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第二章 職業婦人見習い
6、望月の苦悩
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(ちょっと今日はやりすぎたかな。。。)
辻は教員室に戻る道すがら、少しばかりの後悔をした。
櫻といると調子が狂う。しかし、これこそが僕らしさかもしれないとも思う。
意地が悪いのは遺伝ていうことか。。
教員室に入ると事務員から声をかけられた。
「辻先生、今日も望月さんが応接室においでですよ。」
「それはご面倒おかけしております。早々に対応いたしますので。」
辻は教材を自分の机に置くと教員室奥の応接室に入った。
「やあ!辻くん!今日も清々しいね!」
「君こそ、上機嫌じゃないかあ。」
望月は大きなカバンを小脇に抱えソファに腰掛けている。
「君と旅行にいく前に、女給と近場の旅館に湯治してね。」
「望月くん、君は体が悪いところはないじゃないか、湯治が必要か?」
ニヤリと笑っていう。
「いやはや御名答。しかし、心がね湯治せずにはいられない状況だったんだよ。」
「それは?」
「今の家じゃ、アグリの弟子や俺の母さん、淳之介までいて俺なんていてもいなくてもっていう感じなのさ。まあ自由だからいいけどこの間アグリなんて、『どうして今日はいるんですか』なんて聞くんだよ。どうやら自由というものも時に寂しいもんだねえ。」
「アグリ君はよくやってるじゃないか。女給と旅行だって目をツムってるんだろう?」
「まあ、僕たちの始まり自体がちょっと混み合ってるからね。」
望月が今、こうやって自由で文士を続けていられるのも、あぐりの支えがあったからだというのは誰が見ても明らかだ。
しかし、心が広いとはいえ、他の女と遊び呆けている旦那に対して怒りもしないアグリに辻は好感を持っている。
「アグリくん、この間、雑誌で代表職業婦人なんて特集に載っていたね。」
「本人は忙しいから、そんなこと興味ないみたいだよ。16で結婚してもう10年だしね。僕も28歳になってしまった。アグリと結婚する前は、実家がうるさかったけれど、東京で腰を落ち着けたら、途端にもう実家も僕には期待しなくなったしね。自由も彼女が連れてきたのかもしれない。」
望月の顔を見ると少し寂しげに見えた。自由を手に入れた人間の表情とは違って見える。
「望月くん、君も物書きだけじゃなくて他のこともしてみたら、作品に影響してくるんじゃないか?」
「ああ、今ね、実は新しい雑誌の創刊に携わってみないか、と誘われているんだ。ジャンルは問わない。自由な雑誌をね。」
「実に君らしいチャンスじゃないか。何かまよって居るのか?」
望月はうーんと考えて答えた。
「僕は、自由なダダを書きたい。無駄な時間は過ごしたくないんだよ。」
「一見遠回りに見えることも、実は近道かもしれない。まあ、こんなこと、学校で話すのも、、っはは。なんだか僕たち、いつになく真面目な話をしてしまったね。」
「早く、辻くんと旅に出たいよ。何も縛られずにね。後半月くらいで夏休みか?」
「ああ、でも、僕は長く出られないかもしれない。」
「どうして?」
「櫻くんに夢中でね。。僕らしくないんだけど、振り回されてる。」
「ハハハハハハハハハ!自由恋愛に無粋だったね。でも、旅行に行くことは忘れちゃあいけないよ。」
「オフコース。もちろんさ。手ぶらで東京駅から始めよう。」
帰りの車で櫻を拾い、走らせる。
「先生、私、もうああいうことは学校ではよしてください。」
「君が可愛いからだよ。どんどん僕を困らせる。」
後ろから抱きしめられて、浅く腰掛けている。
「先生、私、、、、」
後ろを向いた瞬間に辻から唇を塞がれた。
互いに貪り合う。この快楽からもう逃れられないと櫻は思った。
辻は教員室に戻る道すがら、少しばかりの後悔をした。
櫻といると調子が狂う。しかし、これこそが僕らしさかもしれないとも思う。
意地が悪いのは遺伝ていうことか。。
教員室に入ると事務員から声をかけられた。
「辻先生、今日も望月さんが応接室においでですよ。」
「それはご面倒おかけしております。早々に対応いたしますので。」
辻は教材を自分の机に置くと教員室奥の応接室に入った。
「やあ!辻くん!今日も清々しいね!」
「君こそ、上機嫌じゃないかあ。」
望月は大きなカバンを小脇に抱えソファに腰掛けている。
「君と旅行にいく前に、女給と近場の旅館に湯治してね。」
「望月くん、君は体が悪いところはないじゃないか、湯治が必要か?」
ニヤリと笑っていう。
「いやはや御名答。しかし、心がね湯治せずにはいられない状況だったんだよ。」
「それは?」
「今の家じゃ、アグリの弟子や俺の母さん、淳之介までいて俺なんていてもいなくてもっていう感じなのさ。まあ自由だからいいけどこの間アグリなんて、『どうして今日はいるんですか』なんて聞くんだよ。どうやら自由というものも時に寂しいもんだねえ。」
「アグリ君はよくやってるじゃないか。女給と旅行だって目をツムってるんだろう?」
「まあ、僕たちの始まり自体がちょっと混み合ってるからね。」
望月が今、こうやって自由で文士を続けていられるのも、あぐりの支えがあったからだというのは誰が見ても明らかだ。
しかし、心が広いとはいえ、他の女と遊び呆けている旦那に対して怒りもしないアグリに辻は好感を持っている。
「アグリくん、この間、雑誌で代表職業婦人なんて特集に載っていたね。」
「本人は忙しいから、そんなこと興味ないみたいだよ。16で結婚してもう10年だしね。僕も28歳になってしまった。アグリと結婚する前は、実家がうるさかったけれど、東京で腰を落ち着けたら、途端にもう実家も僕には期待しなくなったしね。自由も彼女が連れてきたのかもしれない。」
望月の顔を見ると少し寂しげに見えた。自由を手に入れた人間の表情とは違って見える。
「望月くん、君も物書きだけじゃなくて他のこともしてみたら、作品に影響してくるんじゃないか?」
「ああ、今ね、実は新しい雑誌の創刊に携わってみないか、と誘われているんだ。ジャンルは問わない。自由な雑誌をね。」
「実に君らしいチャンスじゃないか。何かまよって居るのか?」
望月はうーんと考えて答えた。
「僕は、自由なダダを書きたい。無駄な時間は過ごしたくないんだよ。」
「一見遠回りに見えることも、実は近道かもしれない。まあ、こんなこと、学校で話すのも、、っはは。なんだか僕たち、いつになく真面目な話をしてしまったね。」
「早く、辻くんと旅に出たいよ。何も縛られずにね。後半月くらいで夏休みか?」
「ああ、でも、僕は長く出られないかもしれない。」
「どうして?」
「櫻くんに夢中でね。。僕らしくないんだけど、振り回されてる。」
「ハハハハハハハハハ!自由恋愛に無粋だったね。でも、旅行に行くことは忘れちゃあいけないよ。」
「オフコース。もちろんさ。手ぶらで東京駅から始めよう。」
帰りの車で櫻を拾い、走らせる。
「先生、私、もうああいうことは学校ではよしてください。」
「君が可愛いからだよ。どんどん僕を困らせる。」
後ろから抱きしめられて、浅く腰掛けている。
「先生、私、、、、」
後ろを向いた瞬間に辻から唇を塞がれた。
互いに貪り合う。この快楽からもう逃れられないと櫻は思った。
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