大杉緑とは俺様だ（完結）

第2章 弁護士になって

9、サチからの問い詰め

俺の名前は大杉緑。いやあ困ったことになった。


梅と逃避行したが失敗した俺。それで、俺は俺自身、何もなかった風を装った。
そして、梅は会合にこなくなった。

「ねえ、大杉さん。」
サチに聞かれた。
「なんだい？」
「ねえ、私に言わなければならないことあるでしょう？」
「いや、仕事も活動も順調だし、俺たちも。」
「あなた、この間、ちょっとの間仕事をお休みしてたでしょう。」
「どうして？」
「あなたの事務所にあなたのお父様に呼ばれて行ったのよ。」
「親父が？」
「帰ってこないから、一緒かって」

焦った。どういえばいいのか。。
「私ね、ちょっとした浮気くらいなら許すわよ。でも、会合の人たちが噂してたのよ。」
「噂？」
「梅さんとあなたが出て行った日とあなたが帰らなかった日が同じなの。」
「ああ、一緒に駅までは。」

多分、俺はオロオロしていたと思う。
「あなた、嘘をつく時、目が泳ぐの知ってた？」
「目が泳ぐ？」
「そう、それを私は知っている。そして、今それをあなたはした。」

そんなに追い詰めないでくれ。
「梅とはなんでもないんだ。」
「私が聞きたいのはそんな返答じゃないわ。」

「じゃあ何を聞きたいんだい？」
「あなたは本当は梅さんと」
「梅と？」
「梅さんと一緒になりたかったんじゃないかって。」

ここは堪えた。
「そんなことはないよ。彼女の思想は賛同するけど、旦那のいる女性だし。」
「まあいいわ。私、あなたを許さないと思う。でも、あなたを許さない代わりにあなたを解放もしない。」
「解放しない？」
「あなたのいちばんのパートナーは私ということを約束して。」
「約束って？」
「婚約よ。」

詰んだ。俺としたことが、ちょっとした逃避行でサチに弱みを握られて。。。

「え？婚約？ちょっとまだ早いんじゃないか？」
「何も今結婚してって言ってるんじゃないの。私と結婚してっって言ってるの将来。」

もう逃れられない。
「ああ、じゃあ、婚約しよう。」
「ねえ、普通、婚約の申し込みってちゃんと殿方からするものじゃない？」
「何するっていうんだ。」
「ちゃんとしたお店で指輪を」

サチがそんな平凡な金持ちの儀式にこだわるとは思わなかった。
しかし、もう、逃れられない。

「じゃあ、来週、フランス料理に行こう。」
「ちゃんと、用意してね。」

サチはどこまで知っているのか、聞けないかった。
しかし、それはそれ。もうどうにでもなれだ。

ということで、今日はこの辺りで、さらばである。