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第七章 新しい夢探し

7、淳之介の想い

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月曜日、午後3時に玄関のベルが鳴った。
ビー。

「わあい、今日、辻さん来るんでしょ!櫻先生、僕玄関行ってきていい?」
「淳之介さんダメですよ。今は勉強中です。辻さんとは後ほど会えますから。」
「なあんだ、櫻先生のケチ!」
最近、淳之介の学力が上がってきているのがわかり、櫻は嬉しく思う。
外国語の小説を読み始めたというのが、成長につながっているようだ。
簡単に書かれた一編でもそれはその人を伸ばす。

「ねえ、辻さんて料理もうまいんだよ。」
「あら、そうなんですか?」
「僕ね、小さい頃からよく遊んでもらって、パンケーキなんて作ってもらったよ。」

そういえば、辻の料理を食べたことがなかったと櫻は思った。
「楽しみですね。辻さん。」
「うん。僕さ、兄弟ができるだろ。だから、パパやママがそっちにかかりっきりになるんじゃないかってちょっと不安なんだ。」
「知りませんでした。でも、アグリ先生もご主人様も淳之介さんのこと、大変大切になさってますよ。」
「櫻先生に勉強見てもらう前はもう、ママ全部勉強のことしか言わなかったんだよ。パパは風来坊だしさ。」

淳之介なりに悩んでいたんだなと思った。
「でも、妹か弟ができるのは楽しみですね。」
「年が離れてるだろ、仲良くできるかな?」
「そういうときに辻さんを巻き込めばいいんじゃないですか?」
「どういうこと?」
「辻さんは周りを明るくするでしょ?絶対淳之介さんのことをハブにしたりしませんよ。」
「あーあ。辻さんが教師になる前はもっといっぱいきてくれていたんだけどなあ。」
「じゃあ、月曜日にきてもらうように淳之介さんからお願いして見てはいかがですか?」
「櫻先生、それはソーグットだね!」
覚えたての英語を使うのは望月譲りか。
とても可愛いこの少年と、後で辻の時間を過ごすことを楽しみに思った。
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