女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ

文字の大きさ
14 / 39

13. 夜に考える

部屋に戻り、扉が閉まる。

私はそっと息を吐いた。

「……大丈夫」

誰に言うでもなく、小さく呟く。

リュシアン様とのお見合いは、無事に終わった。

ユリウス様との先日のお見合いも大丈夫だったはず。

失礼はなかったはず。

きちんとお話しできた。

そう、できたのだけれど。

胸のあたりが、少し落ち着かない。

―――

ユリウス様。

整った顔立ちに、澄んだ瞳。

魔術の話になると、少しだけ早口になるところ。

誇りを持って語っていらして。

私はただうなずいて聞いていただけなのに、

あの方はどこか嬉しそうだった。

(……あんなふうに喜んでいただけるとは)

思い出すと、じんわりと温かくなる。

ユリウス様は、華やかで目を奪われる美しさ。

洗練されていて、隣に立たれると自然と背筋が伸びる。

きっと王宮でも、ひときわ目を引く方なのだろう。



そして。

リュシアン様。

淡い空色の髪。

光を受けるとやわらかく輝いて。

琥珀色の瞳は、思ったよりも穏やかだった。

英雄、と聞いていたから、

もっと堂々とした方かと思っていたのに。

実際は、どこか自然体で。

少しだけ照れたように笑う。

リュシアン様は、明るくて朗らかな美青年だった。

華やかというより、自然に目を引いてしまう人。

気づけば、もう一度見てしまう。

そんな方。



孤児院のお話をされていた。

声は落ち着いていたけれど、

ほんの少しだけ、真剣で。

私は深く考えず、ただ耳を傾けていた。

……でも。

なぜか、その時の横顔が思い出される。

どうしてでしょう。

特別な言葉を言われたわけではないのに。



ただ静かに語る姿が、心に残っている。

「……不思議な方」

ぽつりと呟く。



私はベッドに腰を下ろす。

姿勢は崩さない。

でも、そっとクッションを抱える。

胸の奥に、ふわりと残る感覚。

ユリウス様は、華やかな光。

リュシアン様は、明るい光。

同じ“素敵”でも、まるで違う。

だから余計に、落ち着かない。



女性が少ないこの世界。

高魔力を持つ私は、求められる立場。

そう理解しているのに。

今日は。

私の方が、少し揺れている。

それが、少しだけ照れくさい。

「……もう少し、お話してみたい」

どちらとも。

そう思ってしまう自分がいる。

それはきっと、悪いことではない。



窓の外に目を向ける。

静かな夜。

胸に灯った小さな感情。

名前はまだ、つけられない。

でも確かに、そこにある。

「……お会いする方みんな素敵で……困りました」

そう言いながら。

頬は、ほんの少しだけ熱かった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

【恋愛】目覚めたら何故か騎士団長の腕の中でした。まさかの異世界トリップのようです?

梅花
恋愛
日下美南(くさかみなみ)はある日、ひょんなことから異世界へとトリップしてしまう。 そして降り立ったのは異世界だったが、まさかの騎士団長ベルゴッドの腕の中。 何で!? しかも、何を思ったのか盛大な勘違いをされてしまって、ベルゴッドに囲われ花嫁に? 堅物騎士団長と恋愛経験皆無の喪女のラブロマンス?

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

わたしさえいなければ、完璧な王太子だそうです。

ふらり
恋愛
人並外れた美貌・頭脳・スタイル・武勇を持つウィンダリア王国の25歳の王太子は、完璧な王太子だと言われていた。ただし、「婚約者さえいなければ完璧な王太子なのに」と皆が言う。12歳の婚約者、ヴァイオレット・オルトニーは周囲から憐みの目を向けられていた。 「私との婚約は、契約で仕方なくなのかい? もう私に飽きてしまっている? 私は今でも君にこんなに夢中なのに」 13歳年下の婚約者少女に執着溺愛する美貌も能力も人間離れした王太子様と、振り回される周囲のお話です。小説家になろうにて完結しております。少しずつこちらにもあげていくつもりです。ファンタジー要素はちょっぴりです。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。