80 / 419
第五章 新たなる世界へ
15、櫻の夢 弍
しおりを挟む櫻は夢を見ていた。
「お父さん、そんなにゴロゴロしていて、フランスに来た意味と役目を果たしてないんじゃないの?」
「おい、息子よ。父をそう言うふうに言うな。僕は頭の中で色々しているんだ。」
「でも、新聞社の記者の駐在できてるんだから、少しは記事にしなきゃだよ。」
「それは君に託したよ。君も物書きになるなんて思わなかったね。」
「僕はまだ父さんと違って学生の身だよ。まだ物書きになるなんて決めてないよ。」
「父さんはね、母さんが存在しなくなって書く気持ちがどんどん少なくなってしまったんだよ。」
ふうん、と青年は相槌をうつ。
「僕は、母さん、好きじゃないな。自由すぎるよ。」
「君の母さんに自由を教えたのは父さんなんだ。悪く言うなよ。母さんが最後どんな気持ちでいたか、心が絞られたよ。」
「本当に愛していたんだね。」
「後にも先にも、あんな人はいないよ。僕の息子が魅力的なのも母さんが魅力的だからだ。」
「こんなにいい人がいたのに、あんなことをした母さんを僕は許せない。でも、僕はだからこそ温かい家庭を持てる気がしないよ。」
背景にはエッフェル塔が見える。辻なのだろうか。
しかし、その青年は辻よりも癖っ毛で違って見える。
どちらかというと初老の男性が辻の面影があるように見える。
「息子よ、忘れてはいけないよ。君の母親は戦士だったんだ。世の中と戦った。残念ながら僕はその戦いを放棄してしまったがね。」
「父さんだってその後、再婚すればよかったのに。」
「おじいちゃんに似ちゃったのかもしれないね。最初の女性を忘れられないと言うのは。」
どう言うことだろう。この初老の男性は離婚したと言うのだろうか。
「息子よ、もう一度言うよ。忘れちゃいけない。彼女は君を愛していた。君と離れて暮らしても何度もうちに来て遊んだからね。」
「僕はあのおばさん誰って感じだったよ。女中のしのの方が僕のお母さんになって欲しかった。」
「息子らしい答えだね。でも、あの人は愛の人だった。それだけは忘れないでほしい。」
「じゃあ、僕も父さんに記事を真面目に書いて欲しいと忘れないで欲しいよ。」
「ノン!君の記事の方が好評だよ。東京に帰ったら、雑誌を作るといいよ。」
「もう、無責任なんだから。」
初老の男性は、軽薄だが、その裏に真面目さがある。
櫻は辻だと思った。
ではこの夢はなんだろう。
私がいない。いや、私はいなくなったと言っていた。
私は先生とずっといたい。どんな運命になったとしても。
夢うつつの中で櫻はそう考えていた。
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】
remo
恋愛
どんなに好きになっても、彼は絶対に私を愛さない。
佐倉ここ。
玩具メーカーで働く24歳のOL。
鬼上司・高野雅(がく)に叱責されながら仕事に奔走する中、忘れられない元カレ・常盤千晃(ちあき)に再会。
完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な彼には、悲しい秘密があった。
【完結】ありがとうございました‼
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる