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幸せな結末
しおりを挟む花の香りが満ちる大聖堂の中、私は純白のドレスを身にまとって立っていた。
鐘の音が高らかに鳴り響き、王都中に祝福を告げる。
――今日は、私とユリウス様の結婚式。
出席者の中には、各地の貴族だけでなく、王家の高官たち、さらには外国の使節団の姿もあった。それだけ、クラウゼン公爵家の跡継ぎであるユリウス様の結婚は、国の未来にも関わる重大な出来事だったのだ。
それでも、彼はこう言ってくれた。
「これは政略結婚ではない。僕が愛するたった一人の女性と結ばれる日だ」
私の手をしっかりと握るユリウス様の瞳に、偽りはなかった。
かつて、私は婚約破棄という屈辱を受け、社交界から嘲笑された。
でも――今、私の隣にいるのは、誰よりも誇り高く、誰よりも私を大切にしてくれる人。
「愛しています、リリアーヌ」
「私も……心から、愛していますわ」
誓いの言葉とともに、祝福の光が聖堂に降り注ぐ。
そして、私たちは静かに唇を重ねた。
***
結婚から数ヶ月が経ち、私は公爵家の当主夫人として忙しい日々を送っていた。
けれど、ユリウス様は常に私の隣にいてくれる。
「今日は城下の孤児院へ寄付を届けに行こうと思っているの。あの子たちにも未来を選ぶ自由があるべきだから」
「素晴らしい考えだ、リリアーヌ。君の優しさが、この国を変えていくよ」
政略や虚飾ではなく、人の心に寄り添う統治を――それが私たちの願いだった。
ふと、ふたりきりの夜。ユリウス様が、私の肩を抱いてささやいた。
「王太子は後悔しているだろう。彼が手放したものの価値を、誰よりも僕が知っているから。でも私はリリアーヌを愛しているからね。ずっと手放さないよ」
その言葉に、私は笑って首を振った。
「私は、あの婚約破棄に感謝すらしています。あれがなければ、あなたに出会えなかったから」
傷ついた過去すらも、今では幸せへと続く道のりだったのだ。
***
やがて季節は巡り、我が家には新たな命が宿った。
家族が増えるという喜びを噛みしめながら、私は確かに感じていた。
――私はもう、かつての「捨てられた令嬢」ではない。
私は、愛され、選ばれ、自らの力で未来を掴んだひとりの女性。
そして今、私は心から思う。
――婚約破棄、ありがとう。
それがなければ、私は本当の幸せにたどり着けなかった。
これからも私は、愛する人と共に歩んでいく。
ずっとずっと、幸せな日々を紡ぎながら――。
*完*
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