350 / 419
第十六章 最終学年
71、二学期の始まりは
しおりを挟む
望月の運転する車で学校に着いた。
「望月さん、ありがとうございました。」
「ううん。これが仕事だし。下校はどうする?」
「今日はちょうど望月さんのお宅に行く日です。」
「じゃあ、下校の時間に迎えにくるよ。何時?」
「今日は始業式で午前なので12時くらいで。」
「ラジャー。」
「え?」
「イエッサー」
「え?」
「もう、了解っていう意味だよ。」
わかってはいたが、望月は終始ふざけているように思えた。
しかし、楽しくはあった。
車から降りて、学校に向かうと、荷物を置いたら講堂へ行くように事務員に言われた。
全員の女学生がそのようになっているようだった。
上野が話しかけてきた。
「おはよう。櫻さん、あっという間だったわね。」
「うん、和枝さんのおかげでいい休暇も取れたし。」
「楽しかったわ。また来年行きましょうよ。」
「ぜひ。」
二人は荷物を教室に置いて、講堂へ向かった。
「珍しいですね。」
「そうね。櫻さんは編入だけど、今まで始業式に集まるなんてあまりなかったわ。」
二人は何があるのか少し不安と期待があった。
大講堂に入ると、大勢の女学生が並んでいた。
数名の教師がそれを整えている。
「静かに!」
校長が大きな声を出した。
みんなシンとなった。
「何かしらね?」
ヒソヒソと和枝が櫻に話しかけてきた。
「何かあるんですかね?」
女学生がそろそろ揃ったと思える時間に突如、横断幕が飾られた。
「全夫人協会 講演会」
櫻はその名前を知っていた。
妻なるもの、母なるもの、家を守るべき。
というモットーとスローガンが掲げられた今婦人たちを囲んだ団体である。
「皆、今日は始業式であるが、全夫人協会の鹿島夫人が来校されたので講演会となったのである。まずはお話を聞くこととしよう。」
校長が鹿島夫人を壇上に呼び寄せ、演説は始まった。
「皆さん、ご機嫌よう。こちら、銀上女学校は日本を背負ってたつ夫人を育成する学校でありますから、ぜひ皆さんとお話ししたくてまいりましたの。家庭は守るべきもので、女性が仕事をしゃしゃり出るなんてもってのほか。女性は家庭を守り、子供を育て、国を強くするべきです。」
櫻はとても、不安な気持ちになった。
戦争の気配が強くなってくるとこの思想が強くなる。
職業婦人を目指す櫻はこの考えには賛同できないと思っていた。
30分過ぎても、ずっと女性が女性たる所以について仕事を否定していたので、櫻は辟易した。
隣の和枝を見ると、意外とちゃんと聞いていたので、少し不安を覚えた。
世間がどんどんこちらの方面に舵を切っているのかもしれないと想像した。
「望月さん、ありがとうございました。」
「ううん。これが仕事だし。下校はどうする?」
「今日はちょうど望月さんのお宅に行く日です。」
「じゃあ、下校の時間に迎えにくるよ。何時?」
「今日は始業式で午前なので12時くらいで。」
「ラジャー。」
「え?」
「イエッサー」
「え?」
「もう、了解っていう意味だよ。」
わかってはいたが、望月は終始ふざけているように思えた。
しかし、楽しくはあった。
車から降りて、学校に向かうと、荷物を置いたら講堂へ行くように事務員に言われた。
全員の女学生がそのようになっているようだった。
上野が話しかけてきた。
「おはよう。櫻さん、あっという間だったわね。」
「うん、和枝さんのおかげでいい休暇も取れたし。」
「楽しかったわ。また来年行きましょうよ。」
「ぜひ。」
二人は荷物を教室に置いて、講堂へ向かった。
「珍しいですね。」
「そうね。櫻さんは編入だけど、今まで始業式に集まるなんてあまりなかったわ。」
二人は何があるのか少し不安と期待があった。
大講堂に入ると、大勢の女学生が並んでいた。
数名の教師がそれを整えている。
「静かに!」
校長が大きな声を出した。
みんなシンとなった。
「何かしらね?」
ヒソヒソと和枝が櫻に話しかけてきた。
「何かあるんですかね?」
女学生がそろそろ揃ったと思える時間に突如、横断幕が飾られた。
「全夫人協会 講演会」
櫻はその名前を知っていた。
妻なるもの、母なるもの、家を守るべき。
というモットーとスローガンが掲げられた今婦人たちを囲んだ団体である。
「皆、今日は始業式であるが、全夫人協会の鹿島夫人が来校されたので講演会となったのである。まずはお話を聞くこととしよう。」
校長が鹿島夫人を壇上に呼び寄せ、演説は始まった。
「皆さん、ご機嫌よう。こちら、銀上女学校は日本を背負ってたつ夫人を育成する学校でありますから、ぜひ皆さんとお話ししたくてまいりましたの。家庭は守るべきもので、女性が仕事をしゃしゃり出るなんてもってのほか。女性は家庭を守り、子供を育て、国を強くするべきです。」
櫻はとても、不安な気持ちになった。
戦争の気配が強くなってくるとこの思想が強くなる。
職業婦人を目指す櫻はこの考えには賛同できないと思っていた。
30分過ぎても、ずっと女性が女性たる所以について仕事を否定していたので、櫻は辟易した。
隣の和枝を見ると、意外とちゃんと聞いていたので、少し不安を覚えた。
世間がどんどんこちらの方面に舵を切っているのかもしれないと想像した。
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる