことなど出来ない点が挙げられる。

 「トーン!?」

 僕が『鬼』であることはクラスメイトは全員が知っている。勿論、継早もだ。だが、僕がこれだけの怪力を有していることを目の前のトンカラトンは知らなかった様子だ。これは、先程の夜湖の幻視で予想がついたのだが、トンカラトンになっている状態では記憶から情報までは引き出せないのではないか、と。夜湖の狐火には必ず『音』がついてまわる。何故なら、夜湖の狐火は硬質化させて掌を打ち合わせない限り発現することがないからだ。割と一緒にいる僕たちは勿論のこと、僕たちよりも親交が長い継早も当然知っていないとおかしいのだ。にも関わらず、先程の幻視を狐火と思い込んで逃げたということはそういう可能性が非常に高かった。
 案の定、こいつは僕に関する情報を何一つ持っていなかった。
 僕や銀羽が地面に叩きつけられた時よりも一際大きな音が周囲に響き渡り、地面を陥没させるだけの衝撃がトンカラトンに襲いかかった。銀羽の下ではトンカラトンは中身の継早諸共ぺしゃんこに潰されて身動きひとつ取れなくなっていることだろう。
 辺りを包み込む静寂と今度こそは仕留めただろうという確かな手応えに、全身からふと力が抜けていく。

 「あー、終わったあー。」

 僕は鬼の状態を解くとその場でペタンと尻餅をついて大げさに手足を伸ばして地面に大の字で横になった。ただの怪人退治のはずが思った以上に大事に発展してしまい、挙句の果てに命懸けの出来事になった。
 とんでもない放課後になってしまったなとごちる僕の傍で、銀羽の体がモゾモゾと動き始めた。狼男に変身した状態であったこともあり、大したダメージにはならなかったのだろうと思った。
 だが、動き出した―――否、銀羽の体はそのまま下にいたトンカラトンに持ち上げられた状態で微動だにしていなかった。


 トンカラトン、敵はまだ無事だったのだ。

 「トンカラトンと言え…トンカラトンと言えぇぇぇぇぇ!!」

 既に終わったと内心安心しきっていた僕は鬼化の影響もあり、動くことが完全にできなかった。駄目だ、と諦めたその刹那、トンカラトンの背後から奴の関節を砕くように警棒が振るわれる。さしもの奴も、背後からの攻撃には全くと言っていいほど対応できず、そのまま持ち上げた銀羽の身体諸共崩れ落ち、更に警棒を離した首なしの体が奴の両足を掴むとその場でグルグルとジャイアントスイングし始めて回転の勢いを十分に乗せて空中へと放り投げた。

 「夜湖、締めは頼んだ!」
 「任せろ、最大火力をお見舞いしてやる!」

 左腕で剣持の首を抱え持った夜湖が自らの尾を顕現させ、体の横で弓形状に硬質化させる。普段の硬質化させた掌を打ち合わせる狐火ではなく、自らの尾と拳を硬質化させてぶつけ合うことで発生させる最大の狐火、『狐火玉』である。
 カッォォォォォォォォン!!と獅子脅しの様な澄んだ音を立てて発生した狐火玉は、飛んできたトンカラトンを飲み込むと一気に燃え盛る火柱へと形を変えた。


 終わった――今度こそ本当に。


 そう、僕たちは強敵を倒せたことによる満足感ですっかり忘れていた――


 トンカラトンの中身ツギハヤのことを。



 ◇

 「くっそー、…制服全部燃やされたとかどうすればいいんだよ…」
 「まぁまぁ、命あっての物種じゃないか。」
 「そうそう、それに、あんなことになるなんて誰にも想像できなかったことだし。」
 「本当だよ。俺だって制服を斬られてしかもちょっと燃やされたしな。」
 「とりあえず……包帯でも巻いておく?」
 「包帯はもう勘弁してくれ!」

 銀羽と違い、こんがりウェルダンどころか、ヴェリーウェルダンクラスまでこんがりと焼けた継早は、どうやらトンカラトンになっているときのことを覚えてはいないようだった。なんにせよ無事だったから良かったじゃないかと皆で宥めようとするも、包帯もろとも彼の制服も一緒に灰になってしまったので、帰るに帰れなくなってしまったのだ。今ここにあるのは…トンカラトンを彷彿とさせる包帯だけだ。
 結局、継早の服は準備できそうもないということになり、近くに落ちてた丁度いいサイズのタライ2つで前と後ろを隠しながらコンビニまで衣服を買いに行くことになった。途中、人目に付くかと心配したが、そんな心配を他所に奇跡的にコンビニまで誰にも合わずに到着することができたのである。


 ホッと胸をなでおろしたのも束の間、なんとその格好で継早がコンビニに入ってしまったのだ。焼け爛れた全裸ゾンビがタライで股間を隠しながら買い物にやってきたのでコンビニの店員が危うく警察を呼びそうになったのを必死に止めた僕たちを誰か褒めて欲しいとさえ思った。

 なんとかTシャツとブリーフパンツと靴下を履かせた継早を連れて、僕らは休憩がてらトンカラトンを倒した公園へと戻ってきた。唯一コンビニに行くことがなかった銀羽がそこにはおり、駆けつけた警察と何やら話をしている様子だった。

 そんな彼だが、僕たちの姿を―――特に、継早の姿を見てわかり易いぐらいに顔を顰めていた。それもそうだろう。服を買いに行ってこの格好だと言うのなら、まだ全身包帯のほうがマシである。
 状況報告を受けていた警察官も、継早の姿を見るや連行しようとしてたのだが、事の顛末を聞かされ、「それならば仕方がないか」と苦虫を噛み潰したような顔をしながらも納得はしてくれた。
 彼らに最初のトンカラトンの被害者であるやせ細ってしまった生徒の保護をお願いし、僕らは戦勝会を始めるのであった。

 「とりあえず、皆お疲れ様。」
 「おー、お疲れ。」
 「久々に骨のあるバトルだったな。」
 「皆、迷惑かけてごめん。」
 「いや、お前は今回ある意味一番の被害者だから。」

 僕、剣持、銀羽、継早、夜湖の順番で労いやら感想やらを口にしながら次々に買ってきた飲み物を開けてはアイスやお菓子をその場で摘む。本当はどこかお店とかに入れたらよかったんだけど、残念ながら継早の格好だとどの店でもドレスチェックで引っかかることだろう。
 少なくとも、これ以上警察沙汰になるのは勘弁である。

 「結局あいつはなんだったんだ?」

 話題はトンカラトンの正体になり、皆が一斉にこちらを向く。別に妖怪博士ではないし、僕も初見だったからなんとも言えないのだけれど…

 「あくまでも予測だし、僕自身全くと言って良いほど納得はしてないんだけど――あれの正体は変化じゃないかと思ってる。」
 「年月を経た物の怪ってことか?」
 「何がそんなに納得できないんだ?俺たちは言われたらすぐに納得できたんだが。」
 
 僕の考え方に首を傾げるのは銀羽と夜湖である。剣持と継早は話を聞いているのだが、それよりもお菓子を食べるのに夢中になっている。

 「本来変化っていうのはそれこそ10年20年なんて短い年数じゃ発生しないものだ。最低でも100年ぐらいってところか。けど、あいつらが変化したと思われる包帯は多分だけどそんなに古いものじゃなかった。1経っているかも怪しい。」
 「本体は燃えちゃってるけどそんな事断言できるのか?」
 「ネットで調べたら『混沌災カオスパンデミック』以前ではあるけど、90年代のテレビから広まった怪人だろ?なんでそれが包帯の変化になって今更出てきたりするのか…正直わからないことだらけだよ。」
 「一反木綿と同じってさっき言ってたけど、種族が似てるとか派生って可能性はどうだ?」
 「本体が包帯だったってだけで同じってわけじゃないだろうな。首に巻きついたり顔を覆ったりして窒息死させるとか、巻かれた反物のような状態でくるくる回りながら素早く飛来し、人を体に巻き込んで空へ飛び去るっていうのが一反木綿のやり口のはずだしな。あと、その体を鋭利な刃物にして切り刻むっていうののもあるけど…」
 「いずれも体を乗っ取るというわけではない、と。肉付きの面みたいに呪われた道具っていう考えはどうだ?」

 なるほど、とその可能性も視野に入れるが―――その辺は僕ではなく乗っ取られた本人に聞いてみるのが良いだろう。

 「継早は乗っ取られてる間は何も覚えていないって言ったけど、感覚的には寝てるのと同じか?」
 「あー…そうだな。言われたら確かに寝てる時に近かったかも。体に包帯が巻き付いたと思ったら、いつの間にか全身が燃えてたし。」
 
 なるほど、本当に何一つ覚えてないんだな。となると、成り代わり目的の変化というのが一番可能性が高いのだろうか。

 「そういえば、銀羽ギンパが乗っ取られなかったのはなんでだ?狼男だったからか?」
 「さぁな――というより、さっきの戦闘の時も思ったがなんだそのギンパって。」
 「新しい呼び名。ギンハネとかウツロって呼ぶより呼びやすいだろ?」
 「まあ、いいけど……。」
 
 不承不承という様子で銀羽も頷いたことだし、呼び方は固定だな。

 「銀羽の場合、多分霊格が相手よりも上だったって可能性があるな。継早の場合、作られて日も浅いし、霊格としてはそこまで高いわけでもなさそうだしな。」
 「霊格か。確かに俺はそういうのとは無縁だわ。」
 「それじゃあデュラハン露峯ももしかしたら乗っ取られる心配はなかったってことか?」
 「それはどうだろう。僕も血としては大分薄いと思うし、やばい可能性の方が高いよ。ほら、剣持と違って特徴とかもそんなに前面的に押し出てるわけじゃないし。」

 そうなのか?と首を傾げられてもさぁ?と首を傾げ返すことしかできない。
 この話し合いは、買ってきた飲み物やお菓子がなくなるまで続き、暗くなり始めた頃に解散の流れとなった。
 長いようで短かった1日はこうして終わりを迎えたのである。



 余談だが、次の日から暫く継早が学校を休んだ。

 どうやら、無理をさせられた影響もあり、家に辿り着くなりバラバラになってしまい、漸く学校にやってこれるようになった頃、そこには知らないクラスメイトが増えていたという。
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