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第十三章 養女になる準備

19、名前とは

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望月家に帰る車中で櫻と辻は会話をしていた。

「ああ、もったいつけて悪かったね。」
「いえ、どういうことですか。望月を名乗るって?」
「ペンネームだよ。」
「ペンネーム?」
「君は今、まだペンネームを持っていないだろ?」

本当はペンネームを持っているのだが、辻には内緒にしていた。

「え?ああ」
「そのペンネームに望月をつければいいのさ。」
「でも、望月さんの迷惑になりません?」
「アグリくんは喜ぶと思うよ。」

ふと、その話をアグリにして見るところを想像してみた。
とても喜んでくれるような気がした。

「な?悪くない話だろ?」
「でも、いいんですかね?」
「アグリくんに聞くといいさ。」
「望月さんには?」
「あいつは大丈夫だよ。名前は記号としか考えてないからね。」
「先生も?」
「僕もそう考えている部分もある。でも、君と出会って、少し変わった。」
「え?」
「街の櫻の木を見るたびに、ああ、まだ葉もついてないなあとか思うようになったよ。」
「嬉しいです。」
「櫻という名前は君がつけたんだよね。」
「そうです。本当はサクです。」
「そう、名前は自由だ。だから、君らしくいれば、それはそれでいいと思う。」
「そう言っていただけると嬉しいです。」
櫻は辻に抱きついた。

「おやおや、甘えん坊だね。」
「だって、もうお屋敷まで少しですから。」
「毎日、朝起きたら、君がいる生活になる未来が楽しみだね。」

櫻は急に体を離した。
「あ!先生」
「ん?」
「望月さんみたいに、たまにしか帰ってこないとか私は許しませんよ。」
「そんな人だったっけ?」
「私はちゃんとご飯を作って待ってますからね。」
「僕も家庭でゆっくりとしたご飯を食べられる生活に憧れるよ。」
「じゃあ、約束ですよ。」
「まあ、佐藤支店長のお家に入ったら、いっぱい寄るよ。」

車は望月家についた。
いつもは二人で降りることはないのだが、他の弟子が帰ってきていないのと、アグリが辻に土産をと言ったので望月の家に一緒に入った。

「ただいま、帰りました。」
「あの、お邪魔します。」

アグリが、大きなお腹をして、玄関に来た。
「あら、二人揃って。」
「いいかなって。」
「そうね、この時間なら。」
「ということで、櫻くんは家庭教師、僕はアグリ君と話をしてくるよ。」

玄関で3人は少し談笑した。
穏やかな午後だった。
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