パーティを追放され、おっさん覚醒する

カモ

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第3話 風の少年と知る力

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 ライエルの湖を後にしてダディーは街へと向かって行く。
 ただ、追放されたパーティのいるところへは戻れない。
 という訳でダディーはそれとは反対方向に歩いて行った。

(それにしてもあの女神が言っていたセラフィールという力……気になる)

 元々ダディーは騎士。昔も今もどらちかと言うと攻撃的な役割ではなかった。
 たまに前線に出て攻撃をするというもの。
 基本は盾で相手の攻撃を防ぎながら隙を伺って攻撃するというもの。

 ただし、魔術を使えないダディーにとってやはり活躍は出来なかった。
 戦闘以外のところで役に立つしかなかった。
 だから料理の腕を磨き、雑用も引き受けた。
 いやそもそもダディー自身が人の嫌がることを進んでやる性格というのもある。

(みんなのために俺が出来ることはそれぐらいだからな)

 自分にそう言い聞かせ、ひたすら我慢していた。

 ただ、今回の出来事でそれだけでは駄目だと気が付く。

(もっと強くならないと、昔以上に)

 ダディーが次に目指す街が見えてきたところだった。

「……どうした!?」

 ダディーは地面にうずくまっている少年を発見した。
 最初は腹を痛がっているだけだと思った。
 しかし体が震えており気が気ではない。
 ほっておけずダディーは声をかけて手を差し伸べる。

 ――バシ!

 だが、差し出したその手は弾かれる。
 軽い痛みが襲いダディーは表情を険しくする。
 そしてその少年は顔を上げる。

(……男? いや、女? えらく中性的な顔してるな)

 長い銀髪に美しい顔立ち。そして泣いているその顔もきれい。
 ダディーは性別が分からなかった。
 ただ、その少年の口調と雰囲気ですぐにどちらか判別出来た。

「あ、す、すみません」

「どうしたんだ、こんなところで、ここは魔物も現れるし危険だ」

(男だったか、まあそれは置いといて)

 ダディーはこんな丸腰の少年がこんなところにいるなんておかしい。
 武器も持たず、見た感じ戦い慣れてはいない。
 すぐにダディーは少年に帰るようにと伝える。
 この場所は何度かダディーも来たことがある。

 しかし少年は泣き止んでダディーと向き合う。
 黒い瞳で真剣に見つめながら静かにこう言った。

「忠告ありがとう、だけど僕は帰る訳にはいかない……みんなのために依頼をこなさないと」

「お前、冒険者だったのか?」

「あははは、やっぱりみんなそういうんですよね!」

 冒険者というのは依頼を受けて各地を転々としている人のこと。
 そしてこの少年もその一人ということ。
 ダディーはそれを聞いて驚く。

(俺よりも一回りも下の奴が冒険者なんてな……それにこんな弱弱しい奴が)

 口には出さないが、ダディーは少年を見てとてもじゃないが冒険者とは思えなかった。
 体つきや、性格や、雰囲気的に。
 しかしこんな場所に一人でいるのだから嘘で言っているようには思えない。

「今回も怖くてしばらくここで泣いていたんですよ、情けないですよね」

「俺も最初の方はそうだったよ、ただ、段々と慣れていったもんだ」

「へぇ……ということはおじさんも冒険者?」

「ま、まあな」

 少年の純粋な問いかけにダディーはどもる。
 冒険者だが立派な冒険者ではない。
 ダディーが冒険者だと知ると少年は目を輝かせながらこう言ってきた。

「よかったら僕と組んで下さりますか? あ、僕の名前は『ロシュベル』です! 宜しくお願いします」

「あ、ああ! だけど俺は……」

 ダディーは嘘は駄目だと思い本当のことを話そうとしたときだった。
 二人は同時に気配を察知して身構える。

 現れたのは森の狼と言われている魔物『ブレイグ』という厄介な敵。
 紫色の毛皮が特徴的でその鋭い牙には猛毒が含まれているという。
 動きが素早く、統率力もある。
 二匹のブレイグはダディーとロシュベルを見て涎を垂らしている。

(まずいな……武器もないこの状況でこれは)

 ダディーは冷や汗を感じながら少しずつ近付いてくるブレイグに焦る。
 だが対照的にロシュベルは先ほどとは打って変わって戦う顔となる。
 それはまさしく冒険者の顔。

「安心してください、ここは僕がなんとかします」

「ロシュベル!?」

 するとロシュベルはその場から駆け出す。
 その動きはまるで風のように速かった。
 一瞬にしてブレイグとの距離を詰める。
 ダディーはそれを見て驚きを隠せなかった。

(はやいな……どうなってんだ)

 ダディーはそんなことを思っていると急にロシュベルの雰囲気が変わる。
 髪型や雰囲気が先ほどまでの優しさが消える感じがした。
 そしてロシュベルは空中に飛び上がり、ブレイグに向かって攻撃を仕掛ける。

「おっせーな! そんなんじゃこの俺には追い付けないぜ!」

「あいつ雰囲気が変わった?」

 ダディーはそれを察知した時。ロシュベルの鋭い目つきが見える。
 まるで別人のようだ。そしてロシュベルは飛び上がった状態から両手を上空に掲げる。

「くらいやがれ! 『ハリケーンブラスト』!」

 強烈な強風がブレイグを襲う。上空から竜巻があらわれブレイグの皮膚を削る。
 ダディーもあまりの風の強さに顔を覆って隠す。
 ロシュベルは二ヤつきながら吹き飛ばされるブレイグを見ていた。

「吹き荒れたな……」

「風の魔術か……それにしてもなんて威力だ」

「それとおっさん! もう一匹そっちにいったぞ」

 しかしその時だった。感心している中でロシュベルは荒れた口調でダディーそう告げる。
 ハリケーンブラストをかわしてもう一匹のブレイグがこちらに迫ってきた。

(まずいな)

 ロシュベルは魔術のインターバルがあるのか。その場から動くことが出来なかった。
 ダディーは身構えながら相手の動きをよく見る。
 ここで逃げたら駄目だと思いながらダディーはブレイグを睨みつける。

(あの女神の言ったことが本当なら……俺はこいつに)

 女神と出会う前なら確実に勝てなかった相手。
 だけど今なら出来る気がする。
 例え、武器がなくても。例え、今は小さな弱い力でも。

 拳を後ろに引いてダディーはブレイグに目掛けて思いっきり殴りつける。

 ――これは!?

 骨を砕ける音がこの場に響き渡る。
 ダディーに殴られたブレイグは吹き飛ぶ。
 自分でも信じられなかった。まさかこんなにも威力があるとは。
 ブレイグは呼吸が出来なくなったのか。地面に崩れ落ちた。

(嘘だろ? この俺がこんな力があったなんて)

「へぇ! やるじゃねーかおっさん! まさか武器も魔術も使わずに倒すなんてな」

「……お前こそ、それにしてもさっきと全然雰囲気が違うけどどうしたんだ?」

「ああ、そうか」

 ロシュベルは後ろを向きながらダディーに偉そうにこう言った。
 しかし荒れた口調は元に戻り、髪型も戻る。
 一気に優しい雰囲気となり、ダディーも困惑していた。
 だがロシュベルは優しく微笑みながらダディーのことを見ていた。

「凄いんですね! 正直驚きましたよ」

「あ、ああ」

「……もしかするとあなたとなら救えるかもしれない」

「救う?」

 意味深なロシュベルの発言にダディーは考える。
 そしてロシュベルはダディーにこんなお願い事をしてくる。

「おじさん、いきなりで申し訳ないけど……僕とパーティを組んで下さい!」

「は、はぁ!?」

 ロシュベルの願いは思わぬものだった。
 しかし断る理由もないと感じたダディーは軽く頷く。

(どちらにしてもこのまま一人でいても仕方がない、それにこいつの力は間近で見たから分かる……すごい奴だ)

 ダディーはロシュベルの手を差し出して握手を求める。

「分かった、宜しく頼む」

 しかしいつまでたってもロシュベルは差し出した手を握ろうとしない。
 きょとんとした表情でその場で立ちすくしていた。
 ダディーは意味が分からずにロシュベルの問いかけようとした時だった。

「あ、ああ! すみません! 僕……女の人じゃないと握手とかはしないんです!」

「はぁ?」

「男の人の手ってきれいじゃないですからね……それじゃあ行きましょうか」

 ロシュベルは全く悪気はなく微笑んでダディーを残して歩いて行った。

(何なんだあいつ……くそ)

 しかし行く当てもないためダディーは渋々ながら付いて行った。
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