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再開、そして逆転の始まり
しおりを挟む王都の夜を彩る盛大な舞踏会――それは、新しい季節の到来とともに、貴族たちが社交の場で再会を果たす華やかな催しだった。
今年の主催は、クラウゼン公爵家。
王国で王家に次ぐ家格を誇るこの家は、軍事と財政の要を担い、王宮内でも大きな影響力を持っている。貴族たちはこの舞踏会に招かれることが、何よりの名誉と感じていた。
そして私は、その公爵家の次期当主であるユリウス様から、正式に招待状を受け取っていた。
「リリアーヌ嬢、お迎えに参りました」
舞踏会当日、彼は自ら馬車を駆って私を迎えに来てくれた。
「……本当に来てくださったのですね」
「当然です。貴女に似合う夜を演出するのは、僕の特権ですから」
彼はさらりとそう言って、私の手を取り、馬車へとエスコートした。
煌びやかな会場に到着すると、招待客たちの視線が一斉に私たちに注がれた。
私は深紅のドレスを身にまとい、背筋を伸ばして歩いた。ユリウス様の腕に抱かれながら、恐れることなく。
そのときだった。
「あれは……リリアーヌ嬢では?」
「隣にいるのはクラウゼン公爵家のユリウス様!? まさか、あの二人が……!」
ざわめきが広がる中、見覚えのある姿が視界に入った。
――ジークフリート王太子と、セレナ・ヴィスコンティ嬢。
元婚約者とその新しい婚約者。あの日、私のすべてを切り捨てた二人が、そこにいた。
セレナは可憐なレモンイエローのドレスを着ていたが、どこか落ち着かない様子だった。ジークは相変わらずの威厳を装っているものの、その視線は私とユリウス様に釘付けだった。
やがてユリウス様が、私に耳打ちした。
「さあ、リリアーヌ嬢。最初のダンスは、ぜひ僕と」
「光栄ですわ」
音楽が流れ、私たちは舞踏会の中央へと進んだ。
ユリウス様のリードは見事で、私はまるで風に乗るように軽やかに舞った。視線の先にジークが立っているのを意識しながら、私は決して視線を合わせずに笑みを保ち続けた。
――私はもう、貴方の影ではない。
踊り終えたとき、周囲から拍手が沸き起こる。貴族たちは私を「哀れな婚約破棄された令嬢」ではなく、「新たな社交界の花」として見ていた。
「……リリアーヌ、話がある」
舞踏会の途中、ジークが私の前に現れた。セレナの手を引き、わざわざ来たらしい。
「今さら何のご用でしょうか、殿下」
「君がここに来るとは思っていなかった。しかもユリウスと……」
その声には、明らかに焦りと苛立ちが混じっていた。
「ユリウス様とご一緒することに、何か不都合でも?」
私が問い返すと、セレナが割り込むように口を開いた。
「やっぱり、あなたは最初からユリウス様を狙っていたのね。殿下との婚約を盾にして……」
「そのようなつまらぬ妄想は、日記帳にでもお書きなさいませ、セレナ嬢」
私が微笑みを浮かべて言い放つと、セレナは顔を真っ赤にし、ジークは言葉を失った。
その様子を見ていたユリウス様が、私の肩をそっと抱いた。
「殿下、リリアーヌ嬢は今や私にとって大切な存在です。ご不快でしたら、どうぞご退場を」
ユリウス様の声は静かだったが、その威圧感は確かに周囲を黙らせた。
ジークとセレナは何も言えず、その場を後にした。
――これが、私の逆転の始まり。
私は過去に縛られない。
この手で、幸せを掴みにいくのだから。
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