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番外編 この先の未来も君と
しおりを挟むそれは、春の終わりのことだった。
ふたりで訪れたのは、懐かしい丘の上――高校時代、夕陽を眺めながら将来の話をした場所だった。
「……この景色、久しぶりだね」
「うん。あの時は、まだ夢の途中だったな」
未来は穏やかに笑う。けれど、胸の奥が不思議とざわついていた。彼がどこか、いつもと違う気配をまとっていたからだ。
「未来」
その名を呼ばれ、私は彼を見つめた。
彼は一度、大きく息を吸い込んで――ゆっくりと、ポケットから小さな箱を取り出した。
「……俺、ずっと思ってたんだ。未来と一緒にいると、何気ない日々がすごく幸せで。
きっと、この先も、君とだったら乗り越えていけるって」
箱を開けると、そこにはシンプルで温かみのあるリングが入っていた。
「未来。俺と結婚してください。これからもずっと、隣で笑っていてほしい」
言葉に、涙が溢れそうになる。
嬉しさと驚きと、過去の自分では想像もできなかった未来が、目の前にある。
「……はい。わたしも、ずっと一緒にいたいです。家族になろう、晴翔くん」
指輪が左手にはまった瞬間、風がふわりと吹いて桜の花びらが舞った。
この場所で語った“夢”が、今、ひとつ叶ったんだ。
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