女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ

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19. 企み「男爵令嬢視点」

王都の社交会は、今日も華やかだった。

ローザ・ズーシュは扇子越しに、会場を見渡す。

自分好みの高位貴族の男性を今日も見つけて話しかけなくては。

王都に来たのは——縁を広げるため。

父の命でもあった。


けれど。

(どうして……)

最近のムカつく日を思い出す。



セドリックという侯爵嫡男に目をつけて狙ってみたら、素っ気なくかわされた。

周りにいたセドリックの友人らしき男性に上目遣いで問いかければ、昔から想っている伯爵令嬢がいるらしい。

私のほうが絶対可愛いのに失礼だわ! と憤慨して相手の伯爵令嬢に嫌味を言ってやったらセドリックがやって来て、伯爵令嬢を守っていた。

ムカつくが、爵位は相手側のほうが上だ。

足早に去ってやった。


別の日に、ユリウスという高位貴族が美しかったので近付いたら、またしてもあの女がいた。


エリシア。

あの伯爵令嬢。

まるで自然に囲まれるように、彼女は高位貴族たちの中央にいた。

守られている。

庇われている。

選ばれている。

「……私のほうが絶対可愛いのに」

小さく呟く。

ドレスも、髪も、笑顔も。

磨いてきた。

昔から自分を着飾り、そして周りにチヤホヤされるのが大好きだ。

それなのに。

「あの女は……魔力があるからって」

男たちが性格がどうとか言っていたが、違うだろう。
ただ単に、家柄と魔力があるだけだ。


ローザは、男は顔と爵位と財力がポイントだと思っている。そして女の自分は可愛ければいいのだ。

「生まれつき、たまたま私より爵位と魔力が高いだけじゃない」

胸の奥がひりつく。

ムカつく! イライラする!



父は言った。

「危険だからしばらく王都に行っていてくれ。男爵家はもう一段上へ行く。男を見つけるなら高位貴族がいいだろう。まぁ、ローザは可愛いからたくさんの貴族が放っておかないな」

けれど現実は。

目星をつけた高位貴族たちは、皆——

エリシアの周囲にいた。



「……どうして」

ローザは唇を噛む。


そのとき、ふと思い出す。

英雄騎士リュシアン。


英雄になったし、見目も美しいから夫候補の1人にしてあげようと騎士爵家に圧力をかけようとしたら、彼は王都に行ってしまった。

噂では、伯爵令嬢と見合いをしたらしい。

伯爵令嬢……エリシアに違いない。
だが、見合い段階。

ならば。

(まだ奪える)

魔物が増えれば、彼は必ず派遣される。

戦場へ向かう英雄。

その時に——

自分が寄り添えばいい。

弱った隙を狙えばいい。

「既成事実を作ってしまえば、こっちのものよ」

噂は武器。

同情は盾。


そして父の計画。

書斎で見た小瓶。

甘く不穏な香り。

「これで魔物がたくさん来る。隣国は状況をみて傭兵を貸してくれるらしい。送られた傭兵たちで魔物を討伐し、わしは武勲を上げられる」

男爵家が伯爵家へ上がることだってあるかもしれない。

自分が伯爵令嬢へ。

あのムカつくエリシアという女からリュシアンを奪った上に、同じ爵位になってやる。


「危険だから、王都にいなさい」

父はそう言った。

けれど。

「そんなの、待っていられないわ」

リュシアンをあの女から奪ってやりたい。

自分で掴む。

あの女に奪われた視線を。



「魔力があるからって、何よ」

扇子を強く握る。

「私は、私のやり方で勝つわ」

ローザは王都を発つ決意をした。

嫉妬と焦燥を胸に。

自分こそが選ばれるべき存在だと信じて。



——だが。

その香りが、単なる便利な道具ではなく。

国境を越えた陰謀の一端であることを。

そして。

英雄騎士が、ローザの嘘に絡め取られるような男ではないことを。


彼女はまだ、知らなかった。

それが、男爵家断絶への序章だとも。
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