女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ

文字の大きさ
4 / 39

3. こだわり強い侯爵令嬢とのお茶会

大きな窓から差し込む光が、磨き上げられた床に揺らめいていた。

私は深呼吸をひとつした。

(……今日は、侯爵令嬢とのお茶会)

今年デビューした高位令嬢の一人。
金髪碧眼に強いこだわりを持つ――リュシエンヌ侯爵令嬢。

噂では、少しでも趣味が合わない相手とはすぐ言い争いになるらしい。

扉が開く。

「……あなたが伯爵令嬢?」

澄んだ声とともに、彼女が現れた。

流れるような金髪。
美しく澄んだ碧眼。

まるで絵本の中の王女様みたいだった。

「本日はお招きありがとうございます」

私が礼をすると、彼女は椅子に座りながらじっとこちらを見る。

「あなた、一応金髪なのね」

いきなり髪色の話。

私は少しだけ笑った。

「そうですね。リュシエンヌ様のような輝く金色ではなく、淡い金色ですが」

「私、幼い頃から物語が好きでしたの。理想の王子様は――金髪碧眼。だから、将来の相手も絶対にそうでなければ嫌。色にもこだわりがあって、輝く金髪と澄んだ濃い碧眼でないとね」

はっきりとした宣言。

普通ならここで反論なり、相手が否定して空気がピリつくのかもしれない。

(……でも)

私は心の中で、前世の仕事を思い出した。

――営業先のお客様だと思えばいい。

相手の“好き”を尊重する。

それだけ。

「素敵ですね」

私がそう言うと、侯爵令嬢の目が少しだけ丸くなった。

「……否定しないの?」

「どうしてですか? 好きなものを大事にできるって、すごく素敵だと思います」

紅茶が運ばれる。

彼女は無言でカップを手に取った。

「皆、わがままだと言いますのよ。理想が限定的すぎるって」

「理想があるからこそ、ぶれないんじゃないでしょうか」

私がそう言うと、彼女の指先が止まる。

「……あなた、面白いわね」

少しだけ口元が緩んだ。

「でも、あなたの髪の色は私の理想とする金髪ではないですわ」

「そうですね」

素直にうなずく。

「でも、髪色はそれぞれ素敵ですよね」

「え?」

「輝く金髪が似合う人も素敵。でも、違う色でもその人に似合っていたら素敵だと思います」

しばらく沈黙。

窓の外で風が木々を揺らした。

侯爵令嬢はゆっくりと私を観察するように見つめる。

「……あなた、不思議な人」

「よく言われます」

「私の考えに言い返さないし、でも私に賛成しないし」

思わず笑ってしまう。

「好きなものを否定しないのと、自分を偽るのは違うと思うんです」

彼女はふっと小さく息を吐いた。

「なるほどね……だからあなた、周囲と揉めないのかしら」

紅茶を一口。

そして、まっすぐ私を見て言った。

「あなたなら――髪色は合格ですわ」

「……合格、ですか?」

「ええ。私の美学に反しないという意味で」

ほんの少しだけ、意地悪そうな笑み。

「仲良くしてあげてもよろしくてよ」

思わず胸が暖かくなる。

「はい。ぜひ、よろしくお願いします」

初対面とは思えないほど、空気はやわらいでいた。

――こうして、強い理想を持つ侯爵令嬢とのお茶会は、思っていたよりずっと穏やかに終わったのだった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

契約結婚から始まる公爵家改造計画 ~魔力ゴミ令嬢は最強魔術師の胃袋をつかみました~

夢喰るか
恋愛
貧乏男爵令嬢エマは、破格の報酬に惹かれて「人食い公爵」と恐れられるヴォルガード公爵邸の乳母に応募する。そこで出会ったのは、魔力過多症で衰弱する三歳のレオと、冷酷な氷の魔術師ジークフリート。前世の保育士経験を持つエマは、自身の「浄化魔力」で作った料理でレオを救い、契約結婚を結ぶことに。エマの温かさに触れ、ジークフリートの凍りついた心は次第に溶けていく。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

【恋愛】目覚めたら何故か騎士団長の腕の中でした。まさかの異世界トリップのようです?

梅花
恋愛
日下美南(くさかみなみ)はある日、ひょんなことから異世界へとトリップしてしまう。 そして降り立ったのは異世界だったが、まさかの騎士団長ベルゴッドの腕の中。 何で!? しかも、何を思ったのか盛大な勘違いをされてしまって、ベルゴッドに囲われ花嫁に? 堅物騎士団長と恋愛経験皆無の喪女のラブロマンス?

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた

愛丸 リナ
恋愛
 少女は綺麗過ぎた。  整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。  最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?  でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。  クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……  たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた  それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない ______________________________ ATTENTION 自己満小説満載 一話ずつ、出来上がり次第投稿 急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする 文章が変な時があります 恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定 以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください