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6.精神崩壊

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6.精神崩壊

俺は、自分が特別だと思ってた。今はまだ誰も見向きもしないけど、本当のヒーローは自分だと思ってた。いじめられている時だって、俺をいじめるこいつらは世界の隅っこのモブキャラだって思い込んでた。自分はいつか、誰もがうらやむキラキラした人間になれるって、そう思ってた・・・。
「秩序」はいつだって、俺たちの邪魔をする。常識から外れた俺たちを、寄ってたかって「直そう」とする。俺は、また外れたのか?「秩序たる正当な脅威」に、飲み込まれていくのか・・・?
嫌だ。嫌だ。嫌だけど、どうしようも、ない・・・。

・・・

「早い話が、全て私の計画通りというわけだ」
スルズが口を開く。
「貴様が『リンバイ』に来るのも、貴様がこの世界でも変わらず『最弱』になるのも、リエンが貴様を見つけるのも」
垂れた頭を上げられない。
「リエンが『ロット』で貴様を助けるのも、貴様がリエンをパーティに誘うのも、リエンがそれを受け入れるのも」
頭が回らない。言葉が分からない。それでも、こいつの「言葉」に、自分という存在が蝕まれていくのだけは確かに分かる。
「貴様がリエンのために必死にもがくことも・・・、リエンがそれを受け取り貴様を思うことも‼」
・・・⁉ リエンが、俺を・・・?
「なにもかも、私の予想通りッッッ‼」
力を振り絞って顔を上げると、スルズ、いや、「スルズだったもの」は奇妙な容貌をしていた。
綺麗な顔立ちは見る影もない。顔の形はぐにゃぐにゃと変形し続け、顔のパーツも定まらず、それらがくっついたり、離れたりを繰り返している。腕は異常に膨張し、指はもう何本あるか視認できない。足も裂けたようで、何本あるか分からない。ただ確かなのは、数秒でも直視していたら、本当に気が狂ってしまうような、そんな容貌だった。
「では、なぜこんなことをしたか」
「それらは全て、我ら魔王軍の繁栄のため」
「では、なにが繁栄の種なのか」
「それは――」
異形が俯いた俺の顔面を正面から直視した。
「貴様の精神」
「⁉⁉」
その瞬間、俺は、嘔吐した。異形は朽ちた屍に容赦なく言葉をぶつけてくる。
「なあ、『ロット』について考えたことはあるか?」
「貴様は確か、ギャンブルのようだと、そういったな」
「鋭いと思ったよ。まさかここで計画が頓挫するのではないかとすら思った」
「しかし、お前は『ロット』と『スロットマシン』を重ねてしまった」
「違うよ。『ロット』は『lot』じゃない。『ロット』は――」
音はしない。直視もできない。ただ、確実に異形が「笑った」と思った。
「rot」
「腐敗」
「腐って落ちる」
「つまり、『ロット』がステータスを入れ替える魔法、なんてのは貴様をおびき寄せる甘い誘惑」
「本性は、ギャンブルと同じ――貴様の精神を腐らせて蝕む、魔性の毒薬」
「事実、貴様は頭痛、だるさを訴えていたな」
「あれは精神が蝕まれ、人間としての理性を失っている道程、予兆」
「カウントダウン」
「貴様の精神が蝕まれていくほど、私たちの力は強大化する」
「我々の『定期的な』侵攻を『人類の脅威』と呼んでいたそうだが」
「これだから人類は生ぬるい」
「ただの充電期間、それほどのエネルギーを」
「今回は貴様の精神から吸引したため侵攻が早まった、それだけのこと」
・・・。
「では最後に、くだらない話をしよう」
「思い出の結晶とやらの話」

「あれはなあ、貴様の『良心』なんだ」
「貴様の精神を蝕んだ際の、副産物」
「それを『思い出』と称し大事に持っているとは、どこまでも健気な女だ、あいつは、いや――」
「私の娘は」
お前の・・・むすめ・・・?
「まだ口を開けたか」
「正確には娘ではなく、造形物」
「『ロット』を覚えさせ、それ以外の魔法の習得を禁じた」
「そして17になる年、貴様と出会わせる」
なんだよ、それ・・・。
「これが、私の計画の全て」
「お前の無駄なあがきが産んだ、事の顛末」
しばらくすると、すっと力が抜けて、いや、無駄な力が抜けて、少し身体の自由がきくようになった。
ふと前を見ると、リエン・・・!
次の瞬間――
俺はリエンを切り裂いていた。

6.精神崩壊 終
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