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ひそひそトーク
しおりを挟むその晩、出来る限りの記憶を蘇らせて思いだした。
たしか、ジフと蒼陽の出会いは、この出張ゾンビ退治が出会いだったんだんだと思う、多分だけど。
原作開始は、もう少し後で、今、蒼陽が所属している下野の人達が内部分裂して、その流れで蒼陽は、数人のメンバーとこの近くで暮らし始めて、顔を合わすうちに、ジフは蒼陽の強さを認め、共に戦う間に惚れるんだ。
でも、下野の人達が一斉にゾンビ化して……レッドもジフも死んでしまう。
下野の内部分裂の原因って何だったんだろう?
蒼陽が下野から出てくる所から始まってたからなぁ、書かれてなかった。
もしかしたら、下野が内部分裂しなければ、このまま平和に暮らせるのでは?
俺は、うーんと唸っていたベッドから起き上がった。
今、何時くらいだろう?今日の見張りはレッドだから、いびきが響いていないから、部屋が静かだ。
音を立てないように、そおっとベッドから立ち上がる。
普段は使われていない一番窓側のベッドの上を覗き込む。
「どうしたの?」
うっわ……。
まだ起きていた蒼陽が、微笑みながら囁いた。右腕を枕にして、横を向いているので……見ているだけで添い寝された気分になり、なんだか落ち着かない。
蒼陽の腕が此方に伸びて、長い指が、俺の頬に触れた。体中がザワザワする!
「あの……き、聞きたいことが、あるんだけど…」
ジフと豹兒を起こさないように、小声で顔を近づけて話す。
「うん、何でも聞いて」
やめてほしい、その蕩けるような笑顔、まじで、蒼陽が魅惑の主人公だって知らない男達だったら、絶対勘違いするやつだよ!
「あのさ……蒼陽、蒼陽は下野のグループにいるじゃん」
二段ベッドの20cmくらいの下の柵に乗って、上の柵の所で腕を組みながら話を始めると、蒼陽がこちらに寄ってきて、俺の背中に左腕をまわした。
すると俺達の顔は、凄く近くなった。
うっ……薄暗くても、美形。顔の凹凸がクッキリ、はっきりしていらっしゃる。目も凄く綺麗で、もはや芸術だ。
「うん、もう3年くらい居るかな」
「どんな所?」
確か結構大きなグループだったはず。だから、後にゾンビ大発生したんだし。
「もしかして……一緒に来てくれる」
そう、蒼陽が囁くと、豹兒がベッドの柵を蹴った。
「彼、寝相悪いね」
俺は、振り向こうとしたけど、蒼陽の腕が邪魔で諦めた。珍しいな、豹兒寝ているときにピクリとも動かないのに。
「あのさ……」
内部分裂の兆候はあるのとか突然聞けない。
「俺もそこに居たの?蒼陽と一緒に」
「ううん、俺達は二人と一匹で、あっちこっち野良生活をしてたよ。はぐれてからは分からないけど……」
蒼陽は、悲しそうに目を伏せた。
「そっか……」
どう聞き出して良いか分からない。
もうこうなったら世間話で運良く聞き出せないかな。
「ジフのここはとっても良いところなんだけど、下野はどう?」
脈絡なく会話飛びすぎかな?
「うーん、人数が多いし……ちょっと人間関係が複雑で、ポチにはオススメ出来ない所かな」
「どうして?」
「こんな可愛いんだよ、酷い争いになる」
いやいやいや!確かに今の俺の容姿は可愛いかもしれないが、いつも争いを起こしていたのは、蒼陽だろうか!『屍街世界』は蒼陽の争奪戦だから……あれ?まさか……内部分裂も?
「蒼陽が争いの種なんじゃないの?美し過ぎて罪ってやつでしょ」
俺は陶器みたいな、白くてスベスベの蒼陽の頬を突っついた。
「そんな事ないけど……もし、外の世界に興味が有るなら、一緒に野良生活する?今度は、ちゃんとポチを守るよ」
突っついていた人差し指が優しく捕らえられて、チュっとキスをされた。
指先に柔らかい唇の感覚が灯る。
「っ!」
俺はビックリして、ベッドから飛びのいた。
「いい。大丈夫!俺はここに居たいから」
蒼陽に背を向けて、ジフのベッドに駆け込んだ。
絶対、絶対起きていたはず。
案の定、左腕と胸の間に入り込んだ俺をジフは驚きもせず、睨むように見ている。顎に生えてきている無精髭が渋い。
「犬……」
ジフの胸板の上に頬をのせて、Tシャツを鷲掴みにした。
あぁ…安心する。
「無傷で元気に帰ってきてね、ジフ」
この世界は、平和な元の世界とは違う。しかも、ジフは小説の中では死んでしまう人だ。
共に過ごしていた人を失う喪失感は、もう味わいたくない。事故で亡くなった両親の事は、未だに色々な後悔と共に思い出す。
「帰ってきたら、またお風呂用意するね」
泣きそうになるのを、ジフの脇に埋まる事で耐える。
「うるせぇ……さっさと戻って寝ろ」
ジフは俺を押しのけた。
「あっ……ちょっと待って、今の何かフラグっぽかった!やり直す!」
だめだ、しんみりしちゃ駄目だ。
「ああ?」
「ジフが無事に帰ってきたら、エッチな奴隷頑張るね」
ふざけた事を、言って馬鹿な雰囲気でフラグを折っておく。
「いらねぇって言ってるだろうが!!おい、ソコの奴ら、本気にするな!ったく、寝かせろ……」
俺に背を向けて横向きに寝始めたジフに、お布団を掛け戻った。
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