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第六章 愛を確かめ合う関係
11、辻、出版社へ
しおりを挟む辻は朝一番で、望月の出版社を訪ねていた。
もちろん、風来坊な望月は来ていなかったが、編集長に話があった。
「ちょっと、話があるんだけど、時間取れるかい?」
「辻さんのお話?仕事?それとも望月さんの?」
「仕事に関してさ。富田編集長にちょっと相談でね。」
「あら気になるわ。あちらのソファでちょっとお待ちいただける?」
新婦人社は特に応接室はなく、全てがオープンスペースになっている。
窓際に対面式のソファが置いてある。
辻は腰掛けて少し待った。
「ごめんなさいね、ちょっとお待たせして。印刷所に連絡しなくてわって。すみましたので。」
「いやいや、僕も突然訪問して申し訳ない。ちょっと相談があってね。」
「僕は大学時代にダダで小説や詩を書いていたんだけど、今は書いていなくてね。でも、ある人に手紙を書いてみたらスラスラと筆が進んで。」
「あら、ラブレターかしら?」
「そこは秘密で。まあそう言うことで、僕も書くことに関してちょっと違う方面で書いてみたくて。」
「うちは婦人向けですよ。どんなことを?」
「自由に向かって働く婦人を主人公にした小説を偽名で書けないかな?」
「それだったら、辻さんの元の雑誌で載せた方がいいんじゃないかしら?」
「今さ、僕教師をしてるだろ。副業は禁止なんだ。そう言うことで父親の会社も手伝わなくて済んでるんだけど、世間の女性を応援したい文章を書きたくてね。」
ふむふむと言った感じて富田カヨは聞いていた。
「副業禁止ね。新人文士を載せるのもどうかしらね。」
「そう思って、ちょっとした短編を今日、持ってきているんだ。」
「あら、辻さん書いて物見せてくれる?」
原稿を受け取った富田編集長はその世界に入っていった。
「これを辻さんの名前で発表できないのが残念すぎる。。でも素晴らしいわ。今月の目玉で出しましょう。」
「それはありがたい。これを僕と知らないで読んでほしい相手がいるんだ。」
「辻さん、本当に秘密主義ね。ありがたくお預かりします。原稿料はおいおい話でいい?」
「ああ、載せてくれるなら寄付でもいいくらいだよ。」
「そうはいかないわ。では、挿絵とかの相談もあるから来週来ていただけるかしら?」
「ああ、僕はいつでも構わないよ。」
辻が帰った後、富田はもう一度読んだ。
女性への愛が溢れた、短編だった。
さて、もう一度読もうかと読み返してみた。(次回へ続く)
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