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絹子と宵
しおりを挟む義母の部屋での収穫は、上々だった。
私は、喜び勇んで屋敷に戻って来た。そして、貰って来たものを鞄に詰めた。先ほどの事、思い出すだけで高揚する。私、もしかしたら盗賊の才能があるかもしれないわ。
「ふふ……」
もしも、これからお金が無くなってしまったら、知り合いのお屋敷に行くのはどうかしら。
構造も知っているし、どのように生活しているかも分かる。お兄様と二人で、各地を回りながら、ほとぼりが冷めたころに、また東京に戻ってくるの。
そうだわ、少ししたら、反省したふりして此処に戻ってくるのも良いかもしれないわ。
その時は我慢して、あの子たちを構って、また色々頂いて逃げればいい。子供の母親を犯罪者として通報なんてできないだろうし。
「よし、行きましょう」
そろそろ、お兄さまと約束した時間。
夫の部屋で待ち合わせをしている。
鞄を持って部屋を出た。
屋敷の廊下は静寂に包まれていた。
知らぬ間に、いろんな美術品がなくなっている。以前は色々と飾ってあったのに。やはり、実はこの家も景気が悪いのだろうか?いやだわ、あの姿かたちでお金もないなんて、なんて価値のない男なのかしら。
そういえば、夫の部屋に入るのは初めてだ。今まで、訪れたいとも思ったことがなかったから。でも、今はお兄様が待っているから、心が弾む。ドアノブを回すと、カチャと音がした。静まった空間には、大きな音に聞こえる。
「……」
部屋の中は、カーテンが開いているけれど暗かった。お兄様は、まだ来ていないのかしら。目を凝らして室内を見渡した。まだ、なにも見えてこない。仕方なく、廊下の灯りを取り入れるために、一度閉めたドアを開け放った。
ぼんやりと部屋の様子が見える。かなり広めに作られている。
恐る恐る、奥へと足を進めて行った。
天井高く広がる本棚、机、クローゼット、そして部屋の一番奥にはベッドが置かれている。
お兄さまは居ないのかしら。
がっかりして、ベッドに腰かけようと、そちらに向かった。
「っ!」
ベッドに、膨らみがある!
人の形をしている。
まさか、今日に限って、あの男が!
慌てて引き返そうとすると、誰か人が立っていて、ぶつかった。
「きゃあ」
思わず声を出してしまった。
でも、きっと、お兄様よね。
相手はシャツにベスト姿で、目線を上げていくと――夫が立っていた。
「ひっ」
思わず鞄を落としてしまい、隠すようにその前に立った。
ベッドは目の錯覚だったのかしら?
「こんな時間に何をしている」
夫は、後ろ手でドアを閉めた。
夫の手には、ランプが下がっていて、ドアが閉まっても部屋の中は、ぼんやりと明るい。
「い、いえ、何でもありません」
「何でもない? 夜中に、夫の部屋を訪れておいて、何でもないこともないだろう」
妙な威圧感をもって、ニヤリと笑う夫に、虫唾が走った。しかし、この局面を乗り越える為なら、少しくらい相手をするのが正解かもしれない。
「そ、それは……そうですね」
「何をするつもりで来た?」
夫は、ランプを持ち替えた。そして、黒革の手袋の感触を確かめるように、拳を握りしめた。
なぜ?夜中に手袋を? 外で月でも眺めていたの? 妙に感傷的なところがあるものね。
「何って、は、はずかしいことを聞かないでください」
私は、恥ずかしがるように俯いた。
「そうだな、恥ずべき事だ。君にその認識があってよかった」
狼狽えて、その気になるのかと予想したが、馬鹿にするようなことを言われ、むっとして顔を上げた。
何を、言っているの?
「どういう意味でしょうか」
私の質問に答えず、夫は私を見下すように、あざけるように笑って髪をかき上げた。
もう、この部屋の金目の物は諦めようか。姑の物だけでも暫くは暮らせる。でも、こんな好機は無い。
「最近は、冷たいのですね。昔は、私に大分気遣ってくれていたのに……その、愛する女のせいかしら?」
私が手を伸ばすと、夫は避けるように奥に進んだ。
許せない……お前ごときに擦り寄ってやってるのに。どこの下賤な醜い女と寝ているのかしら。
「……」
夫は答えない。
今の夫は、以前よりも更に大きく見える。姿勢のせいかしら。
それに、自信に溢れていて――腹が立つ。
抱かれてあげるふりをして、立ち去ってやろう。私は、良い考えに微笑んだ。
「寂しいわ、そのベッドに、誰かお誘いしたの?」
部屋の奥のベッドに近づいた。
そういえば、人がいるように見えたのは、布団か枕、クッションだったのかしら。
「あぁ、先客が居る」
「な、何ですって⁉」
どこの女を連れ込んだのよ!
私は、怒りに駆られ、ベッドに駆け寄りシーツを掴んだ。
ばさりと捲ったシーツは、スルスルと床に落ちた。
すると、ベットの上の人間が露になった。
拘束された男が、横たわっていた。
「いやああ!」
心臓が飛び出すかと思った。
お兄様だ。
両手首、肘、膝、足首を荒縄で縛られ、口には手ぬぐいを咥えさせられている。
衣服は乱れ、顔にも暴行の跡がある。
意識を取り戻した様子のお兄様が、目を見開き、唸りながら悶えている。
「ひぃぃ!」
思わず、のけぞって後ろに倒れそうになった。
すると夫が、肩を抱くように、優しく支えて言った。
「大事な体だ、怪我をするな」
ご丁寧に、腕を伸ばし、ランプも遠ざけている。
「ど、どういう……」
私は、妊娠などしていない。することもない。
「そのままの意味だ」
夫が、小さく笑った声がする。その気味の悪さに、寒気がする。
「こ、これは……なぜ……」
優しく肩を拘束する手が、手袋をしているのは、そういう事だったの?
まさか、私も……いや、怪我をするなって言ってた。私は、助かる。
「知り合いか? 屋敷に侵入してきたところを、捕まえた。少し、話を聞いたところ――君に会いに来たと言っていたが」
夫は、お兄様の顔が見えるように、ベッドの上の出窓にランプを置いた。
お兄様は、必死に助けを求めているように見える。
考えなければ、最善の策を。
二人で逃げる?無理よね。でも、さすがに殺されることはないだろうから、お兄様にひとまず犠牲になって貰って、また後日、落ち合えばいいかしら。
「し、知ってはいますが――」
「何だ」
「幼馴染の男です。お、お金の無心をされていたのです!だから、手助けしようと……」
「ならば、どうしてこんな盗人のような真似を? それに、君は今まで十分、貢いで来ただろう」
夫がベッドの下から、私の部屋にあるはずの、空の宝石箱を取り出した。
「……」
バレていた。まさか、あちらも見られたのだろうか。
探るように夫を見ると、彼は、空の宝石箱から、何かを取り出して投げた。
床の上に、硬いものが落ちる音がした。
鍵だ。
義父母の家の鍵とすり替えた、私のあの箱の鍵。
「しかし、君には感謝している。君が私を呪ってくれたおかげで、どうやら私は彼女に会えた」
心底嬉しそうに笑い、天を仰ぐ夫は、異常だった。
夫の手から、空の箱が落ちて――踏みつぶされた。
「っ!」
背筋が冷えた。
手の震えが止まらない。
「君は、人を呪うことで呪われたのだろうと、ある人が言っていた」
「は?」
「だが、残念ながら、少し薄れてしまったようだ」
ゆらり、大きな背が揺らいで、私に迫ってきた。
恐ろしい目が、私を見ている。
「呪え! もう一度、私を殺したいと思うほど呪え」
地獄を這うような声で言い放った夫は、縛られたお兄様をベッドから引きずり落とした。
「ううぅ!」
無様にうつ伏せに倒れているお兄様。
芋虫のようだ。
首を必死にまげてこちらを見ている。
「ほら、もう話していいぞ」
お兄様の口の手ぬぐいが外された。
「き、絹子助けてくれ! 痛い!殺される!」
「……」
涙とよだれにまみれたお兄様。
私は眉を寄せた。
「随分、恨みを買っている男だな。さすがに手にかけると面倒だから、この男を探している奴らに連絡を入れた」
「いやだ! やめてくれ、勘弁してくれ! 助けてくれ」
「……冗談ですよね」
「いや、そんなわけないだろう。まず君に恨まれるように、この男を殺さないと。この男と逃げるために、高貴なはずの君が、こそ泥みたいな真似をしたんだろう?向こうの女中から報告があったぞ。つくづく、残念な人間だな、君は……」
「な、にを……」
コソ泥。
私は、押しつぶされそうな羞恥に襲われて、耳をふさいだ。
違う、あれは、そんな陳腐な言葉で表現される行動じゃない。
「こんな馬鹿な男に騙されて――知っているか? 君は捨てられる予定だった」
「う、嘘です!」
私は、床に転がったお兄様に視線を送った。
「嘘ではない。これが、その男が今、懇意にしている女に送った手紙だ。もうすぐ大金が手に入る。以前の金づるが戻って来たと書いてあるぞ」
夫は、机の上から1枚の紙きれをお兄様の上に放り投げた。
その手紙に飛びついた。
「……」
手紙は、間違いなくお兄様の字だった。
「嘘よ……うそ……貴方が全部仕組んだのよ!」
手紙を握りつぶして、夫を見上げた。
「そうか、私の策略かもな。美しく、馬鹿で、貧乏な、お前たちを妬んでの犯行か?」
夫は、嘲笑していた。
私を、馬鹿にして、蔑んで、侮辱しているのだ。
「ふ、ふざけないで! あんたなんて、汚い生まれで、気味の悪い男のくせに!」
私が掴みかかると、夫は私を抱き上げた。
すごく、優しく――大切な物みたいに。
「邪魔だな」
私を抱き上げた夫は、床のお兄様を見て呟き、外へ向かって声をかけた。
すると、使用人と、見たことがない柄の悪い男が二人入って来た。
「ひいい! 嫌だ! おい、絹子!助けてくれ! 絹子!」
お兄様は見覚えがあるのか、入って来た男たちを見ると、身をよじり暴れ始めた。
なんて、醜く――無様なのかしら。
「さぁ、お別れを言ったらどうだ」
「きぬこぉぉ!ひぃぃ、うっ……ああー! たす、たすけてくれ!」
「奥様、こいつは貰っていきますね。酷い男ですよ。奥様以外にも、大勢の女騙してますよ。詐欺も一杯してますしね。うちの借金も、大分奥様に返してもらったんですけどね、まだまだ足りない」
男たちは、一撃でお兄様の意識を奪った。
ぐったりと物のように二人に持ち上げられたお兄様。
あぁ、なんて酷い。
まるで大きな虫みたいじゃない。
憧れていた、綺麗で、優しく、素敵なお兄様は何処へ行ってしまったの?
私……困るんだけど。
だって、私の周りは一流で完璧なもので満たされないといけない。
私に似合ったものでないと。
「……」
別れの言葉は何もない。閉まるドアも見なかった。
そして押し黙った私は、ベッドに寝かされた。
夫は、私を見つめて小さく首を振った。
「哀れで、もう――見ていられないな」
「なんですって」
押し倒すように覆いかぶさって来た夫を、殴ろうと手を挙げたが、押さえつけられた。
「お前は、特別な人間ではない。何もない人間だ」
目の前で夫が笑っている。笑われているのは私だ。
「ふざけないで!私は、貴方と違って、教養があって、美しくって」
「教養というのは、人を見る目には、生かされないし、人生において間違った選択ばかりするものなのか。それに美しさは、これから関係なくなる」
「どういう、こと……」
暴力を振るわれるのかと、恐れ顔をそむけた。
「私は、お前を姦通罪で訴えることができる。もちろん、窃盗もだ。それに、その相手は周囲にお前と会うと言って消える。厳しい取り調べになるし、刑期も長いだろう」
私が
この私が
刑務所?
「あ、あははは、そんなわけ――」
「あるだろう、身に覚えが。姦通罪だけなら二年以下らしいが、窃盗もあるだろう」
まさか、この男、本当に私を訴えるつもりなのか。
「嫌よ……嫌!」
「お前が大切にしてきたものは、すべて、無駄なものばかりだ。お前は、蔑んできた私よりも醜い」
気味悪く笑う顔が落ちて来た。
「お前は、醜い」と耳から脳に染み込ませるように呟かれた。寒気がする。
「醜く、救いようのない、馬鹿だ」長くて気味悪い指が、私の頬を耳を這った。
「社会の膿にまみれて、腐れ、不細工」
「っ!」
感じたことの無いくらいの怒りが沸いた。
目の前の男を殴りつけた。
夫の唇が切れ、血が降り注いだ。
おぞましい血だ。
「いやあああ!」
止めどない怒りが収まらず叫んだ。言葉にならない声を出した。
誰の、誰のせいだ。
この男のせいだ。
こいつと、夫婦になんてなったから、お兄様と一緒になれなかった。
見たくもない、お兄様の無様な姿をみる羽目になった。
そのうえ、刑務所?
殺してやる!
無かったことにするのよ!
「ああああ!」
叫んで暴れる私は、男の首に手をかけた。
男は心底嬉しそうに微笑み、そのまま顔を近づけ――
大きな口で私を喰らうように、口づけた。
嫌がることを分かっている顔で。
殺してやる。
呪ってやる。
死ね――
唇が離れ、憎い男が笑った。
そして男は、首を絞められ、圧迫された喉から、恐ろしい声で呟いた。
「消え、失せろ――私は、愛する、女と暮らす」
私の中で、何かが、ぷつりと切れた。
「うあああああ!!」
のどが切れる程、叫んだ。
手を振り回し、足をバタつかせ。
暴れまわった。
思い出したように、再び、相手の首に手を伸ばし――その手を拘束され、再び叫び暴れた。
「ああああ!」
呼吸果て
力果て
一切の、闇へ落ちていく。
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