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第十二章 新学期

7、登校して思うこと

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パーラーに行った翌日、櫻は早めに登校した。

教室には一番だった。
いや、本当は二番目だった。

「辻先生。」
「うん、くるとおもってた。」
「どうして?」
「昨日、楽しんだんだろ?」

朝日が差し込む窓辺にいる辻は眩しく見えた。

「先生。」
「どうした?」
「こんなところ見られたら?」
「ただ、教師と生徒が話しているだけだろ?」
「そうだけど。」
「からくりクラブも反響でね。研究室も落ち落ちしてられないからね。」
「でも、私がいっぱい働くから会える時間が。」
「その時間もあともう少しで変わるかもしれないね。」
「どう言うことですか?」
「佐藤支店長の家に行ったら、会えるからね。」
「ああ。」
「悲しいかい?」
「嬉しいけど、アグリ先生や皆さんと一緒に暮らせなくなるのは寂しいです。」
「すごく素直なんだね。」
「そうしたのは先生でしょう。」

いつ他の生徒が入ってくるかわからないので、距離は縮められない。

「そうだね。でも、佐藤支店長は僕にとって家族同様だからね。」
「佐藤邸でご飯食べたりしたいですね。」
「早く僕自身はそうなりたいよ。でも、望月の家がいいことも僕はわかっているんだ。」
「先生にとって望月さんも家族みたいな人ですものね。」
「うん。望月はいつも僕を刺激してくれるし、裏切らない。」
「自由人同士ですね。」
「僕は、絶対に何度も言うけど、自由を自分にも他の人間にも忘れないでほしいんだ。」
「自由を忘れないって。でも、先生の立場だと本当に難しいですよね。」
「君がいるからさ。僕は自由を忘れないでいられる。」
「先生、聴かれらたら。」
「大丈夫さ。今日は2時限目からって知らなかった?」
「え?」
「昨日、当番でホームルームにいなかっただろ。その時、一限目の先生がお休みになることを言っていたんだ。」
「上野さん、言ってなかった。」
「多分、君といることが楽しすぎて学校のことなんて忘れていたのだろう。」
「でも先生、どこでどの先生が通るかわかりませんから近づいちゃダメですよ。」
「いじらしいね。でも、君が上野くんと楽しんでくれてよかった。」
「ありがとうございます。私、本当に友達と楽しむってことにすごくよかったです。」
「そうだね。もっと、増えると思うよ。君は魅力的だからね。」

冬の青空が辻を照らした。その姿をとても美しいと櫻は思った。
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