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9. 部屋で1人考える
自室で私は一人、見合いで最近出会った二人のことを考えていた。
侍女のマリアは今、私の夜の就寝のときに横に置いておく水差しを用意してくれていて傍にいない。
「……かっこよすぎでは?」
誰もいない部屋に、思わず本音が漏れる。
騎士団長子息アレクシス様。
燃えるような赤髪に、鍛えられた体躯。
不器用なのに真っ直ぐで、言葉は少ないけれど嘘がない。
そして宰相子息レオンハルト様。
月光のような銀髪に、透き通る青い瞳。
冷静沈着、理知的で、なのに時折見せる照れたような沈黙。
両手で頬を押さえる。
「……ずるいわ」
あんなに整ったお顔立ちで、真剣にこちらを見つめられるなんて。
胸の奥が、まだ少し熱い。
⸻
けれど。
ふと、昼間の光景が浮かぶ。
先日の公爵令嬢のお茶会。
お茶会の最後、婚約者の1人である侯爵子息が公爵令嬢に会いに来たのと少し時間が重なった。
そして――
まあ、見事なまでに。
「今日も君は世界で一番美しい」
「その微笑みは国宝だ」
「紅茶より甘い」
と、公爵令嬢にずっと愛の言葉を囁いていた。
もちろん、私へお茶会が終わる時間と被ってしまった謝罪、私への賛辞、礼儀なども完璧だった。
公爵令嬢は慣れた様子で微笑み、
満足そうに受け取っていた。
……あの二人は、苦手そう。
(もしかして……)
私はベッドに腰掛け、天蓋を見上げた。
女性が少ないこの世界。
数年前の流行り病で、さらに人数は減った。
年上世代の令嬢の多くは、王子方の婚約者となり、あるいは隣国へ嫁ぎ、
残った高位令嬢の数は、片手で数えられるほど。
その中で。
気位が高く、強く前に出る令嬢たちと、
あの二人が上手くいかなかった可能性。
……ある。
アレクシス様は真面目すぎる。
レオンハルト様は理屈屋で素直じゃない。
強い令嬢と衝突しても、不思議ではない。
だから――
「穏やかな伯爵令嬢に、打診が来た」
ぽつりと呟く。
打算。
家同士の均衡。
高魔力の血統。
きっと、そういう計算もある。
それくらいは、分かっている。
⸻
けれど。
目を閉じると、先日の二人の表情が浮かぶ。
アレクシス様の、真剣な眼差し。
言葉は少なくても、向き合おうとしてくれる姿勢。
レオンハルト様の、わずかな動揺。
冷静であろうとしながら、ちゃんと私を見ようとする瞳。
(……あれは、仕事だけの目ではなかった)
少なくとも。
“消化試合”ではなかった。
真剣だった。
私を、条件としてではなく。
一人の人として見極めようとしていた。
それは、ちゃんと伝わってきた。
胸の奥が、じんわり温かくなる。
⸻
「……もう少し、会ってみようかしら」
小さく呟く。
決めるのは、今ではない。
この世界で、女性は少ない。
高魔力の令嬢は、さらに少ない。
だからこそ。
焦って誰かに選ばれるのではなく。
私も、選びたい。
窓の外では、夜風が静かに木々を揺らしている。
胸の高鳴りを抱えたまま、私はそっと灯りを落とした。
この選択は、義務ではない。
きっと、恋の始まりだ。
侍女のマリアは今、私の夜の就寝のときに横に置いておく水差しを用意してくれていて傍にいない。
「……かっこよすぎでは?」
誰もいない部屋に、思わず本音が漏れる。
騎士団長子息アレクシス様。
燃えるような赤髪に、鍛えられた体躯。
不器用なのに真っ直ぐで、言葉は少ないけれど嘘がない。
そして宰相子息レオンハルト様。
月光のような銀髪に、透き通る青い瞳。
冷静沈着、理知的で、なのに時折見せる照れたような沈黙。
両手で頬を押さえる。
「……ずるいわ」
あんなに整ったお顔立ちで、真剣にこちらを見つめられるなんて。
胸の奥が、まだ少し熱い。
⸻
けれど。
ふと、昼間の光景が浮かぶ。
先日の公爵令嬢のお茶会。
お茶会の最後、婚約者の1人である侯爵子息が公爵令嬢に会いに来たのと少し時間が重なった。
そして――
まあ、見事なまでに。
「今日も君は世界で一番美しい」
「その微笑みは国宝だ」
「紅茶より甘い」
と、公爵令嬢にずっと愛の言葉を囁いていた。
もちろん、私へお茶会が終わる時間と被ってしまった謝罪、私への賛辞、礼儀なども完璧だった。
公爵令嬢は慣れた様子で微笑み、
満足そうに受け取っていた。
……あの二人は、苦手そう。
(もしかして……)
私はベッドに腰掛け、天蓋を見上げた。
女性が少ないこの世界。
数年前の流行り病で、さらに人数は減った。
年上世代の令嬢の多くは、王子方の婚約者となり、あるいは隣国へ嫁ぎ、
残った高位令嬢の数は、片手で数えられるほど。
その中で。
気位が高く、強く前に出る令嬢たちと、
あの二人が上手くいかなかった可能性。
……ある。
アレクシス様は真面目すぎる。
レオンハルト様は理屈屋で素直じゃない。
強い令嬢と衝突しても、不思議ではない。
だから――
「穏やかな伯爵令嬢に、打診が来た」
ぽつりと呟く。
打算。
家同士の均衡。
高魔力の血統。
きっと、そういう計算もある。
それくらいは、分かっている。
⸻
けれど。
目を閉じると、先日の二人の表情が浮かぶ。
アレクシス様の、真剣な眼差し。
言葉は少なくても、向き合おうとしてくれる姿勢。
レオンハルト様の、わずかな動揺。
冷静であろうとしながら、ちゃんと私を見ようとする瞳。
(……あれは、仕事だけの目ではなかった)
少なくとも。
“消化試合”ではなかった。
真剣だった。
私を、条件としてではなく。
一人の人として見極めようとしていた。
それは、ちゃんと伝わってきた。
胸の奥が、じんわり温かくなる。
⸻
「……もう少し、会ってみようかしら」
小さく呟く。
決めるのは、今ではない。
この世界で、女性は少ない。
高魔力の令嬢は、さらに少ない。
だからこそ。
焦って誰かに選ばれるのではなく。
私も、選びたい。
窓の外では、夜風が静かに木々を揺らしている。
胸の高鳴りを抱えたまま、私はそっと灯りを落とした。
この選択は、義務ではない。
きっと、恋の始まりだ。
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