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初めてのおそろいエプロン
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「じゃあ、次の家庭科の調理実習、ペア組んでくださいねー!」
先生の軽やかな声に教室がざわつく。
いつもなら、わいわいと好きな友達同士で自然とペアが決まる――はずなのに。
「……なあ、未来」
隣から聞こえた、ちょっと低めの声。
顔を向けると、晴翔くんが気まずそうに目をそらしたまま言った。
「俺と、組まないか?」
「……うん!」
思わず即答して、晴翔くんが一瞬きょとんとした顔をした後、少し照れたように笑った。
⸻
「へえ、家庭科のペアが一ノ瀬くん? あっちの席で聞いてたけど、まさかと思ったわ~」
放課後、友達にからかわれながら、私は家に帰ってエプロンの準備を始めた。
“実習で使うエプロンは各自用意。汚れてもいいもの”
先生の言葉が頭をよぎる。だけど、ただのエプロンじゃつまらない――私はふと思いついて、家にあった可愛い布地を取り出した。
「ちょっと、頑張ってみようかな……!」
慣れないミシンを動かしながら、夜遅くまでちくちくと縫い続けた。
私が作ったのは、明るい紺色に白いステッチをあしらったシンプルなデザイン。そして、同じ生地でもう一つ、サイズを大きくしてもう一着。
次の日、晴翔くんに渡すときは、正直ドキドキした。
「えっと……よかったら、これ。一緒におそろい、どうかなって思って」
彼は受け取ったエプロンを見つめて、目をぱちぱちさせた後、ほんの少し口元を緩めた。
「……ありがとな。未来、ほんと器用なんだな」
「そ、そんなことないよ……!」
「でも、こういうのってさ……なんか、いいな。特別って感じで」
彼の声に、心がじんとした。
“特別”って、その言葉がすごく嬉しかった。
⸻
調理実習当日。
私たちが並んでエプロンをつけた瞬間、教室が一瞬静まり、そして――
「え、なにそれおそろい!?」
「え、えー!? もしかして付き合ってんの!?」
「きゃーっ! 未来ちゃんやるぅ~!」
あっという間に周囲は騒がしくなった。
「うわっ、やば……未来、注目されてるぞ」
「……し、知らなかった。こんなに目立つなんて……!」
真っ赤になりながらも、なんとか気を取り直して料理を始める。
今回のメニューは、野菜たっぷりの和風ハンバーグと味噌汁。
私が野菜を刻み、晴翔くんがフライパンで焼く。
自然と息も合ってきて、無言でも気まずくなくて――むしろ、心地よかった。
「お前の切った野菜、全部きれいだな。包丁の音、好きかも」
「えっ、なにそれ……変わってるね」
「うるせ。いい意味だよ」
顔を見合わせて笑うと、周囲の友達がまたキャーキャーと騒ぎ出す。
でも、今はそんな声もどこか遠くに感じるくらい、彼との時間が楽しかった。
⸻
実習が終わり、出来上がった料理を食べているとき、結菜ちゃんの話題になった。
「……結菜、最近未来のことばっか話してんだよ。“未来お姉ちゃんがさ~”って」
「えっ、本当?」
「あいつ、未来の作った弁当の写真まで保存してて、“将来のお嫁さんは未来お姉ちゃん!”とか言ってたし」
「うそ……! かわいすぎる……!」
「まぁ、結菜にそこまで言わせるって、けっこうすごいぞ」
照れたように言う彼の横顔を見て、私の胸の奥がぽっと熱くなる。
――こんな時間が、ずっと続けばいいのに。
先生の軽やかな声に教室がざわつく。
いつもなら、わいわいと好きな友達同士で自然とペアが決まる――はずなのに。
「……なあ、未来」
隣から聞こえた、ちょっと低めの声。
顔を向けると、晴翔くんが気まずそうに目をそらしたまま言った。
「俺と、組まないか?」
「……うん!」
思わず即答して、晴翔くんが一瞬きょとんとした顔をした後、少し照れたように笑った。
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「へえ、家庭科のペアが一ノ瀬くん? あっちの席で聞いてたけど、まさかと思ったわ~」
放課後、友達にからかわれながら、私は家に帰ってエプロンの準備を始めた。
“実習で使うエプロンは各自用意。汚れてもいいもの”
先生の言葉が頭をよぎる。だけど、ただのエプロンじゃつまらない――私はふと思いついて、家にあった可愛い布地を取り出した。
「ちょっと、頑張ってみようかな……!」
慣れないミシンを動かしながら、夜遅くまでちくちくと縫い続けた。
私が作ったのは、明るい紺色に白いステッチをあしらったシンプルなデザイン。そして、同じ生地でもう一つ、サイズを大きくしてもう一着。
次の日、晴翔くんに渡すときは、正直ドキドキした。
「えっと……よかったら、これ。一緒におそろい、どうかなって思って」
彼は受け取ったエプロンを見つめて、目をぱちぱちさせた後、ほんの少し口元を緩めた。
「……ありがとな。未来、ほんと器用なんだな」
「そ、そんなことないよ……!」
「でも、こういうのってさ……なんか、いいな。特別って感じで」
彼の声に、心がじんとした。
“特別”って、その言葉がすごく嬉しかった。
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調理実習当日。
私たちが並んでエプロンをつけた瞬間、教室が一瞬静まり、そして――
「え、なにそれおそろい!?」
「え、えー!? もしかして付き合ってんの!?」
「きゃーっ! 未来ちゃんやるぅ~!」
あっという間に周囲は騒がしくなった。
「うわっ、やば……未来、注目されてるぞ」
「……し、知らなかった。こんなに目立つなんて……!」
真っ赤になりながらも、なんとか気を取り直して料理を始める。
今回のメニューは、野菜たっぷりの和風ハンバーグと味噌汁。
私が野菜を刻み、晴翔くんがフライパンで焼く。
自然と息も合ってきて、無言でも気まずくなくて――むしろ、心地よかった。
「お前の切った野菜、全部きれいだな。包丁の音、好きかも」
「えっ、なにそれ……変わってるね」
「うるせ。いい意味だよ」
顔を見合わせて笑うと、周囲の友達がまたキャーキャーと騒ぎ出す。
でも、今はそんな声もどこか遠くに感じるくらい、彼との時間が楽しかった。
⸻
実習が終わり、出来上がった料理を食べているとき、結菜ちゃんの話題になった。
「……結菜、最近未来のことばっか話してんだよ。“未来お姉ちゃんがさ~”って」
「えっ、本当?」
「あいつ、未来の作った弁当の写真まで保存してて、“将来のお嫁さんは未来お姉ちゃん!”とか言ってたし」
「うそ……! かわいすぎる……!」
「まぁ、結菜にそこまで言わせるって、けっこうすごいぞ」
照れたように言う彼の横顔を見て、私の胸の奥がぽっと熱くなる。
――こんな時間が、ずっと続けばいいのに。
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