女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ

文字の大きさ
12 / 39

11. 誇りを肯定してくれた人「ユリウス視点」

伯爵邸を出て、馬車に乗り込む。

扉が閉まり、静寂が訪れた。

私は目を閉じ、今日の時間を思い返す。

――エリシア・フロレンティア。

穏やかな瞳の伯爵令嬢。

正直に言えば。

私は今日、彼女が“素敵な女性だといい”と思って訪ねた。

高位貴族としての釣り合い。
魔力の安定性。
家格。

それはもちろん大切だ。

だがそれ以上に、

父の背中を見て育った私にとって、結婚相手は――

誇りを共有できる人であってほしかった。



魔術は、国を守る力だ。

王都を覆う結界。
辺境の防衛陣。
災害を抑える制御式。

すべて、魔術師団の仕事。

父は常に言っていた。

「剣が表の盾なら、魔術は見えぬ盾だ」

私はそれを誇りに思っている。

だが。

女性の多くは、魔術に無関心だ。

難しい。
危険。
退屈。

話をすれば、微笑みはする。
けれど瞳が離れる。

興味がないことは、すぐにわかる。

だから今日も、少しだけ不安だった。

もし彼女もそうなら――

それでも構わない、と。

そう思っていたはずなのに。




制御が得意と彼女がそう言ったとき。

私は、嬉しかった。

魔力について興味があるのかと思ってしまった。

話し出したら、熱が入った。

理論を語った。
安定型保持者の素晴らしい点を説明した。
魔術式についても話してしまった。

……止まらなかった。

気づけば身を乗り出していた。

しまった、と思った。

令嬢にする話ではない。

退屈に違いない。

だが。

彼女は怒らなかった。



ただ静かに、聞いていた。

優しく。

まるでそれが大切な話だと知っているかのように。



「魔術がお好きなのですね」

あの言葉。

嘲りも、社交辞令もない。

純粋な問い。

そして。

「好きなものに真剣な方は、尊敬できます」

胸が、わずかに熱くなった。

尊敬。

魔術に対して向けられた言葉。

私は、父の背を思い出す。

夜遅くまで研究室に籠る姿。
結界の修復で疲れた横顔。

それを誇りだと思って育った。

だがそれを、女性から尊敬されたことは――

ほとんどなかった。





「……なんて優しい方だ」

思わずつぶやく。

興味のない話を、退屈な顔もせず聞いてくれる。

それだけで、どれほど救われるか。

魔術は国を守る力だ。

だが魔術師は、時に孤独だ。

理解されにくい。

熱を語れば変わり者扱い。

それを。

彼女は、まるごと受け止めた。



彼女は素敵な人だった。


あの人となら。



……いや。

何を考えている。

私は首を振る。

こんな感情は知らない。


だが。

「……もう一度、会いたい」





馬車の窓の外、夕日が沈む。

紫がかった光が空を染める。

あの瞳を思い出す。

穏やかで、優しい。

魔術の話をしても、離れなかった瞳。



ただ。

あの人が、私の誇りを肯定してくれた。

それが、嬉しかった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

【恋愛】目覚めたら何故か騎士団長の腕の中でした。まさかの異世界トリップのようです?

梅花
恋愛
日下美南(くさかみなみ)はある日、ひょんなことから異世界へとトリップしてしまう。 そして降り立ったのは異世界だったが、まさかの騎士団長ベルゴッドの腕の中。 何で!? しかも、何を思ったのか盛大な勘違いをされてしまって、ベルゴッドに囲われ花嫁に? 堅物騎士団長と恋愛経験皆無の喪女のラブロマンス?

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

わたしさえいなければ、完璧な王太子だそうです。

ふらり
恋愛
人並外れた美貌・頭脳・スタイル・武勇を持つウィンダリア王国の25歳の王太子は、完璧な王太子だと言われていた。ただし、「婚約者さえいなければ完璧な王太子なのに」と皆が言う。12歳の婚約者、ヴァイオレット・オルトニーは周囲から憐みの目を向けられていた。 「私との婚約は、契約で仕方なくなのかい? もう私に飽きてしまっている? 私は今でも君にこんなに夢中なのに」 13歳年下の婚約者少女に執着溺愛する美貌も能力も人間離れした王太子様と、振り回される周囲のお話です。小説家になろうにて完結しております。少しずつこちらにもあげていくつもりです。ファンタジー要素はちょっぴりです。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。