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第四章 夢を見つけた
13、夏休みの予定
しおりを挟む次の日、車中での会話
「先生、私来週から淳之介くんの家庭教師になったんです。月曜日限定で。」
「それはいいことじゃないですか。淳之介くんは小学校の帰りも遅いから仕事始めも遅くていいですね。」
「先生、なんでもお見通しなんですね。そう、だから月曜日は先生とちょっと長くいられます。」
「君はすぐちょっと拗ねますが、僕はそんなところが好きですよ。」
「もう!先生すぐ好きとか言わないでください。なんだかもったいないです。」
本当は嬉しいのだが、軽薄に生きて北辻の言葉に重みがない気がするのも確かである。
「まあ、僕は今までそういう言葉を軽々使ってきたように見えるんでしょうね。でもね、僕は好きなんて言葉は櫻さんと母にしか使ったことないですよ。」
「え?今までいろんな女性とお付き合いして来たのにおっしゃらなかったんですか?」
「嘘はつきたくないですからね。好きというよりは過ごしやすい方とお付き合いしていただけです。」
本当に悪い男だ。
そんなこと言って、いろんな女性を泣かしてきたのだろう。
「先生が過去の女性に何言ってたかは気になりますが、信じましょう。でも、私だって好きなんて言葉先生にしか使ったことないですよ。」
「でも、この間の記事の男性に惹かれてたじゃないですか。」
「先生、わかってます?私は先生以外には心はないんです。確かに活動に興味はありますが、それは活動にあってその人ではないんです。」
「君が遠くに行くことを僕が促しているような気がしてね。僕は僕らしく生きることもちゃんとしようと昨晩考えました。」
「それって何をすることなんですか?」
「前々から決まっていたんだけどね。夏休みに入ったら望月と北に向かって旅行に行こうと思ってるんです。僕はあなたに夢中で旅行自体を取りやめようかとも思ったんですが、あなたの自由に任せて、僕も僕の自由に任せて旅に出てみようかと。」
「そんな大事な話、一週間前に言いますか?先生が当分いないなんて。。。」
櫻は泣いてしまった。
「あら、君を泣かせるつもりは全然なかったんですよ。安心してください。女の匂いのしないそりゃあ面白い旅行ですから。」
「女の匂いがしないって?」
「金を持たないで旅行するんです。金が尽きたら、詩を書いて売って、それで北を目指すのです。」
「旅なのに苦しくないのですか?」
「これこそ、自由なのです。金に頼った旅行なんて、単なる場所の移動ですよ。その街の人間になるのです。」
辻らしいことを言うな、と櫻は思った。
「応援します。緊急のことがあったら、電報打ってくださいね。」
「電報で詩を送るのもいいですね。イニシャルTで送りますよ。」
「了解しました。でも、無理なさないでくださいね。」
櫻は自由人らしい辻が戻ってきて少し嬉しい気持ちにもなった。
夏休みまであと一週間。また新しい時間がやってくる。
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