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3.スロッター
しおりを挟む3.スロッター
「お前マジでなんなんだよ!余計なことするならどっかいけ‼」
「何がしたいんだよお前!意味わからない‼」
「お前、何にもできねえじゃねえか!無駄な魔法なんか使いやがって‼」
またパーティをクビになった。これで何度目だろう。パーティに入れば1戦でクビになる。異常な魔法適応力と「MP量」を買われ、傭兵として同行しても、私の「能力」を知られればおしまい。いっそパーティに入らない方が良いか。しかし一人では何もできない。
「はあ、今日のごはん、何にしよ」
空腹を知らせる腹部のアラームは生まれつきスヌーズ機能を搭載しているらしく、3時間ほど前から定期的に鳴っている。毎日丁寧に手入れしている腰上まで伸びた長い黒髪が、すきっ腹を悲しげに撫でる。胸元の大きな赤いリボンも、今日は少し元気がない。
「なんで私、こんな目にあわなきゃいけないんだろう・・・」
派手な装飾もない地味なスカートを揺らしてトボトボと歩いていると、前方に屈強なパーティ――と、その脇でぺらぺらの装甲でちょこまか動いている人影があった。
「乞食だ」
あれは誰がどう見ても乞食だ。いかにも強そうなパーティが、これまた強そうな敵を倒そうと繰り出した大技。それがちっちゃいモンスターにかすってよろめいたところを一体一体確実に仕留めている。
「私以下の人間はじめてみた・・・」
城下町「セリフォン」の周辺には狩り場が多く、ビギナーを抜けた初、中級のパーティから、魔王討伐を目指す腕のいいパーティも集まる。そんなところでまともに戦えず、時に戦闘中にクビになって報酬すら分けてもらえなかったり、時にいやらしい男に気に入られて数戦パーティに混ざってお小遣い稼ぎができたと思えば、私がちっとも媚びてこないことに腹を立てて暴言を吐いた挙句クビにしてきたりと、私はくたびれて、すっかり自信を失っていた。
すると、その乞食がさっき倒したちっちゃいスライムの親らしきスライムと対峙していた。私はなぜか直感的にあの乞食が負ける、と思い、とっさに、
「ロット‼」
と叫んだ。するとその乞食は一瞬ひるんだが、すぐに持ち直し、素早く「親スライム」を切り捨てた。乞食は何が起こったのかと思案した様子だったが、間もなく私の方へ駆け寄ってきた。
「見知らぬ人に魔法かけちゃダメだよ」
「えぇ、聞いたことないよ、そんな忠告」
でも、確かにいきなり首突っ込んでしまったのは申し訳ないと思い、
「うん、でもごめんなさい」
と謝った。すると、
「いや、いいよ。それより、さっきの魔法。俺そんなに背高くない気がするけど」
「いや『ノッポ‼』って言ってないよ。『ロット』ね。」
「『ロット』・・・。聞いたことないな。どんな魔法?攻撃力超アップとか?」
「・・・あんまり言いたくない」
もしここで魔法について話したら、また気持ち悪いと思われてしまう。はじめて同世代の男の子とまともに話ができたのに、嫌われたらショックだ。
「そっか。俺はズイ。君は?」
「私は・・・リエン」
「なあ、一緒にパーティ組まないか?」
「えっ」
早すぎる展開についていけず、素っ頓狂な声を上げてしまった。でも、嫌ではなかった。ちょうどパーティを抜けたところで、タイミングも良い。それにこの人は、私の魔法のことを聞かなかったように、私を尊重して接してくれるかもしれない。
「うん・・・いいよ。だけど、どうしていきなり?」
「俺、はじめてスライム倒せたんだ」
「⁉」
今度は声も出なかった。非力な私ですらスライムなら一人でなんとか倒せる。この人は一体・・・。
「ど、どうして?倒すのが怖いの?」
「魔法のこと」
「えっ?」
「魔法のこと、教えてくれる?」
私は、どんどんこの人に興味が湧いていた。自分が隠し事をしている立場だということを忘れるほどに。
「うん、分かった。」
私は、大きく息を吸い込んだ。
「私の魔法・・・『ロット』はね、対象のステータスを全て入れ替えるの」
「なっ、ステータスを、入れ替える?」
「うん、攻撃力、防御力、魔法攻撃力、魔法防御力の4つを入れ替える。それも味方だけ。パーティ以外にはかけられない。・・・私は、生まれつきこの魔法しか使えない」
言ってしまった。嫌われたかな。目の前の乞食は、固まったままだ。
「これが私の魔法。どう、無駄でしょ?幻滅した?」
「そんなことない‼」
「⁉」
「そんなことない。むしろ、俺たち、大逆転できるかもしれない」
「そんな、どうして?」
心なしか、彼も大きく息を吸い込んだように見えた。
「俺は、魔法防御――『死にステータス』しか伸びないんだ」
「えっ!そ、そんな・・・」
頭を強く打ったような衝撃。そうか、だからスライムすら――
「だから、君の『能力』があれば、俺は鍛え抜かれた『メンタル』で、最強になれるかもしれない」
「嘘、私の能力で・・・」
そっか、さっきは魔法防御力のステータス値が攻撃力の値になったから、あんなに颯爽とスライムを倒せたんだ。
「私のおかげ・・・?」
「そうだよ、君のおかげだ」
「で、でも、狙って入れ替えることはできないよ。完全にランダム。しかも、ただ入れ替えるだけだから、それが攻撃力と変わるか、防御力と変わるか、はたまた魔法攻撃力と変わるかは運次第」
「完全にランダム・・・もはやギャンブルだな」
「人の魔法をなんて形容するのよ」
「でも、これで希望は見えた。これまでの俺は一人では何もできなかった。だけど・・・、今は君がいる」
私でも、誰かのためになれる。私のこんな「能力」でも・・・!
「うん、私が力になる。ズイのために!」
「よろしくな、リエン!・・・ていうか、よく俺のこと信頼してくれたな」
「それは大丈夫。だって、ズイは私のこと『お前』って呼ばないもん」
「今、俺の中で一つの確固たる『女子あるある』が生まれたよ」
3.スロッター 終
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