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雄っぱい祭り
しおりを挟む朝が来て、ジフが蒼陽とバイクで出ていった。
二人を見送るのに、何度も「気をつけて」「無事に帰ってきて」と念をおして、最後には豹兒が俺をおさえて「さっさと行って」と二人を追い払うように、送り出した。
それぞれのバイクに跨り走り去った、渋いジフと超絶美形の蒼陽は、とても絵になった。
格好良かった。まさにお似合いだった。豹兒とジフの恋を妄想したこともあったけど、片思いだったけど、やはり公式のカップリングのしっくりくる感じは凄い。
「さーってと、やることやったら、俺は漫画部屋に籠もるから、ポチの事は豹兒に任せるね」
レッドは嬉しそうに親指を立てて、言った。
鬼の居ぬ間に、漫画三昧なのかな。
俺が来てから、レッドは俺の面倒見る時間も増えて忙しくなっちゃっているだろうし、今日は迷惑かけないぞ。
「よし!豹兒、今日は一日よろしくね!」
「……ああ」
□□□□
豹兒と畑仕事して、洗濯して、パン焼いて食べて。
「何かしたい事ある?」
と聞かれて、俺はずっと気になっていた守衛室の調査を願い出た。
静かに大人しくしていると、ジフの事が気になって、気になって仕方ない。アホなことに興じよう。
「あそこ、絶対に怪しい物とか一杯あるよ!」
俺の健全な青年の部分が騒いでいる。
ジフとレッドの自慰室。いや、昔はもう少し人数が住んでたっていうし、他の人のお宝とかもあるよきっと!
ソロソロ、俺も綺麗な女性のグラビアとか見たいよ。もういっそ服着てて良いから女性が見たい。
鏡を見ると、女性顔負けな可愛い子が映っているけど、違うんだよ!女の子が良いんだよ!
豹兒にも良いお宝を見つけたら、分けてあげなきゃね。性的な兄貴分として!
「……まぁ、いいけど……」
いつも通りの無表情で、あんまり乗り気じゃない豹兒を引き連れて、守衛室に向かった。
今日は、もう居ないけど、豹兒に女の子という素晴らしき存在を教えてあげるのだ。
あぁ、女の子居たら、豹兒って凄く、凄く、すごーく、モテるだろうに。
黒髪の艶美形の黒豹男子でクールで強くて逞しい。何でもできるし、優しい。勿体無いなぁ。
「ポチ?どうしたの」
「なんでもない、豹兒格好いいなって思ってた」
「……」
「よーし探検だ!」
俺は、辿りついた守衛室に走り込んだ。
手始めに開いた下の棚は、タオルとか、トイレットペーパーとか、銃火器系とか、珍しくないものばかりだった。あとは所々に、レッドの漫画本と、ジフの囲碁。豹兒の小説。サバイバル系や、自給自足の本とかもあった。
「……上の備え付けの戸棚怪しい!」
戸棚をチェックする為に、手近な椅子を探すが、回転する椅子ばかりだ。
「豹兒、椅子抑えてて」
「……」
丸い回転する椅子に慎重に乗ろうとしたら、腰を抱いて持ち上げられた。
「おお! 豹兒、ありがと、右から!」
豹兒が移動してくれて、俺は腕を伸ばして棚を開けた。
棚の中は三段になっている。一番下と真ん中は見えるけれど、上の段は見えない。
下の段には、なんて事無い物が詰まっていた。中段と上段には箱が置いてある。
まずは、中段から手にとった。クッキー缶だろうか?ニワトリの絵が描いてある。
「豹兒、おろして」
優しく床におろしてもらい、箱をテーブルに置いた。
「何かな、何かな」
開こうと思うけど、ガタついていて中々開かない。
チラリと豹兒を見上げた。
「……どいて」
缶に豹兒の大きな手が被さりパコンと音がして開いた。
中には……エッチな本……ではなかった。
「何だろこれ」
箱に入った電化製品みたいなのと、ドレッシングみたいなやつ、それにキラキラした綺麗な小箱。マッスルな男性が表紙の本。
「んー、俺、文字読めない。豹兒これ何て書いてあるの?」
電化製品的な箱を持ち上げて見せた。
この世界の文字、英語はなんとなくそのままだから、ちょっと分かるけど、それ以外がアジアの文字ごちゃ混ぜで、難しい。
これは、髭そりとかバリカンとかそういうのかな?
眉を寄せた豹兒が顔を近づける。
「……マッサージにも最適、モードは五段階……ローター」
「ん??」
箱の文字を読んだ豹兒は、今度ドレッシングと綺麗な小箱を手にした。
「ラブローション、コンドーム」
「んん??」
豹兒は、真面目に商品のラベルを読んで、俺に渡す。
そして次は、本を手に取った。
「初めてでも痛くない、男同士のアナルセックスの進め方」
「……なっ……」
何てこった!!
よくRPGとかが、丁度良い場所に、丁度良いアイテムが隠されているみたいなソレなの?!
嘘だろ。恐ろしい!なんて恐ろしい世界なんだBL小説界。罠が一杯仕掛けられている。
ここ自慰室なんでしょ?なんでオカズじゃなくて、そっちへ!? アレなの?女性が滅亡して20年も経つと、もう男性ホルモンとか別の方向に行っちゃうの??
「……男同士の性交は」
「ストップ!!豹兒!」
「……」
中身を読み上げ始めた豹兒が止まった。どうしたのかと思って、その本を覗き込む。
すると、ソコには写真つきの男性アナルセックスのハウツーが載っていた。
お…おぉ……。
チラリと豹兒の顔を覗き込むと、凄く難しい顔をしている。
そして、ペラ、ペラ、とページが進んでいく。
えっ…それ、読むの!?
「……」
豹兒の顔はとても真剣だ。豹兒の少し目尻が上がっている猫目が、せわしなく動き文字を追っている。ペラ、ペラ。
もしかして、これって全部エッチなグッズなのでは?
コンドーム辺りで違和感を覚えたけど……このマッサージ器も、まさかのエロマッサージ器なの?
俺は、恐る恐る、その箱を手に取った。
パカッと上を開けると、白いプラスチックで出来た商品の形にくりぬかれたケースが出てきた。
マッサージ器はパッションピンクの卵が半分になった形の物が二つ入っている。それぞれの半玉からコードが伸びて、途中で一つになって、その先にリモコンが付いている。なんか、聴診器っぽい。
でも、これ何に使うエログッツなのかイマイチよく分からない。童貞には難易度が高い。
「っあ!」
これは……まさか、おっぱいに使う物なのでは?
女性の、おっぱいに……何て事だ。けしからん。エロ過ぎる。
「豹兒、これさぁ」
きっと、女性のおっぱいに使うエロいやつだよって言おうと豹兒を見たら、豹兒はまだ真剣に本を読んでいた。しかも、かなり読み進んでいて、残り数ページじゃん。早っ!まぁ、男子としては、エロいものは何でも気になっちゃうよね。
「……」
悪戯心が湧いてきた。
俺は豹兒の雄っぱいを見つめる。俺の真っ平らなおっぱいと違って、発達した大胸筋で作られた雄っぱい。そして、割とピッチリした黒のTシャツに時々浮かび上がっている、豹兒の乳首。
狙いはソコだ。そっと豹兒の背後に歩み寄り、背中に頬を寄せて抱きついた。
「っ!」
俺の動きは目に入っていただろうけど、抱きつかれると思っていなかったのか、豹兒がビクリと体を震わせた。
「ねぇ……豹兒…」
身長差があるから、俺の顔は豹兒の肩甲骨の間に埋まる。
「……なに」
「俺ね……あのね」
クスクス笑いながら、両腕を豹兒の前に回して、腹筋を探り当てる。
そして、その手を動かし、撫でるように上へと移動させていく。
「おっぱいのエロい機械見つけちゃった!」
そう言って、豹兒の乳首を探り当てて、指でこちょこちょとくすぐる。
「……」
豹兒が首を回して俺を見下ろした。あっ…ちょっと困惑顔かな?
凄い、可愛くて……俺は、自分の顔が満面の笑みで興奮しているのが分かる。
「使ってみよーよ」
豹兒の雄っぱいを揉み揉みしながら囁いた。
しばらく逡巡した豹兒は、片手で本を閉じて、テーブルに置くと、俺の手をどかして振り向いた。
「……貸して」
えっ…いいの!?豹兒の雄っぱいにローター使っていいの??
認められると思っていなかった俺は驚いた。てっきり、「馬鹿なの」って言われると思ってたのに。
「豹兒……」
感動で目が潤む。
あぁ…鼻息荒くなりそう。色気たっぷりの美形の胸にローター!?
俺、ノーマルだったはずだけど、美形はもう性別越えるよ!だって視覚的な破壊力が半端じゃない。
BL世界に転生とか糞!と思ったけど、別に俺がBLするわけじゃないし、むしろ……なんか、良いかも。見たいかも。
ノーマルな世界に転生して、俺のハーレムとか言われると、童貞で最下層の草食男子だった俺には、むしろ荷が重いけど……美しき男達のBLが展開されているのを、外野で見るの、有だな。
「……ポチ」
俺の顔を熱の籠もった目で見つめる豹兒。
彼の少しふっくらした朱色の唇が俺の名前の形に動いた。
うわ!うわあああ!!エッロ!エロいよ、豹兒!さっきの雄っぱいマッサージ、気持ち良かったの!?
身長差があるから、少し顔を下に向けた豹兒の前髪が、流れるように動いて、目元に影を落とす。
その艶々の黒髪、触りまくりたい。でも、なんかジフだとハードル無いんだけど、豹兒の髪を触るのは何だか……恥ずかしいから、出来ない。
豹兒の長い腕がぎこちなく上がって、ゆっくりと俺の頭の後ろで重なり合って……胸元へ引き寄せられた。
俺の中に、豹兒の匂いが入ってくる。
「ポチ」
な…なんだ……俺の心臓が、校庭に走り込んできた犬くらい、めちゃくちゃに掛け回っている。
でも、よく耳を澄ませると、豹兒の胸からもテンポの速い鼓動が聞こえてくる。
俺は衝動に駆られて、豹兒の背に腕を回して、強く抱きしめた。
豹兒の頬が俺のピンクの髪に押し当てられる。
「……っ!」
忘れてた!雄っぱい!俺は雄っぱいにローターを使うんだった。
目的を思い出した俺は、腕を解いて、バッと豹兒の顔を見上げた。
「……ポチ」
豹兒が……笑ってる。
いつも無表情な豹兒が、口元を緩めて、釣り目がちな目元を細めて……柔らかく笑ってた。
凄く綺麗で、見ているだけで心が温かくて。
なんだか、泣きたくなるような……。
とにかく
恥ずかしい!!
「うぁああ」
お尻から湧き上がるようなムズムズ感に堪えられず、俺は声を出した。大声で叫ぼうと思ったのに、なんだか情けない声しか出なかった。
「はずかしい……はずかしい…恥ずかしいよ!」
八つ当たり気味に、豹兒の耳を掴んで引っ張った。
「……なんで」
豹兒が優しい声で問いかけてきて、もっとムズムズした。
「分かんないよ。豹兒が悪いと思う。豹兒が格好よすぎて悪いと思う!」
俺は、越えてはいけないBLの世界の輪の中に、危うく一本足を入れるところだった。
危ない。豹兒……恐ろしい奴だ。
「……ポチは、可愛い」
「やめなさい!可愛いのは女の子!待って!今度こそ、ちゃんとグラビアアイドルとか探すから!」
俺は豹兒の腕から抜け出して、拳を握った。
「俺達の青春は、過ちを犯さない!やっぱり、おっぱいは女の子!あっ!もしや……」
レッド……ちょっとエッチな漫画とか持ってないかな?
あるでしょ。絶対にあるでしょ!
「豹兒、レッドの所に行こう」
「……なんで」
「とにかく行こう」
俺は嫌がる豹兒の腕を引いて、レッドの漫画部屋へと向かった。
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