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彦山視点 ゲーム
しおりを挟む「ねぇヒコさん」
「なんだ」
今日は、俺の家にレオンが遊びに来た。
どこかに出かけようかと話していたが、外の雨が強くなったので、外出は見送った。
つけていたバラエティ番組をゲラゲラ笑いながら見ているレオンを、ご機嫌だな…と、微笑ましく眺めていたら突然コチラを向いてきた。
付き合い初めて2ヶ月……まだこの綺麗で可愛い顔に慣れない。
いまだに「どうしたら、こんな奇跡みたいなの配置になるのか…」と思うし「なぜどんな表情をしてても可愛いいのか」と不思議だ。
そもそも……この内側から輝くような感じは何なんだ……肌の透明感か? ここ最近それが増したのは、会うたびに良いもの食べさせた成果か?それなら……ちょっと嬉しいぞ。
「ゲームしよ」
「は?」
ソファで向かい合い、手を握られて、俺の心臓が五月蝿く暴れている。
やめろ……その自然にボディタッチするのをやめろ……表情が保てない。
「今から見つめ合って、キスしたくなった方が負けね」
「……お前は……馬鹿なのか……」
そんなにニコニコ可愛く笑って……すでにしたいに決まっているだろう……やる前から俺が負けている。
「馬鹿で良いからやろうよ!ハイ、決定!今からスタートね!」
ちょっとスネた顔が、可愛いい…もう既にコチラの顔が赤くなり、見ていられないのだが……何とか顔に力を入れて耐える。
「……」
「……ヒコさん……眉間のシワすごいよ……ほら、ニッコリ笑って」
レオンの笑顔が眩しい。
だめだ……かわいい。
自分の容姿の自覚があって、分かっててやる時と、自然なときが有るが、両方カワイイが……ナチュラルな時の破壊力が凄い。
「ヒコさんの笑った顔って滅多に見れないけど……俺、ちょー好き!俺しか見れないのかなって思うと、きゅんきゅんする」
「……」
何なんだ…この生物は……。
というか、コレと住んでいて手を出さずにいられる、親友くんは何なんだ……もういっそ怖いぞ。
早く、同居生活を解消してほしい。金だったら出す。だが……意外とレオンが頑なだ。
「ヒコさん……好き……カッコいい……あーあ、ちゅーしたくなっちゃった、俺の負けだー」
そう言って俺の手を離して笑ったレオンを、ソファに押し倒してキスをしたのは……俺のせいではないと思う。
「…んっ…ん……ひ……こさん…」
「……」
大きな目を丸くして驚いた顔をし、俺を見上げるレオンに……煽られる。
なんで……そんな顔をすんだ。
「ヒコさんもキスしたくなった?」
「……あぁ」
「やった!嬉しいな」
別に店長のような美形でもない、おっさんにキスされて、こいつは本当に良いのだろうか?
俺は不思議でたまらない。
嫌じゃないのだろうか?
俺は不安で、これ以上進めない。2ヶ月以上経つが、キス以上の事が出来ない。
今も反応しそうになったソレを必死でなだめる。レオンの上から体を起こして、テレビに目を向けた。
テレビで騒いでる男性アイドルが目に入ったが、どう見てもレオンの方が輝いている。レオンを前にすると、彼らも普通の男にしか見えない。
「うーん、幸せだねぇ」
レオンは、ソファの上で大きく背伸びをすると起き上がり、正面を向いて座る俺に抱きついてきた。
俺の肩とソファの背に挟まって、猫みたいな声を出している。
カワイイ……愛くるしい……愛しい。
本当に、何なんだ…この生き物は……成人男性だろ…お前!!くそっ!
「ヒコさん……水泳でもやってた?」
「あぁ…」
「やっぱり、凄い逆三角形の肉体!超カコイイ。ジム通いで維持できてるの凄い!」
レオンの手が、俺の体を触っていく。
こいつのこの行動は恋人だからなのだろうか?
いや…コイツなら誰にでもやりそうだ……そう考えると嫉妬で胸がチリチリしてくる。
「今度、一緒にプールか海行こうよ」
「……」
レオンとプールか海?
いや…駄目だろう。ただ街を歩いているだけで、周囲の注目を浴びて、待ち合わせ場所では、ナンパやスカウトに声をかけられているのに……却下だ。
最近は、待ち合わせすらしてないんだぞ。毎回心配で迎えに行く。
「ヒコさん、にぎやかな所嫌い?じゃあいいや…」
「今、お前…誰か他のやつを誘おうと考えたか?」
「えっ?なんで分かったの」
「おい……絶対に親友くんは却下だぞ……店長も誘うなよ」
あえて話していないが、こいつが最初にくれた連絡先書いた紙を抜いたのは店長だ。
後からレオンを狙っていたと謝られた…。
「行かないよ。恋人がいるのに他の男とは。パパと行く」
「はぁあ?」
こいつの言うパパは、きっと俺の親父のことだろう。
すごく仲の良くなった二人は、頻繁に会っている。
だからといって、なぜ二人で?理解出来ない。
「パパ、夏旅行につれてってやるって言ってた。沖縄か北海道どっちが良いかって。パパと沖縄行ってくる」
「ちょっと待て!俺とも行ってないのに親父と旅行?意味が分からない」
「3人で行く?」
「断る!というか、お前も断われ!親父と旅行する暇があるなら俺と行くぞ……」
レオンと旅行…つまり……それは……。
いよいよ……か?
「ホント!?行く行く!ヒコさんと旅行楽しみ!どこ行く?海?山?空?」
レオンがスマホをテーブルから持って来ると……俺の足の間に座った。
サラサラの金髪が目の前で揺れる。「ヒコさんちのシャンプー良い匂いだったから同じの買った」と言われ匂いを嗅がされたときの衝撃が忘れられない。
「ヒコさんと旅行だぁ」
俺の足の間で顎をそらして見上げてくる、その笑顔…。
あぁ…くそ……いちいち可愛いいのをやめろ!
「ご飯が美味しいところはどこだろうねぇ」
レオンは、スマホで色々と検索し始めた。
どこでも良い。
レオンと居ると退屈とは無縁だ。
あぁ…とりあえず、トレーニングして体を絞ろう。少しでもアイツの目に良く写りたい。
「旅行の計画、楽しいね!」
「そうだな」
こらから何度も一緒に旅行ができたら良いな…そう願わずにはいられない。
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