太陽と可哀想な男たち【BL】

いんげん

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そろそろ限界だ 彦山視点

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「えへへ……ヒコさん大好き」

今日は、4日ぶりにレオンが家に来た。
あの公園での一件か1ヶ月。
今、レオンはダンプバーガーのバイトを辞めて、彦山製作所で不定期のバイトをしている。
レオン生活費くらい俺が出したかったが、妙にこだわり強いアイツは受け入れず……折衷案でそうなったのだが……レオンには親友君もセットで付いてきた。
親父いわく、棚からぼた餅らしい。
両者にとって利益があり、俺にとってもレオンとの時間が、取りやすくなって嬉しい限りだ。

あの…親友君さえ居なければな……。
彼のレオンに対する想いは強く、全く揺るがない。「将来的には、レオンは俺と海外のラボで研究するんで……遠距離恋愛って、続かないですよ……レオンは特に……今を楽しんで下さい」と特大の牽制球が飛んできたが……俺は、海外に身一つで行く事に躊躇いは無い。人生設計は少し変わるが、レオンとの交際を始めた時点で設計は変わっている。また、1から始めるのも悪くない。レオンも居るなら余計に。

ただ…目下の悩みは大きい。

「ヒコさん……どうして、こんなにカッコいいの…好きすぎる」

そう言って、ソファに座る俺に抱きついているレオン。
最初は……気を使っているか、リップサービスのように言っていると思っていたが……どうやら、本気らしい。
ハッキリ言って意味が分からない。
俺の顔の造形は、レオンや店長のような美形ではない。親友君のような万人受けする顔で、表情で惹きつけるカッコ良さもない。
さっぱり意味が分からない。周囲の人間が避けてとおり、夜、外を歩けば警官に呼び止められる顔だ。人生で褒められたりしたことなど無い。フランスでは「サムラーイ、ニンジャ!ハラキリ!」とからかわれ、中国系の奴らには「どこのジャパニーズマフィア所属なんだ」と聞かれたことがある。
理解できない。どこも格好良くないだろう。
ただ、最近思うのが……コイツ…自分の綺麗すぎる外見を見すぎて……小汚いおっさんが、もういっそ新鮮に見えて、男らしさ=格好いいと勘違いしているのではないか?それぐらいしか思い当たらない。
ただ……好きな奴に、蕩けるような笑顔で「格好いい」と言われて、嬉しくない男はいない。
こんなに密着され、欲望を抱かない男はいない。

ただ……あまりにも無邪気に好意を示し、甘えて来るものだから……手が出せない!!
「ちゅーして」とは何時もいうが「セックスしたい、抱いて欲しい」とは一言も言わない。
やはり……俺とはキスまではできるが、セックスは無理なのだろうか?
もう……アホみたいに、男同士の行為については勉強した。フランスのゲイの友人にも色々相談をしたところ……わざわざグッツまで送られてきた。

正直、限界が近い。
何としても……我慢したいと思うが…無理だろう!
何しろ可愛すぎる。アホみたいに可愛い!ボディタッチもスキンシップも多い上に……いちいち可愛いい!
何度、情けなく勃起しかけたか分からない。

ただ……俺としては…レオンの意に反する事はしたくない。レオンが俺としても良いと思えるまで待ちたい。そう考えてはいるんだ。

だからか今も、見てないテレビに、必死に目を向けて体を固くし、抱きつくレオンを気にしないフリをしている。
そこらの大木と、可愛いいコアラみたいだ…。

「ヒコさんへの好きが止まらないー」
顔の表情を引き締めてレオンを見る。
大きな瞳に長いまつ毛……形の良い鼻……瑞々しい唇。
「……」
こいつを作ったのはヴィーナスに違いない。
「もー、今、絶対俺のことバカだと思ったでしょ?良いけどねぇ、ヒコさん好き過ぎてバカなんだから、仕方ない」
「……お前……本当にどうしょうもないな……」
くそぉ……俺をこれ以上どうしようって言うんだ!
お前の体重に抑えられていなければ、とっくに下半身が不味いぞ。
「ほら、ほら!五月蝿い唇を塞いでよ」
そう言って、レオンが目を閉じた。

あああああ!!くそっ!!誰かコイツをどうにかしろ!!殺される!
どうせ…またキスをして…満足そうに笑って…普通に過ごすんだろう。
俺は、至福でもあり地獄の時間を覚悟し、レオンの唇にキスをした。

「……んっ」

レオンの鼻からぬける声が……キツイ。普段は幼い顔に見えるのに、話さない、笑わない時は、顔の作りが際立って幼さがぬける。急に色気が出る。
俺の服を握りしめる細い指が愛おしい。

「………好きだ……」

つい、口をついて出てしまった。
レオンが驚いたように目を丸くした。

「ほんとに?」

顔を少し離し、俺を見上げる目が揺れているように見えた。
何を言っているんだ今更。俺の方が好きで付き合って貰っているんだろうが。

「あたりまえだろう……お前が愛おしい」
ふわふわした金髪の後頭部をなでる。
最高の触り心地に、思わず顔の表情も綻ぶ。
「…………っ……だって!いつも俺ばっか好きじゃん!ヒコさん、ちょっと引いてるのかと思った……あんまり言葉くれないし……」

レオンの目が潤み、大きな瞳から涙が零れそうだ。
俺は焦りで、動悸が止まらない。なんで…なぜ……そんな事に。
事あるごとに、あんなにレオンの事を大切だと、一緒に居たい、側にいれて嬉しいと言ってきたのに?

「っ!」

俺は、フランス時代……そこら中で見かけた暑苦しい恋人たちを思い出した。アイツら、人目を憚らず……チュッチュ、チュッチュ、キスをしまくり……愛を語りまくっていた!!

そうなのか……あれを……あれをしないと伝わらないのか……愛というのは……いや……アレはいくらなんでも恥ずかしいだろう!!

レオンの目が涙をこぼしながら、俺を必死に見つめている。

くそぉ!言うしか……言うしかないのか!!思い出せ!!アイツらが言っていた言葉を!

「Je t’aime au ……」
「……ん?」
「!?」

しま……った………日本語変換を……忘れた。
俺は、固まった。
まさに……これでは、アイツの言う……おフランス野郎ではないか!!恥ずかしさで爆発しそうだ!

俺が固まって赤くなっていると……レオンが顔を近づけ、耳元で囁いた。

「……もう一回日本語で言って」

「………愛している……お前が想像するより……ずっとだ」
俺は、レオンの頭を支え、キスをしながらソファに押し倒した。

「……んっ…」
いつもの触れるだけのキスではなく、食いつくように口づけをした。

「…んん……ぁ…」

吐息とともに漏れるレオンの声が、俺を刺激する。
愛おしくて、可愛いくて……行儀良く大人でいようとする意識が飛ぶ。
本能の赴くまま、レオンともっと溶け合いたくて……小さな舌を追いかける。

「…きぃ…ち……さん」

レオンは何もかもが作りが華奢で、本当に自分がカマキリにでもなって…美しい蝶を喰ってい気分になる。

「お前が、好きだ……」

こんなんじゃ全然足りない。飢餓感が満たされない。
付き合いを始めても、少しも俺の恋人だなんて信じられなかった。
歳の離れた弟に懐かれているみたいだった。

「……お前を、抱いてもいいか」

この肉欲を伴う感情を抱いているのは俺だけではないと、信じたい。

「……」

レオンは、恥ずかしそうに……でも嬉しそうに笑って頷いた。
反則だろう……その顔は……。









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