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本編
72.変化
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思わず顔を見合せた俺達。ピスが誰かの守護獣かもしれないという事は昨日のうちに兄貴にも話をしてあった。だから、守護獣を召喚する魔法式を破壊···それを聞いて一番にピスの事が思い浮かんだんだ。
「あの、関係あるか分からないですけど···」
俺は学園でピスを保護した事、ピスが誰かの守護獣であったかもしれないことを話した。
何故それが分かったかについては蓮家の事情もあるから言うべきか正直迷った。でもピスの主人は召喚出来なくなってしまった事で心配してるかもしれないし、ずっと我が家で預かることも出来ないだろう。その点も考えて楼透との件や蓮家の呪いの件は伏せて、ピスの特徴からその可能性が考えられると言うことを伝えた。
「ふーん、成程ねぇ。こっちでも調べてみよか」
満星さんはカルテにメモを取りながらそう言った。ピスを一度満星さんに診てもらった方がいいか聞いたら動物やモンスターは専門外らしい。ただもしも召喚の魔法式を破壊されていたとしたらピスがこのままどれくらい顕現し続けることが出来るのか心配ということもあって満星さんの知り合いの専門家を紹介してもらえることになった。
「律花クン、あんま無理はせんよーにね。もちろん燈夜クンも。色々気がかりはあるやろけどキミらが倒れたらこの国は終わる······先に逝くんは俺ら老害でええねん。頼りないオジサン達で悪いけど大人は子供を守る為におんねんで?厳島の時は正直油断してたってのは認めるけど安心したって。もう俺らバッチリ本気モードやから······」
その言葉の通り満星さんを包む周りの空気が変わる。言葉や様子からは静かに丁寧にそう言っているが、明らかに雰囲気が違う。怒っているとも冷静になっているとも言い難い雰囲気······五家当主の本気モードに敵では無い俺でさえ殺気を向けられていないというのに鳥肌が立つ。
「うわぁごめんごめん!ついつい漏れ出てしまったわぁ。子を持つ親としてな、他所様の子でも子供は子供や。自分の子が~とか感情移入するとついついやってしまうねん。あちゃぁアメちゃんあげるから許してぇな」
そう言って先程の雰囲気は何処へやら···おどけた様子で机の引き出しから棒付きキャンディを取り出しくれた。···多分これ、小さい子が予防注射とかぐずったりした時用の騙し騙しの飴だよな···。そう思いつつ有難く頂戴した。
家に帰り処方してもらった薬を整理する。頭痛薬と倒れた時に打ったらしい足と腕用の湿布、それと擦り傷用に軟膏。頭痛薬はまた痛くなったら飲めばいいし、軟膏と湿布はお風呂上がりに付ければいい。
「本当に?」
「本当だってば!」
「痛くない?」
「今は大丈夫」
「抱っこしようか?」
「要らん!」
今はより過保護になった兄の相手をしている。···くそ、なんで俺の体はこんなに弱いんだ。これじゃいつまで経っても兄貴の過保護が弱まらないじゃないか。
「きゅぅ」
「あ、ごめんな!いま出してやるから」
鞄に付けた透明な石のついた五センチ程の四角い箱から小さく鳴き声が聞こえた。これ、動物が入ったままのケージごと収納出来るキャリーなんだぜ?透明な石には特別な加工がしてあって中にいる動物へ酸素が問題なく供給されるようになっていて見た目よりも安全性は高いらしい。昨日兄貴がケージと一緒に渡してくれてて、学校では確認手続きの為にキャリーからケージを出していたが家でピスを預かるのに連れて帰って来たんだ。ケージだけでも前世で見た事のある猫用のキャリーと大して変わらない大きさなのに更にコンパクトになるのかと驚いた。
「中は快適だって聞いたけど、やっぱり外と中じゃ違うよな」
「きゅきゅぅっ」
外に出してやるとピスは大きな尻尾をブンブン振って俺の手に擦り寄る。額をグリグリとぶつけてくる様は猫のようでとても可愛い。犬のようで猫のような不思議な感覚だ。
ピスは外に出られてよっぽど嬉しかったのか更に勢いよく尻尾を振りながら俺の周りをグルグルしたり、喉をゴロゴロ鳴らしながら俺に飛びついてきたりしてめちゃくちゃ可愛い。
「きゅっきゃぁっ♡」
「うわっ!ちょっ、やめっ···くすぐったっあははっ」
メインクーン程の大きさがあると飛びつかれたら流石に俺でも受け止めきれず後ろに倒れた。ソファの上だから怪我は無い。が、俺の顔を舐める舌ともふもふな毛が触れて凄くくすぐったい。
「きゃぅっ」
「······僕の律花に何をしてるのかな?ピス」
「きゅ···きゅぅ···ん」
「ちょ、兄貴!動物虐待!!」
「失礼だな······躾だよ」
「ピスが震えてるじゃん!!」
「お兄ちゃんと愛玩動物、どっちが大切?」
「動物を大切にしないヤツは論外」
「うっ···」
ピスと戯れてたら横から出てきた手によって引き剥がされた。ピスは首根っこを掴まれて怯えている。確かに兄貴の言う通り躾は大切だが、もっと優しくしてやらないと駄目だろ······誰かの守護獣だったのかもしれないんだから余計だ。
「兄貴、今だけかもしれないんだからさ」
そう···とりあえず最大で三ヶ月預かることが確定している。まぁ、ピスの本当の主人が見つかったらもっと早まるかもしれないが···。ピスと出会ったのはまだ昨日の事なのにそう思うと寂しく感じる。
「······そうだね。乱暴にしてしまってごめんね、ピス。正直に言おう···僕は君に嫉妬した。···律花にそんな気軽に触れられる君が羨ましく思ったよ」
「きゅぅ!」
「なぁに?許してくれるの···?」
「きゃぁ···きゅきゅぅ♡」
ピスは今度は兄貴をぺろぺろ。···もしかしてピスって天性の人たらしってやつなんじゃ···?そう思うと同時に戯れる二人を見てピスに嫉妬したという兄貴の気持ちも分からないでもなかった。
「律花もおいで」
変なところで察しのいい兄だ。
気づいたら俺の服も兄貴の服もピスの毛だらけになっていた。武市兄弟によってあんなに酷い目にあっていたと言うのにピスは人懐っこい性格でまだ数時間しか遊んでいないのに既に愛しい。
「律花、お風呂に入りたい?」
「んー···入りたいけど」
今日は頭痛で倒れるほどだったんだしお風呂は入らないで体を拭くだけにした方がいいのかな。でも明日も学校あるし···。
「一緒に入ろうか」
「そうだな······っは?」
俺が悩んでいると横から声が。入らない方がいいと言われるかと思って用意してた返事は想定していなかった言葉に意図せず肯定してしまい驚く。
「なんてね。でもお風呂入らないと律花も気持ち悪いでしょ?浴場で体を洗うくらいなら大丈夫だと思うよ。······んー、でも少し不安かな」
♢ ♢ ♢
「浴場でまた倒れてしまったら大変だから」
確かに。確かに大変だよ??
俺は今浴場の更衣室でタオル一枚、全裸の体をを隠している。一方兄貴は濡れてもいいシャツとスラックスを着用したまま浴場にてお湯の湯加減を見ている。
やな予感しかないんだよなぁ。
そう思いつつもタオルで前を隠したまま、手招きする兄の方へ向かう。確かに、確かに体調が万全でない以上こんな状態で一人風呂に入るなんて危ないんだ。確かに。確かにそうなんだ。
執事やメイドに頼めばいいって?残念だけど俺が生まれる少し前に風呂に入ってる母さんに手を出そうとした者がいたらしくそれ以来うちは風呂に入る時は家族と一緒か、一人で入るようになったらしい。言わずもがな、母さんに手を出そうとした人は母さんにボロボロにやられるわ、父さんにギタギタにされるわとまで聞いたがその後どうなったかは知らん。まぁ、そういうことで誰かに頼むのなら兄貴しかいないんだ。
学校の教室ほどある広い浴場。勿論湯船も広い···が、今日は湯船には浸からない。前世と違いシャワーはない為湯船のお湯を桶に汲んで体にかける感じだ。
「体冷えちゃうから早くおいで」
「···いや···その······兄貴は更衣室で待っててくんない?」
「扉開けたままだと蒸気が逃げて温まらないでしょ?それに扉を閉めたとしたら万が一の時に律花を受け止めることが出来ない······今日だって僕が傍にいたら転倒させる事なんて無かったのに···」
風呂用の椅子を引き寄せながら「それに律花の様子が少しでもおかしい様なら直ぐに気づいてあげられるからね」と付け加える兄。···どうしよう、恥ずかしいとか言ってこの状況を回避するか?いや、恥ずかしいとか今更だし他に理由が思いつかねぇ······。結局反論するのを諦めた俺は大人しく椅子に座った。
「律花は大人しく座っててね。昔みたいに洗ってあげる」
「え、いいよ···自分で洗う」
「ふふ···もしかしてまたエッチなことされちゃうと思ってる?」
「っは!?」
「大丈夫。色々落ち着くまでは何もしないから。いやせめてフェスタが無事に終わってから···かな?怯えさせてごめんね」
その言葉通り、髪を洗ってくれる時も背中を流してくれる時も兄は昔の話や共通の話題を話すくらいで普段通り変わらなかった。終始心配していたようなことは本当に何もなかった。タオルで濡れた体を拭き、用意していたパジャマに着替える。隣では兄が蒸気で濡れた髪をタオルで拭いていた。
「フェスタ一緒に出てあげられなくてごめんね」
「ふはっ、確かに兄貴がいたら最強だよな!というか団体戦なのに兄貴だけで無双しそうじゃん」
「それはそうだね。律花を狙う奴には容赦する気は無いよ」
「あはは······今回は序列の?」
「そうだなぁ······今回は少し違うかな」
兄貴は少し言い淀む。兄貴が今回のフェスタに一人で出場する理由······序列は既に三位、ポイント的にはギルドの依頼をこなせば序列を上げることも維持することも十分に可能だ。
「···僕は正直自分でも強い方だと思っていたよ。でも厳島での戦闘で今まで僕よりも遥かに戦闘力の劣っていた人間に負けた······律花を守れなかったんだ。だから相手が魔人化した人であろうと次は律花守れるように、改めて自分を見直してみようと思って······それが一番の理由かな?」
そう言った兄の横顔は今まで見慣れたものの筈なのに何処か大人びて見えた。「それにあの男と少しでも差をつけて置きたいからね」そう付け加えると少し屈んで顔を近づけてウィンクした。···くそ、やることがスマート過ぎてイケメンの破壊力半端ない。そう思うと同時に何か物足りなく感じた。
「あの、関係あるか分からないですけど···」
俺は学園でピスを保護した事、ピスが誰かの守護獣であったかもしれないことを話した。
何故それが分かったかについては蓮家の事情もあるから言うべきか正直迷った。でもピスの主人は召喚出来なくなってしまった事で心配してるかもしれないし、ずっと我が家で預かることも出来ないだろう。その点も考えて楼透との件や蓮家の呪いの件は伏せて、ピスの特徴からその可能性が考えられると言うことを伝えた。
「ふーん、成程ねぇ。こっちでも調べてみよか」
満星さんはカルテにメモを取りながらそう言った。ピスを一度満星さんに診てもらった方がいいか聞いたら動物やモンスターは専門外らしい。ただもしも召喚の魔法式を破壊されていたとしたらピスがこのままどれくらい顕現し続けることが出来るのか心配ということもあって満星さんの知り合いの専門家を紹介してもらえることになった。
「律花クン、あんま無理はせんよーにね。もちろん燈夜クンも。色々気がかりはあるやろけどキミらが倒れたらこの国は終わる······先に逝くんは俺ら老害でええねん。頼りないオジサン達で悪いけど大人は子供を守る為におんねんで?厳島の時は正直油断してたってのは認めるけど安心したって。もう俺らバッチリ本気モードやから······」
その言葉の通り満星さんを包む周りの空気が変わる。言葉や様子からは静かに丁寧にそう言っているが、明らかに雰囲気が違う。怒っているとも冷静になっているとも言い難い雰囲気······五家当主の本気モードに敵では無い俺でさえ殺気を向けられていないというのに鳥肌が立つ。
「うわぁごめんごめん!ついつい漏れ出てしまったわぁ。子を持つ親としてな、他所様の子でも子供は子供や。自分の子が~とか感情移入するとついついやってしまうねん。あちゃぁアメちゃんあげるから許してぇな」
そう言って先程の雰囲気は何処へやら···おどけた様子で机の引き出しから棒付きキャンディを取り出しくれた。···多分これ、小さい子が予防注射とかぐずったりした時用の騙し騙しの飴だよな···。そう思いつつ有難く頂戴した。
家に帰り処方してもらった薬を整理する。頭痛薬と倒れた時に打ったらしい足と腕用の湿布、それと擦り傷用に軟膏。頭痛薬はまた痛くなったら飲めばいいし、軟膏と湿布はお風呂上がりに付ければいい。
「本当に?」
「本当だってば!」
「痛くない?」
「今は大丈夫」
「抱っこしようか?」
「要らん!」
今はより過保護になった兄の相手をしている。···くそ、なんで俺の体はこんなに弱いんだ。これじゃいつまで経っても兄貴の過保護が弱まらないじゃないか。
「きゅぅ」
「あ、ごめんな!いま出してやるから」
鞄に付けた透明な石のついた五センチ程の四角い箱から小さく鳴き声が聞こえた。これ、動物が入ったままのケージごと収納出来るキャリーなんだぜ?透明な石には特別な加工がしてあって中にいる動物へ酸素が問題なく供給されるようになっていて見た目よりも安全性は高いらしい。昨日兄貴がケージと一緒に渡してくれてて、学校では確認手続きの為にキャリーからケージを出していたが家でピスを預かるのに連れて帰って来たんだ。ケージだけでも前世で見た事のある猫用のキャリーと大して変わらない大きさなのに更にコンパクトになるのかと驚いた。
「中は快適だって聞いたけど、やっぱり外と中じゃ違うよな」
「きゅきゅぅっ」
外に出してやるとピスは大きな尻尾をブンブン振って俺の手に擦り寄る。額をグリグリとぶつけてくる様は猫のようでとても可愛い。犬のようで猫のような不思議な感覚だ。
ピスは外に出られてよっぽど嬉しかったのか更に勢いよく尻尾を振りながら俺の周りをグルグルしたり、喉をゴロゴロ鳴らしながら俺に飛びついてきたりしてめちゃくちゃ可愛い。
「きゅっきゃぁっ♡」
「うわっ!ちょっ、やめっ···くすぐったっあははっ」
メインクーン程の大きさがあると飛びつかれたら流石に俺でも受け止めきれず後ろに倒れた。ソファの上だから怪我は無い。が、俺の顔を舐める舌ともふもふな毛が触れて凄くくすぐったい。
「きゃぅっ」
「······僕の律花に何をしてるのかな?ピス」
「きゅ···きゅぅ···ん」
「ちょ、兄貴!動物虐待!!」
「失礼だな······躾だよ」
「ピスが震えてるじゃん!!」
「お兄ちゃんと愛玩動物、どっちが大切?」
「動物を大切にしないヤツは論外」
「うっ···」
ピスと戯れてたら横から出てきた手によって引き剥がされた。ピスは首根っこを掴まれて怯えている。確かに兄貴の言う通り躾は大切だが、もっと優しくしてやらないと駄目だろ······誰かの守護獣だったのかもしれないんだから余計だ。
「兄貴、今だけかもしれないんだからさ」
そう···とりあえず最大で三ヶ月預かることが確定している。まぁ、ピスの本当の主人が見つかったらもっと早まるかもしれないが···。ピスと出会ったのはまだ昨日の事なのにそう思うと寂しく感じる。
「······そうだね。乱暴にしてしまってごめんね、ピス。正直に言おう···僕は君に嫉妬した。···律花にそんな気軽に触れられる君が羨ましく思ったよ」
「きゅぅ!」
「なぁに?許してくれるの···?」
「きゃぁ···きゅきゅぅ♡」
ピスは今度は兄貴をぺろぺろ。···もしかしてピスって天性の人たらしってやつなんじゃ···?そう思うと同時に戯れる二人を見てピスに嫉妬したという兄貴の気持ちも分からないでもなかった。
「律花もおいで」
変なところで察しのいい兄だ。
気づいたら俺の服も兄貴の服もピスの毛だらけになっていた。武市兄弟によってあんなに酷い目にあっていたと言うのにピスは人懐っこい性格でまだ数時間しか遊んでいないのに既に愛しい。
「律花、お風呂に入りたい?」
「んー···入りたいけど」
今日は頭痛で倒れるほどだったんだしお風呂は入らないで体を拭くだけにした方がいいのかな。でも明日も学校あるし···。
「一緒に入ろうか」
「そうだな······っは?」
俺が悩んでいると横から声が。入らない方がいいと言われるかと思って用意してた返事は想定していなかった言葉に意図せず肯定してしまい驚く。
「なんてね。でもお風呂入らないと律花も気持ち悪いでしょ?浴場で体を洗うくらいなら大丈夫だと思うよ。······んー、でも少し不安かな」
♢ ♢ ♢
「浴場でまた倒れてしまったら大変だから」
確かに。確かに大変だよ??
俺は今浴場の更衣室でタオル一枚、全裸の体をを隠している。一方兄貴は濡れてもいいシャツとスラックスを着用したまま浴場にてお湯の湯加減を見ている。
やな予感しかないんだよなぁ。
そう思いつつもタオルで前を隠したまま、手招きする兄の方へ向かう。確かに、確かに体調が万全でない以上こんな状態で一人風呂に入るなんて危ないんだ。確かに。確かにそうなんだ。
執事やメイドに頼めばいいって?残念だけど俺が生まれる少し前に風呂に入ってる母さんに手を出そうとした者がいたらしくそれ以来うちは風呂に入る時は家族と一緒か、一人で入るようになったらしい。言わずもがな、母さんに手を出そうとした人は母さんにボロボロにやられるわ、父さんにギタギタにされるわとまで聞いたがその後どうなったかは知らん。まぁ、そういうことで誰かに頼むのなら兄貴しかいないんだ。
学校の教室ほどある広い浴場。勿論湯船も広い···が、今日は湯船には浸からない。前世と違いシャワーはない為湯船のお湯を桶に汲んで体にかける感じだ。
「体冷えちゃうから早くおいで」
「···いや···その······兄貴は更衣室で待っててくんない?」
「扉開けたままだと蒸気が逃げて温まらないでしょ?それに扉を閉めたとしたら万が一の時に律花を受け止めることが出来ない······今日だって僕が傍にいたら転倒させる事なんて無かったのに···」
風呂用の椅子を引き寄せながら「それに律花の様子が少しでもおかしい様なら直ぐに気づいてあげられるからね」と付け加える兄。···どうしよう、恥ずかしいとか言ってこの状況を回避するか?いや、恥ずかしいとか今更だし他に理由が思いつかねぇ······。結局反論するのを諦めた俺は大人しく椅子に座った。
「律花は大人しく座っててね。昔みたいに洗ってあげる」
「え、いいよ···自分で洗う」
「ふふ···もしかしてまたエッチなことされちゃうと思ってる?」
「っは!?」
「大丈夫。色々落ち着くまでは何もしないから。いやせめてフェスタが無事に終わってから···かな?怯えさせてごめんね」
その言葉通り、髪を洗ってくれる時も背中を流してくれる時も兄は昔の話や共通の話題を話すくらいで普段通り変わらなかった。終始心配していたようなことは本当に何もなかった。タオルで濡れた体を拭き、用意していたパジャマに着替える。隣では兄が蒸気で濡れた髪をタオルで拭いていた。
「フェスタ一緒に出てあげられなくてごめんね」
「ふはっ、確かに兄貴がいたら最強だよな!というか団体戦なのに兄貴だけで無双しそうじゃん」
「それはそうだね。律花を狙う奴には容赦する気は無いよ」
「あはは······今回は序列の?」
「そうだなぁ······今回は少し違うかな」
兄貴は少し言い淀む。兄貴が今回のフェスタに一人で出場する理由······序列は既に三位、ポイント的にはギルドの依頼をこなせば序列を上げることも維持することも十分に可能だ。
「···僕は正直自分でも強い方だと思っていたよ。でも厳島での戦闘で今まで僕よりも遥かに戦闘力の劣っていた人間に負けた······律花を守れなかったんだ。だから相手が魔人化した人であろうと次は律花守れるように、改めて自分を見直してみようと思って······それが一番の理由かな?」
そう言った兄の横顔は今まで見慣れたものの筈なのに何処か大人びて見えた。「それにあの男と少しでも差をつけて置きたいからね」そう付け加えると少し屈んで顔を近づけてウィンクした。···くそ、やることがスマート過ぎてイケメンの破壊力半端ない。そう思うと同時に何か物足りなく感じた。
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