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バレンタイン作戦会議!
しおりを挟む2月に入り、街中もすっかりピンクとチョコの香りに包まれはじめた頃。
学校の廊下でも、バレンタインの話題があちこちで聞こえるようになってきた。
「ねぇねぇ、未来ちゃんは誰にチョコ渡すの~?」
「えっ!? わ、私? そ、そんなのまだ……」
「え~? 一ノ瀬くんじゃないの? この前の調理実習のアレ見たら、誰でもそう思うでしょ~!」
「そ、そうなのかな……?」
心臓がバクバクするのを感じながら、私は頬を押さえてごまかした。
⸻
その日の放課後。
私は、なんと一ノ瀬家に招かれていた。
理由は――
「未来お姉ちゃんっ、チョコ作り教えて!!」
と、結菜ちゃんが目を輝かせてお願いしてきたから。
「お兄ちゃんにあげるの! いつも未来お姉ちゃんの作ったごはんばっかり“おいしい”って言ってるから、今回は結菜がびっくりさせるの!」
その健気さに胸を打たれて、私は快く引き受けたのだった。
⸻
キッチンでは、エプロンをつけた結菜ちゃんが真剣な表情でチョコを混ぜていた。
「未来お姉ちゃん、これ、ちゃんと溶けてる?」
「うん、バッチリ! 焦げてないし、上手にできてるよ」
「えへへ~、やった!」
彼女の笑顔につられて、私も自然と笑ってしまう。
まるで本当の妹みたいだ――そう思った、そのとき。
「……なにやってんの」
リビングからひょこっと顔を出した晴翔くんが、ちょっと呆れたような、でもどこか楽しそうな顔でこっちを見ていた。
「お兄ちゃんに内緒だってば! 入ってこないでよ~!」
「いや、俺の家なんだけど……」
「うるさいっ! 未来お姉ちゃん、追い出して!」
「ふふっ。はいはい、晴翔くん、少しおとなしくしててね」
「なんで俺が……」
肩をすくめてリビングへ戻る彼の背中を見ながら、結菜ちゃんがそっと耳打ちしてきた。
「未来お姉ちゃんって、お兄ちゃんのこと好きなんでしょ?」
「っ……!」
「なんかね、結菜、わかっちゃった。だって未来お姉ちゃんといるときのお兄ちゃん、すっごく優しい顔してるもん」
私は顔が熱くなるのを感じながら、慌てて視線をそらした。
「で、バレンタインに渡すの?」
「う……うん。迷ってるけど……やっぱり、ちゃんと渡したいって思ってる」
「そっか! じゃあ、結菜と一緒に頑張ろう作戦会議だね!」
小さな手で私の手をぎゅっと握ってくれるそのぬくもりが、やけに心強かった。
⸻
作戦会議と称して、私たちはいろんなアイデアを出し合った。
ガトーショコラに、トリュフに、ハート型のクッキー。
そのうち、笑いながらお菓子を食べ始めて、結局どれも美味しくて決められなかった。
「ねえ、未来お姉ちゃん」
「うん?」
「チョコって、あげる人に伝えたい気持ちがあるから作るんだよね?」
「……うん、そうだね」
「だったら、未来お姉ちゃんの“ありがとう”とか、“だいすき”とか、ちゃんと伝わるお菓子にしようよ!」
「……うん!」
小さな女の子の一言が、私の背中をそっと押してくれた。
⸻
その夜。
私はひとり、レシピノートを広げて、ひとつのチョコレシピを書き始めた。
“やさしい甘さの、未来の気持ちチョコ”
誰かに伝えたい気持ちがあるって、ちょっとこわくて、でもすごくあったかい。
勇気を出して、ちゃんと伝えられたら――
きっと、なにかが変わる気がする。
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