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第十一章 櫻の冬休み

21、2人の帰還

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櫻の冬休みも最終日となり、アグリは学校の準備もあるだろうからと洋装店と出版社を休みにしてくれた。
読みためていた雑誌(アグリが貸してくれたもの)などもあったので、ありがたかった。

午後、部屋で雑誌を読んでいると、玄関が騒がしくなった。

「お父さん!辻さん!」
どうやら、淳之介の声のようだった。

ん、お父さん、ともう一度櫻は考えてみた。

急いで部屋を出て玄関へと向かう。

「あ、櫻くん、ただいま。」
目の前にいたのは辻だった。
「先生、望月さん、おかえりなさい。」

「あら、どうしたの。あら、あなた、辻さん、急に帰るから。」
アグリもやってきた。

2人が望月家に帰ってきたので(辻は寄っただけだかが)リビングでお茶をすることになった。

「ねえ、お父さん、どこに行ったの?」
「そうだね。名古屋とか大阪とかだよ。」
「南に行ったんだね。何をみたの?」
「お城をいっぱいみたよ。」
「わー、僕ちゃんと大きなお城見たことないから羨ましいな。」
「でも皇居に行けばちょっと江戸城は見られるじゃないか。」
「でも天守閣がないよ。」
「淳はそんなことも知ってるんだね。」

淳之介は旅の土産話をたくさん聞きたいようだった。

アグリは櫻に気を遣って、
「辻さん、櫻さんとテラスに行ったら?」
と言ってくれた。2人はテラスに行った。

「改めて、先生、おかえりなさい。」
「うん。ただいま。」
「楽しかったですか?」
「うん。今までない経験もしたしね。」
「どんな?」
「お世話になった僕の女中に会いに行ったりね。」
「え?若い人ですか?」
「いや、もうおばあちゃんだよ。」
「そんな方がいたんですね。」
「佐藤支店長のお姉さんだよ。」
「え、そうなんですか?」
「もともと関西の人で僕が育つまで面倒を見てくれたんだ。」
「私もいつか会いに行きたいです。」
「うん、ぜひ紹介したいよ。」

アグリが出してくれた紅茶を飲む。
「先生、私、実はいいことがあって。」
「どんな?」
「随筆が雑誌に載ることになったんです。」
「驚いた。まだ女学生の君に。すごいね。」
「学校にバレたらまずいのでペンネームで。」
「早く読みたいけど、雑誌に載ったら読むよ。」
「どうして?」
「君の読者としてきちんと完成形で読みたいんだ。」

櫻は感動した。そして心が熱くなった。
やはり、この人を失いたくない。一番の私の応援者。
これから会えることに感謝した。
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