華族の悪役夫人に転生。復讐されないよう、家庭円満を目指します。

いんげん

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車内にて

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病院から屋敷まで、車で戻ることになった。

現代日本に居た際に、免許は持っていなかった。
お金がなかったので車の所有は考えたこともない。
だから、この車が現代と機能がどれだけ違うのか分からないけど、見た目は本当に違う。

「車、格好いいですね……あ、いつ見てもってことです」

うっかり、余計なことを口走り、慌てて言い訳をした。
絹子は、車なんて乗り慣れているに違いない。

運転席の後ろに促され、前後のセンターにあるドアから乗り込むと、宵さまが閉めてくれた。

「奥様、昔は派手なばかりで品がないっておっしゃってませんでしたか?」

迎えに来てくれた若い女中が言った。
すると、彼女は、宵さまに睨まれて「いえ、私の勘違いでした」と手にしていた風呂敷包みを抱きしめた。

「……」

左手側に不機嫌な顔をした宵様が乗り込んだ。
背の高い宵さまにも、すこし余裕のある縦長の空間だった。
並んで座ると、その足の長さに驚く。
さすが、モデル出身の神のお体だ。

「っ⁉」

宵さまの足に注目をしていたら、いつの間にか、宵さまの長い腕が座席の背もたれの上に伸ばされていた。
つまり、私の背に宵さまの腕が存在するのだ。

心臓が喉から絞り出されそうだ。
なんと、おこがましい空間。

必死に腹筋に力を入れて耐えようと思ったけど、産後3か月らしい絹子の腹筋は死んでいた。
発車と共に、後ろへ倒れた。


「……すみません」
目を剥いて宵さまを見上げた。

「何がだ」
眉間の皴が極まって、目も半分になった宵さまに二の句が継げず、押し黙った。

そして、少しづつ、ちょっとづつ、離れるように右にずれた。


やがて、私たちの間には大きなスペースができた。
何となく気まずくて、お互いに必死に外の景色を眺めた。

宵さまの腕も、いつの間にか、彼の膝に収まっていた。


あっ、見えてきた。

お屋敷が見えた時、私は安堵のため息がこぼれた。


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