女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ

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11. 誇りを肯定してくれた人「ユリウス視点」

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伯爵邸を出て、馬車に乗り込む。

扉が閉まり、静寂が訪れた。

私は目を閉じ、今日の時間を思い返す。

――エリシア・フロレンティア。

穏やかな瞳の伯爵令嬢。

正直に言えば。

私は今日、彼女が“素敵な女性だといい”と思って訪ねた。

高位貴族としての釣り合い。
魔力の安定性。
家格。

それはもちろん大切だ。

だがそれ以上に、

父の背中を見て育った私にとって、結婚相手は――

誇りを共有できる人であってほしかった。



魔術は、国を守る力だ。

王都を覆う結界。
辺境の防衛陣。
災害を抑える制御式。

すべて、魔術師団の仕事。

父は常に言っていた。

「剣が表の盾なら、魔術は見えぬ盾だ」

私はそれを誇りに思っている。

だが。

女性の多くは、魔術に無関心だ。

難しい。
危険。
退屈。

話をすれば、微笑みはする。
けれど瞳が離れる。

興味がないことは、すぐにわかる。

だから今日も、少しだけ不安だった。

もし彼女もそうなら――

それでも構わない、と。

そう思っていたはずなのに。




制御が得意と彼女がそう言ったとき。

私は、嬉しかった。

魔力について興味があるのかと思ってしまった。

話し出したら、熱が入った。

理論を語った。
安定型保持者の素晴らしい点を説明した。
魔術式についても話してしまった。

……止まらなかった。

気づけば身を乗り出していた。

しまった、と思った。

令嬢にする話ではない。

退屈に違いない。

だが。

彼女は怒らなかった。



ただ静かに、聞いていた。

優しく。

まるでそれが大切な話だと知っているかのように。



「魔術がお好きなのですね」

あの言葉。

嘲りも、社交辞令もない。

純粋な問い。

そして。

「好きなものに真剣な方は、尊敬できます」

胸が、わずかに熱くなった。

尊敬。

魔術に対して向けられた言葉。

私は、父の背を思い出す。

夜遅くまで研究室に籠る姿。
結界の修復で疲れた横顔。

それを誇りだと思って育った。

だがそれを、女性から尊敬されたことは――

ほとんどなかった。





「……なんて優しい方だ」

思わずつぶやく。

興味のない話を、退屈な顔もせず聞いてくれる。

それだけで、どれほど救われるか。

魔術は国を守る力だ。

だが魔術師は、時に孤独だ。

理解されにくい。

熱を語れば変わり者扱い。

それを。

彼女は、まるごと受け止めた。



彼女は素敵な人だった。


あの人となら。



……いや。

何を考えている。

私は首を振る。

こんな感情は知らない。


だが。

「……もう一度、会いたい」





馬車の窓の外、夕日が沈む。

紫がかった光が空を染める。

あの瞳を思い出す。

穏やかで、優しい。

魔術の話をしても、離れなかった瞳。



ただ。

あの人が、私の誇りを肯定してくれた。

それが、嬉しかった。
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