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第十四章 望月家からの旅立ち
4、ヨウスケとトモヨ
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アグリと話した後、テラスにヨウスケが出ると、トモヨが月を眺めていた。
「お母さんでも空を見ることがあるんですね。」
「あんたみたいな手のかかる子を育てんたんだから、月を見る暇さえなかったよ。」
「ああ、そうでしたね。」
「いつから、敬語になった?」
「うーん、東京出てからですかね。」
「どうして?」
「時効ですかね?」
「何の?」
「東京で、母のような人がいたんです。」
「ああ、知ってるよ。」
「ご存知でしたか。」
「芸妓のなれはての人だろ。」
「うーん。表現に棘がありますね。」
「まあ、それで東京に出てきたからね、こっちは。」
「え?」
「私は、その人にあってるだ」
「え?」
「まあ。そんなに驚きなさんな。」
「お母さん、いつの間に?」
「まあ、調べてさ、会いにいったんだよ。お前のこともお礼も兼ねて。」
「すごい度胸ですね。」
フッとトモヨは笑った。
「まあ、お前の言うように時効だったしね。あの人は私に謝ってたよ。」
「謝った?」
「そう。父さんにちょっかい出してすみませんてね。」
「そうなんですか。」
「ちょっかい出したのは、父さんにちがいないのにね。商売しているからはある。さすがだよ。」
「お母さんにそんな理解があるとは知りませんでした。」
「まあ、でも、そこまで女に言わせることでしかいないお前の父さんに愛想も尽きたけどね。」
「そうだったんですね。」
「そういや、ヨウスケ、櫻さんの件は決まったのかい?」
「はい、皆さんが喜ぶ会にしますよ。」
「破天荒なことはやめてくれよ。」
「もちろん。でも、ハプニングはつきものです。」
「あんたと暮らしてると、毎日が面白いね。」
「そう言われたのも初めてですね。お母さん。」
「そうだったかい?」
「ええ。」
「お前はさ、手がかかるけど、可愛かった。もちろん勇蔵も。でも、私は私の生きたいようにお前のように生きてしまった。だから、お前の自由に憧れたんだよ。」
「こんなに話すのは初めてかもしれませんね。」
「そうだね。多分、櫻さんがこの家を変えたんだよ。」
「彼女はこれからどうなっていくか、楽しみですね。」
「ああ、お前はこれからも見守っていくんだよ。」
「まあ、辻がついてますから。でも、僕は彼女を題材に小説にしたいと思ってます。」
「お前は一言すぎると小説だね。」
「まあ。小説家ですから。」
二人でハハハと笑った。そして、また月を眺めた。
「お母さんでも空を見ることがあるんですね。」
「あんたみたいな手のかかる子を育てんたんだから、月を見る暇さえなかったよ。」
「ああ、そうでしたね。」
「いつから、敬語になった?」
「うーん、東京出てからですかね。」
「どうして?」
「時効ですかね?」
「何の?」
「東京で、母のような人がいたんです。」
「ああ、知ってるよ。」
「ご存知でしたか。」
「芸妓のなれはての人だろ。」
「うーん。表現に棘がありますね。」
「まあ、それで東京に出てきたからね、こっちは。」
「え?」
「私は、その人にあってるだ」
「え?」
「まあ。そんなに驚きなさんな。」
「お母さん、いつの間に?」
「まあ、調べてさ、会いにいったんだよ。お前のこともお礼も兼ねて。」
「すごい度胸ですね。」
フッとトモヨは笑った。
「まあ、お前の言うように時効だったしね。あの人は私に謝ってたよ。」
「謝った?」
「そう。父さんにちょっかい出してすみませんてね。」
「そうなんですか。」
「ちょっかい出したのは、父さんにちがいないのにね。商売しているからはある。さすがだよ。」
「お母さんにそんな理解があるとは知りませんでした。」
「まあ、でも、そこまで女に言わせることでしかいないお前の父さんに愛想も尽きたけどね。」
「そうだったんですね。」
「そういや、ヨウスケ、櫻さんの件は決まったのかい?」
「はい、皆さんが喜ぶ会にしますよ。」
「破天荒なことはやめてくれよ。」
「もちろん。でも、ハプニングはつきものです。」
「あんたと暮らしてると、毎日が面白いね。」
「そう言われたのも初めてですね。お母さん。」
「そうだったかい?」
「ええ。」
「お前はさ、手がかかるけど、可愛かった。もちろん勇蔵も。でも、私は私の生きたいようにお前のように生きてしまった。だから、お前の自由に憧れたんだよ。」
「こんなに話すのは初めてかもしれませんね。」
「そうだね。多分、櫻さんがこの家を変えたんだよ。」
「彼女はこれからどうなっていくか、楽しみですね。」
「ああ、お前はこれからも見守っていくんだよ。」
「まあ、辻がついてますから。でも、僕は彼女を題材に小説にしたいと思ってます。」
「お前は一言すぎると小説だね。」
「まあ。小説家ですから。」
二人でハハハと笑った。そして、また月を眺めた。
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