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2章
15.分からない気持ち
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凪さんの話を聞いて――。
はっきり言わせてもらいたい。
「それは僕のお陰とか違いますし、たまたま飴ちゃんのパッケージに書いてあっただけですよね?お礼なら殺虫戦隊ゴキキラーの悪徳総監ブラックゴキィに言ってください」
「いや、瑠衣ちゃんが言ってくれたから」
「はい?」
「・・・・・・僕の、、歌が好きだって。お陰で考える時間が出来た。死ぬ前にもうすこし歌いたいって思ったんだよ・・・・・・」
「・・・・・・はぁ、」
「勉強しながら色んな楽器を弾くうちに、、生きててよかったと思えた。改めて」
・・・・・・つまりは僕が凪さんの歌が好きと言ったために凪さんは自殺をやめたと・・・・・・?
「あ、大丈夫。お母さんは僕と瑠衣ちゃんを――とも思ってるみたいだけど僕も一応26だから、こんなおじさん嫌でしょ?」
「え?嫌みですか?」
「ん?」
「・・・・・・なんでもないです」
凪さんは26歳だけど、とても見えない。
19って言っても通じるくらいなのに・・・。黒髪の美人さん。やっぱり親が顔が良いと子供も似るんだなぁ・・・・・って、?
「あ、の・・・・・・凪さん?」
「ん?」
「・・・・・・僕なんかにそんな大事なこと言って良いんですか?・・・その、、凪さんが――」
「養子だったってこと?」
「・・・・・・・・・はい・・・・・・」
「良いと思ったから話したんだよ?・・・・・・いや、寂しかったからかも」
「え?」
凪さんはキャスター付きの椅子の上で丸くなる。
抱え込んだ膝に顎をのせて。
「・・・・・・そろそろ、、僕も歩き出さないといけないんだけど、ね・・・・・・。お父さんやお母さんに、、迷惑かけてるから――」
「・・・・・・離婚のことで引き摺ってる、、ですか?」
「・・・・・・分からない。でも、、、そう、かも?」
両足を抱え込んだまま、凪さんは顔を少しあげて微笑んだ。薄幸そうな柔らかい笑み――綺麗だなと思った。
「・・・・・・寂しかったって・・・・・・?」
「うん。・・・・・・誰かに知ってほしかった。かな?・・・巳波や海渡は僕が養子のこと知らないしね」
「・・・・・・僕で良いんですか?」
「君が良いよ。・・・なんか、瑠衣ちゃんの近くって安心するもの・・・・・・。海渡が囲いたくなるのも分かる」
「・・・・・・」
「あ、安心して?その気はないから」
「はぁ・・・・・・」
その気はないと言われても、言われた側はすごく不安になるんですが・・・・・・。実際、僕の幼馴染は有言実行なんで。
「梨華もね・・・。
あ、別れた妻の・・・・・・。彼女もね。瑠衣ちゃんと似てるとこあったんだよ。隣にいるだけで安心する、って言うか・・・?だから、、甘えすぎちゃってね・・・」
「甘えすぎちゃったって?」
「うん。・・・・・・梨華のこと、、放っておいた。構ってあげないで、、ずっと、仕事・・・・・・ばっかりだった。・・・・・・嫌われて当然、、、だった・・・」
凪さんは顔を伏せた。
意外と細い肩が震えてる。
「・・・・・・凪さん」
「・・・・・・・・・ん」
「奥さんのこと好きでしたか?」
「・・・・・・うん、、好きだった・・・・・・・・・と思う」
「じゃあなんで別れたんですか?」
「っ、、・・・・・・分からない。梨華といると不思議に心が落ち着いて、、話すのが苦手な僕も梨華となら普通に話せた。・・・・・・幼馴染で、ずっと近くにいたから――好き。でも、、分からない・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・。
似てる気がする。今の僕に――。
僕の場合は幼馴染でずっと近くにいた海渡に恋愛なのか、友情なのか、分からない感情を抱いてる。
凪さんの場合はそれがはっきりしないまま、結婚して・・・・・・。
「・・・・・・・・・分からない、、ですよね」
「ん・・・・・・、、でも、後悔はしてない。よ?
へこんでるけど。一応、長兄としての意地があったから母さんにも・・・・・・家族に相談できなかっただけなんだよ。
「僕も分からない、、です。・・・・・・でも――」
でも――。
「凪さんの話を聞いて、、、、」
「うん・・・・・・。僕のは一例だから、、ね?
瑠衣ちゃんと海渡が、僕らのようになる訳じゃない。だから――」
「・・・・・・・・・いえ、違うんです・・・」
「・・・・・・瑠衣ちゃん、、?」
・・・・・・・・・・・酷い、、な。最低――。
僕も分からない感情のせいにして、、、
「凪さん・・・・・・」
「何?」
「・・・・・・それでも、、凪さんは好きだったんですよね」
「・・・・・・うん。好きだったから」
「分からないのに・・・」
「うん。分からないのに。でも好きだから、、彼女の気持ちに答えてあげたくて・・・・・・。今となっては申し訳無かったけど」
「・・・・・・僕も、、海渡のこと・・・好きなんです」
「うん」
「でも、、分からないから・・・」
「・・・うん」
「どっちの好きなのか、、分からないから・・・」
「・・・・・・」
「どうすればいいんでしょう・・・・・・」
どれくらい経ったのか・・・凪さんが口を開いた。
「僕と付き合ってみる?」
「・・・え、、」
「いや?」
「え、、えっと、、、」
「瑠衣ちゃん。僕も君のこと、好きだよ・・・」
そう言って凪さんに引き寄せられた。
凪さんの座るキャスター付きのイスが転がって、バランスを崩した僕はそのまま凪さんの胸に抱き込ませた。
片腕で僕を抱き寄せたまま凪さんの手が僕の頬を包んだ。
「キス・・・・・・していい?」
「え、、」
突然の出来事に動けない僕。
凪さんの綺麗な顔が近づいてくる。
・・・ほんとに綺麗だなぁ・・・・・・。一瞬そう思ったけど・・・。
「や、、っ!!」
「うっ、、、、」
僕は凪さんを押し退けた。
近づいてくる瞬間、見惚れてしまったのも確かだけど体が勝手に動いた。・・・すごく、、嫌だった。
「・・・あ、、ご、ごめんなさ――」
「ごめんね。冗談だよ」
「・・・・・・え、、?」
「でも、瑠衣ちゃんは大丈夫だよ。今のだと多分・・・。ふふっ。大丈夫。ゆっくりでいいんだよ。ただ、言えることは考えすぎないでいいんじゃないかなってこと」
はっきり言わせてもらいたい。
「それは僕のお陰とか違いますし、たまたま飴ちゃんのパッケージに書いてあっただけですよね?お礼なら殺虫戦隊ゴキキラーの悪徳総監ブラックゴキィに言ってください」
「いや、瑠衣ちゃんが言ってくれたから」
「はい?」
「・・・・・・僕の、、歌が好きだって。お陰で考える時間が出来た。死ぬ前にもうすこし歌いたいって思ったんだよ・・・・・・」
「・・・・・・はぁ、」
「勉強しながら色んな楽器を弾くうちに、、生きててよかったと思えた。改めて」
・・・・・・つまりは僕が凪さんの歌が好きと言ったために凪さんは自殺をやめたと・・・・・・?
「あ、大丈夫。お母さんは僕と瑠衣ちゃんを――とも思ってるみたいだけど僕も一応26だから、こんなおじさん嫌でしょ?」
「え?嫌みですか?」
「ん?」
「・・・・・・なんでもないです」
凪さんは26歳だけど、とても見えない。
19って言っても通じるくらいなのに・・・。黒髪の美人さん。やっぱり親が顔が良いと子供も似るんだなぁ・・・・・って、?
「あ、の・・・・・・凪さん?」
「ん?」
「・・・・・・僕なんかにそんな大事なこと言って良いんですか?・・・その、、凪さんが――」
「養子だったってこと?」
「・・・・・・・・・はい・・・・・・」
「良いと思ったから話したんだよ?・・・・・・いや、寂しかったからかも」
「え?」
凪さんはキャスター付きの椅子の上で丸くなる。
抱え込んだ膝に顎をのせて。
「・・・・・・そろそろ、、僕も歩き出さないといけないんだけど、ね・・・・・・。お父さんやお母さんに、、迷惑かけてるから――」
「・・・・・・離婚のことで引き摺ってる、、ですか?」
「・・・・・・分からない。でも、、、そう、かも?」
両足を抱え込んだまま、凪さんは顔を少しあげて微笑んだ。薄幸そうな柔らかい笑み――綺麗だなと思った。
「・・・・・・寂しかったって・・・・・・?」
「うん。・・・・・・誰かに知ってほしかった。かな?・・・巳波や海渡は僕が養子のこと知らないしね」
「・・・・・・僕で良いんですか?」
「君が良いよ。・・・なんか、瑠衣ちゃんの近くって安心するもの・・・・・・。海渡が囲いたくなるのも分かる」
「・・・・・・」
「あ、安心して?その気はないから」
「はぁ・・・・・・」
その気はないと言われても、言われた側はすごく不安になるんですが・・・・・・。実際、僕の幼馴染は有言実行なんで。
「梨華もね・・・。
あ、別れた妻の・・・・・・。彼女もね。瑠衣ちゃんと似てるとこあったんだよ。隣にいるだけで安心する、って言うか・・・?だから、、甘えすぎちゃってね・・・」
「甘えすぎちゃったって?」
「うん。・・・・・・梨華のこと、、放っておいた。構ってあげないで、、ずっと、仕事・・・・・・ばっかりだった。・・・・・・嫌われて当然、、、だった・・・」
凪さんは顔を伏せた。
意外と細い肩が震えてる。
「・・・・・・凪さん」
「・・・・・・・・・ん」
「奥さんのこと好きでしたか?」
「・・・・・・うん、、好きだった・・・・・・・・・と思う」
「じゃあなんで別れたんですか?」
「っ、、・・・・・・分からない。梨華といると不思議に心が落ち着いて、、話すのが苦手な僕も梨華となら普通に話せた。・・・・・・幼馴染で、ずっと近くにいたから――好き。でも、、分からない・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・。
似てる気がする。今の僕に――。
僕の場合は幼馴染でずっと近くにいた海渡に恋愛なのか、友情なのか、分からない感情を抱いてる。
凪さんの場合はそれがはっきりしないまま、結婚して・・・・・・。
「・・・・・・・・・分からない、、ですよね」
「ん・・・・・・、、でも、後悔はしてない。よ?
へこんでるけど。一応、長兄としての意地があったから母さんにも・・・・・・家族に相談できなかっただけなんだよ。
「僕も分からない、、です。・・・・・・でも――」
でも――。
「凪さんの話を聞いて、、、、」
「うん・・・・・・。僕のは一例だから、、ね?
瑠衣ちゃんと海渡が、僕らのようになる訳じゃない。だから――」
「・・・・・・・・・いえ、違うんです・・・」
「・・・・・・瑠衣ちゃん、、?」
・・・・・・・・・・・酷い、、な。最低――。
僕も分からない感情のせいにして、、、
「凪さん・・・・・・」
「何?」
「・・・・・・それでも、、凪さんは好きだったんですよね」
「・・・・・・うん。好きだったから」
「分からないのに・・・」
「うん。分からないのに。でも好きだから、、彼女の気持ちに答えてあげたくて・・・・・・。今となっては申し訳無かったけど」
「・・・・・・僕も、、海渡のこと・・・好きなんです」
「うん」
「でも、、分からないから・・・」
「・・・うん」
「どっちの好きなのか、、分からないから・・・」
「・・・・・・」
「どうすればいいんでしょう・・・・・・」
どれくらい経ったのか・・・凪さんが口を開いた。
「僕と付き合ってみる?」
「・・・え、、」
「いや?」
「え、、えっと、、、」
「瑠衣ちゃん。僕も君のこと、好きだよ・・・」
そう言って凪さんに引き寄せられた。
凪さんの座るキャスター付きのイスが転がって、バランスを崩した僕はそのまま凪さんの胸に抱き込ませた。
片腕で僕を抱き寄せたまま凪さんの手が僕の頬を包んだ。
「キス・・・・・・していい?」
「え、、」
突然の出来事に動けない僕。
凪さんの綺麗な顔が近づいてくる。
・・・ほんとに綺麗だなぁ・・・・・・。一瞬そう思ったけど・・・。
「や、、っ!!」
「うっ、、、、」
僕は凪さんを押し退けた。
近づいてくる瞬間、見惚れてしまったのも確かだけど体が勝手に動いた。・・・すごく、、嫌だった。
「・・・あ、、ご、ごめんなさ――」
「ごめんね。冗談だよ」
「・・・・・・え、、?」
「でも、瑠衣ちゃんは大丈夫だよ。今のだと多分・・・。ふふっ。大丈夫。ゆっくりでいいんだよ。ただ、言えることは考えすぎないでいいんじゃないかなってこと」
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