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第十三章 養女になる準備

10、朝風呂の心地よさ

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櫻は朝の6時に目が覚めた。
いつも起きている時間だ。

周りを見たら、3人はぐっすり寝ていた。
そおっと布団から出て、乾いていたタオルを持って、大浴場へと向かった。

ふと、櫻は大浴場の不思議を知った。
男女の大浴場が交換されていたのだ。

昨日入った女湯ではなく、男湯だったところが女湯の暖簾がかけられていた。

(本当にいいのかな。。。)

櫻は若干の不安を覚えつつ、女湯と書かれている大浴場へと入っていった。

すると、4名ばかりの歳を取った女性が湯上がりの談話をしていた。

(ああ、よかった)

しかし、驚いたのは広さだった。昨日の女湯の倍はありそうだ。
昨日の少女がいった通りであった。

まさか朝に変更するシステムであることは知らなかったのでなんだか得をした気分になった。

浴衣をサッと脱ぎ、浴室に入る。
こちらも大きかった。ただ、そとがよく見えるので、朝はちょっと気をつけなくてはいけないとも思った。

すでに何名かの女性たちが静かに温泉に浸かっている。

素敵な人との出会いはなかったが、体を洗うと、温泉へと入った。

(ああ、本当に気持ちがいいなあ)

櫻は思い出していた。
辻も半年前に伊香保に来ていたことを。
この温泉に先生も入っていたのだと思うと、より親近感が生まれた。

今度は辻と一緒に来たいなと思った。

着替えの場では老女が井戸端会議をしていたが、何泊もしている人がいることにびっくりした。
こちらの温泉の代金はアグリが払ってくれている。
ここを何泊もできるというのは本当のお金持ちなんだなと思う。

前に、辻が温泉目的だったら湯治がいいと言ってた。
ご飯を作ってもらうこともできるが、自炊して何泊もする安宿のことだ。
でも、こんなに気持ちがいい温泉に何泊もできるのであれば、それも羨ましいなと思う。

未来にそんなことが自分にやってくるのだろうか。
男の人と旅行するなんて考えても見なかった自分が結婚することまで考えている。
その準備に養女になるのだ。

お土産は辻と佐藤支店長に買って行こうと思った。
何がいいか、アグリに朝ごはんの時に相談しようと思う櫻であった。
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