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第十四章 望月家からの旅立ち
8、キヨと櫻
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望月家から養女に行くことを告げられてから数日忙しく、望月家の夕食に間に合わないことが続いた。
やっと、落ち着いて、皆の夕食に合流できた日のことである。
いつも通り、皆が接してくれ、櫻は安心しながら夕食を取ることができた。
「ねえ、櫻さん」
キヨが話しかけてきた。
「ああ、キヨさん。」
「食後にテラスに来てくれない?」
「はい、ぜひ。」
夕食の片付けを済ませ、他の姉弟子たちは部屋に戻って行った。
先にテラスにいたのはキヨだった。
「おめでとう、と言うのが一番ふさわしいのよね?」
開口一番、キヨは櫻がテラスに入ると共に話しかけてきた。
「いえいえ、キヨさんの思う通りの言葉でいいんです。」
「私、すごくいい話だと思うわ。仕事のできる佐藤支店長のもとで生活できるのはとてもいいと思う。でも、私個人で言うと、寂しいわ。」
「え?」
「私、ここまで心を開けたのは櫻さんが初めてだったのよ。」
「キヨさん、皆さんと仲良かったからそんなこと言ってくださるなんて。」
「うん。姉弟子の皆さんとは本当によくしてもらってると思うわ。でも、私の思っている先々の夢って、理解されないかもって思って言えなかったの。」
「そうなんですか?」
「私ね、あなたと事務所で働いていて、口が固くて、信頼のおける人だって本当に思ったの。」
「私はただ、夢中に働いていただけです。キヨさんの夢は本当に素晴らしいと思うし。」
「でも、いつかはアグリ先生とライバルになってしまうかもしれない夢でしょ。」
「そう言われればそうですね。」
「そう、そう言うところ。櫻さんは恩を仇に返すのかとか思わないもの。」
「素敵な夢を奪う権利は誰にもありませんよ。」
「うん。でも、今のように夜にこうやってお話できなくなるの、本当に寂しいわ。」
「じゃあ、もしキヨさんが良かったら、文通しませんか?」
「文通?」
「私が洋装店に行くタイミングで、ロッカーにお互いの手紙を入れるんです。」
「いいわね。でも、私字が汚いけど。」
「私も速書きなので決して上手じゃないです。でも、キヨさんと私もお話ししたいんです。」
「なんだか、ちょっと楽しみになってきたわ、櫻さんと文通。」
「私、キヨさんが最初の友達かもしれません。」
「え?」
「友達って姉弟子に言っていいかわかりませんが、一緒にランチに行ったりとか本当に楽しくて。」
「もうできない?」
「いいえ。学校がある日は難しいかもしれませんが、土日とか調整がつけば、あんみつでも。」
「いいわね。私、それを楽しみに修行に励むわ。だから、櫻さんも新しいお父様と素敵な家庭を築いてね。」
「はい!」
二人は徐々に春に向かうこのテラスでその後、くだらない話を続けた。
それは意味のないものかもしれないが、二人にとってはとても重要な時間だった。
やっと、落ち着いて、皆の夕食に合流できた日のことである。
いつも通り、皆が接してくれ、櫻は安心しながら夕食を取ることができた。
「ねえ、櫻さん」
キヨが話しかけてきた。
「ああ、キヨさん。」
「食後にテラスに来てくれない?」
「はい、ぜひ。」
夕食の片付けを済ませ、他の姉弟子たちは部屋に戻って行った。
先にテラスにいたのはキヨだった。
「おめでとう、と言うのが一番ふさわしいのよね?」
開口一番、キヨは櫻がテラスに入ると共に話しかけてきた。
「いえいえ、キヨさんの思う通りの言葉でいいんです。」
「私、すごくいい話だと思うわ。仕事のできる佐藤支店長のもとで生活できるのはとてもいいと思う。でも、私個人で言うと、寂しいわ。」
「え?」
「私、ここまで心を開けたのは櫻さんが初めてだったのよ。」
「キヨさん、皆さんと仲良かったからそんなこと言ってくださるなんて。」
「うん。姉弟子の皆さんとは本当によくしてもらってると思うわ。でも、私の思っている先々の夢って、理解されないかもって思って言えなかったの。」
「そうなんですか?」
「私ね、あなたと事務所で働いていて、口が固くて、信頼のおける人だって本当に思ったの。」
「私はただ、夢中に働いていただけです。キヨさんの夢は本当に素晴らしいと思うし。」
「でも、いつかはアグリ先生とライバルになってしまうかもしれない夢でしょ。」
「そう言われればそうですね。」
「そう、そう言うところ。櫻さんは恩を仇に返すのかとか思わないもの。」
「素敵な夢を奪う権利は誰にもありませんよ。」
「うん。でも、今のように夜にこうやってお話できなくなるの、本当に寂しいわ。」
「じゃあ、もしキヨさんが良かったら、文通しませんか?」
「文通?」
「私が洋装店に行くタイミングで、ロッカーにお互いの手紙を入れるんです。」
「いいわね。でも、私字が汚いけど。」
「私も速書きなので決して上手じゃないです。でも、キヨさんと私もお話ししたいんです。」
「なんだか、ちょっと楽しみになってきたわ、櫻さんと文通。」
「私、キヨさんが最初の友達かもしれません。」
「え?」
「友達って姉弟子に言っていいかわかりませんが、一緒にランチに行ったりとか本当に楽しくて。」
「もうできない?」
「いいえ。学校がある日は難しいかもしれませんが、土日とか調整がつけば、あんみつでも。」
「いいわね。私、それを楽しみに修行に励むわ。だから、櫻さんも新しいお父様と素敵な家庭を築いてね。」
「はい!」
二人は徐々に春に向かうこのテラスでその後、くだらない話を続けた。
それは意味のないものかもしれないが、二人にとってはとても重要な時間だった。
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