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第九章 成長に合わせて

9、望月夫婦の正月

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元旦の騒ぎから翌日、まだ望月家はおせちを食べたりしてみなゆっくりしていた。
実家に帰っているものもいるので、いつもよりは騒がしくないが、それものんびりしたこの家の雰囲気にあっていた。

朝、アグリは起きて、隣で寝ているヨウスケを心配した。
昨日の深酒で、夜はなかなか眠ていないようだったからだ。

遅く起きたっていい。アグリはヨウスケを眠ったままにして、寝室を出た。

昼食の時間になると、ヨウスケは起きてきた。

「やあ、みなさん、おはよう。」
「もう、ヨウスケさん、お昼ですよ。」
「あれ?そんな時間になっちゃった?お正月っていいね。」

あの、乱れた状態から、いつものヨウスケに戻っていた。
気になったアグリは
「ねえ、ヨウスケさん、顔洗ったら、書斎に来てくれる?」
「いいよ。」

アグリは書斎で待っていた。
トントン。

「どうぞ。」
ヨウスケが入ってきた。

「どうしたの?」
「いえ、昨日、あなたいつになく酔っていたじゃない?だから。」
「うん。それは本当だよ。」
「飲まずにいられないくらいに?」
「うん、最近、書けてなかったんだ、小説が。」
「気が付いてた。」
「そうだよね、アグリ、ずっと家にいるもんね。」
「でも、今は?」
「まだ、書いてないけど書きたいことはできたんだ。」
「どうして変わったの?」
「櫻くんに話を聞いてもらったのさ。」
「櫻さんに?」
「昨日、トイレに夜中行ったところ、サロンに呼んで話したんだよ。」
「あら、寒いのに。」
「でもね、あの子はすごいよ。」
「どう?」
「僕がスランプだって言ったら、すぐに解決しちゃったんだ。」
「内容聞いていい?」
「ノン。実は新作のネタに関わるから。でも、アグリの心配はもういらないよ。」
「大丈夫なの?」
「うん。だから。」

アグリはほっとした。しかし、あんなに悩んでいた望月を一瞬にして解放した会話とはなんだったんだろう。と考えた。

櫻は本当に不思議なところがある。彼女の将来も何かを助ける、そういうものになるかもしれないとあぐりは思った。
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