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第十三章 養女になる準備

18、旅行の土産話から

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旅行から帰った次の日、学校の帰りに辻の車に乗っていた。
今日は淳之介の家庭教師なので望月家に直接向かう。

「先生、私、旅行とっても楽しかったです。」
「何がよかった?」
「温泉も良かったし、お食事も良かったし、望月組に行けたのも良かったし、、、」
「ん?」
「本当のところ、一番良かったのは望月の皆さんとゆっくり過ごせたことでした。」
「そうだね。あの人たちはとても素敵な集まりだね。」
「私、ちょっと寂しくあるんです。」
「ようじょにいくことだね。」
「はい。」
「でも、望月の家にいる限り、君は弟子のままだし、僕との未来のためにすまないね。」
「いえ、佐藤支店長も尊敬してますし。」

ふと辻が遠くを見ながら言った。
「あのね、櫻くん、君に言わなくてはと思って延ばし延ばしになっていたことがあってね。」
「何ですか?」
「養女になったら苗字が変わると言うことだよ。」
「ああ、忘れていました。」
「佐藤という名字になる事には抵抗感はないかな?」
「正直いうと、あの婚約者と同じ苗字というのはちょっと抵抗感はあります。でも、尊敬する佐藤支店長の苗字でもありますから。」
「でも、学年が変わって苗字が変わると注目を浴びてしまうね。」
「ああ、そうですね。」
「気にしないのかい?」
「いう人はいうし、言わない人は言わないですから。友人ができるようになってそう思うようになったんです。」
「君は本当に変わったね。」
「そうですか?」
「許すということに寛容だよ。」
「先生、買い被りすぎですよ。」
「いや、もし、今回佐藤に変わっても、しばらくしたら、辻になるんだよ。」
「ああ、そうですね。」
「嬉しい?」
「それは、もう。」
「なんだか、言わせてるみたいだな。」
「いえ、私なんかが辻を名乗れるかの方が不安です。」
「その準備のための佐藤でもあるからね。」

勇気を出して、ある話を櫻はしてみた。
「あの、本当は私一度でいいから、望月と名乗ってみたかったです。」
「ああ、君は望月の家から家族と思われているからね。」
「簡単じゃないことも、できないこともわかっているんです。」
「ああ、でもそれは違う形でできるかもしれないよ。」
「え?」

と、辻が切り出した。その話を聞いて櫻は未来がワクワクすることになる。
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