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蒼陽が新しく仲間になりました。
しおりを挟む「今日からお世話になります」
蒼陽が、ゾンビ退治の報酬と共にジフのグループにやって来た。
雨のせいなのか下野でちょっと揉めたのか、言っていた日より数日遅くなった。待っている間の俺は、心配でドキドキしていた。蒼陽が来てくれて安心したけれど、どうか……内部分裂とか引き起こしてませんようにと祈るばかりだ。
「まぁ、せいぜいこき使ってやるぜ」
ジフが蒼陽の肩を叩いた。
「……」
豹兒は黙って軽く頭を下げた。
「「蒼陽!!」」
二人は新しい仲間にクールな反応をみせたが、俺は蒼陽の胸に抱きつき、レッドが二人まとめて抱きしめて、大はしゃぎだ。
俺……筋肉プレスで圧死するかもしれない。あぁ……でも、やっぱり蒼陽の雄っぱいは、良き弾力です。
「レッド……ポチ、死ぬ」
豹兒に声を掛けられ、レッドが「ごめん、ごめん」と蒼陽を離した。そして無事、俺は豹兒によって救出された。
「まぁ。あれだな。これで夜の見張りが減るし、お前は役に立ちそうだな。どっかの飼い犬と違って。即戦力だな」
俺のピンクの頭に肘をのせたジフが言った。
「ジーフ!本当の事、それ真実すぎるから!」
頭上のジフの腕を掴んで、ぎゅーっと握った。
「俺が、ポチの分も沢山働くよ」
ねっと、肩に手を置いた蒼陽は、相変わらずの爽やで完璧な笑顔だった。
今、蒼陽の周囲にはキラキラエフェクトが掛かっている。流石主人公、微笑んでいるだけで目が離せない。少し細められた目がセクシーでいて可愛い。
「犬……お前の世話係が増えて良かったな。しばらく追い出されないですむぞ」
「うん、これで四人になったね!」
ジフの腕をどかして、ニッコリと微笑んだ。ジフの眉間の皺が深くなる。
俺を人数に入れるなとブツブツ文句言っているけど、何だかんだ一番面倒見が良いくせにと思う。
いや、まじで世話になってばっかりじゃ駄目なんだけどね。頑張らないと。
「ポチ、報酬と一緒にカレーのスパイス貰ってきたよ」
蒼陽が乗ってきたモーターボートを指さした。
「ほんとに!?ジフ、カレー食べよう!蒼陽の歓迎会にカレーパーティーしようよ!枝豆カレー」
カレーとかもう懐かしすぎて泣ける。元の世界では、カレーなんて安価で何時でも食べられるものだったのに。ここでは貴重だ。楽しみすぎる。
「お前……どうせ食べるなら鳥か豚だろうが」
「子豚貰ってきましたよ」
蒼陽から後光が差して見えた。
「蒼陽、このスーパーダーリンめ!」
「レッド、それは何ですか」
レッドが蒼陽の背中を叩いている。レッドのノリが超軽い。
そういえばレッドは蒼陽に惚れているのかな?どうなの?じっとレッドを観察してみる。んー無駄にボディタッチはしているけど……恋愛っぽさは感じ無いな。
綺麗な夜空の下で食べる夕食のカレーは、今までの人生の中で一番美味しいカレーだった。都合により肉と玉ねぎだけだったけど、確かにカレーだった。
美味しい、美味しいと半泣きになりながら食べる俺と、馬鹿にするジフ。微笑む豹兒と蒼陽、カレーの漫画トークをするレッド。家で一人で食べるレトルトカレーの100倍は美味しかった。ゾンビ世界も捨てたもんじゃないな、と思う。
でも、楽しければ楽しいほど、小さな不安が生まれる。
この幸せは、ずっと続くのかなぁと。
□□□□
屋上のカレーパーティーの片付けが終わって、俺は歯を磨き、顔洗って、水浴びをした。屋外の水浴びはソロソロ寒い季節になってきたなぁと思いながら、タオルでガシガシ頭を拭いて歩いていたら、中庭では豹兒と蒼陽が手合わせをしていた。
「……すごっ」
LEDの外灯は有るけれど、薄暗いなか、二人は刃を潰したナイフでぶつかりあっている。映画や舞台と違って何度も動きを訓練した殺陣とは違う。お互いにお互いの隙を狙い、本気で攻め込んでいる。俺は、廊下の窓から、息を殺して二人の動きを見守った。
体格的には、蒼陽の方が優位だ。豹兒も十分背が高くて逞しいけれど、蒼陽の今が盛りの完成された体には少し落ちる。でも、その分豹兒にはスピードと柔軟さがある。蒼陽から受ける衝撃を上手く受け流して冷静に機会を窺っている。
俺も、最初は動きを追うことも出来なかったけど、最近では、見ることだけは出来るようになってきた。いいなぁ……怖いけれど、俺も、あんな風に戦いたい。仲間を守れるような男になりたい。このヒョロくて、いくら筋トレしても筋肉がつかない体が憎い。打ち身とかは直ぐ治るけど……絶対、以前の平凡な俺の体の方がいうことをきいていた。この体、いっそ重い気がする。体重は軽いのになぁ。
「ポチ!ねぇ、ポチ!」
思ったよりも長い間、物思いにふけっていたのか、豹兒が俺の目の前の窓ガラスをコンコン叩いて呼んでいる。
「あっ、ごめん。今、開ける」
窓の鍵を開けると、豹兒がガラスをスライドさせた。
豹兒はしっとりと汗を掻いていて色気がムンムンだ。
「ポチ、どうしたの?今、ずっと呼んでいたんだよ」
豹兒の後ろに立つ蒼陽が心配そうに首を傾げた。
「ずっと?あれ?俺…そんなにぼーっとしてたかな?二人が凄すぎて妄想の世界に行ってた」
「……熱でもあるの?」
窓の向こうから豹兒の左腕が伸びて、俺の首根っこを掴み引き寄せた。俺の額に豹兒の手が触れる。タコが出来ててゴツゴツした手だ。
「ないない!元気だよ」
心配してくれる豹兒の気持ちが嬉しくて、微笑んだ。
「……まだ濡れてる」
豹兒が俺の首に掛かっているタオルを引っ張って、ピンクの髪をゴシゴシ拭いてくれた。うーん、最近、なぜか過保護な気がする。どうしたのかな、豹兒。
「二人は仲が良いんだね」
蒼陽が少し寂しそうに言った。
「俺達、同い年ってことなんで!蒼陽は下野に居た?」
「……あー、うん。まー居たことは居たけど……仲良くは無かったかな?」
蒼陽が夜空を見上げて、ため息をついた。その様子も様になる。あれ?そういえば……ダリウスって蒼陽と同い年じゃなかったっけ?
「まさか、この間来た、あの男?」
「うん」
やっぱりか!
「アイツ、蒼陽に馴れ馴れしいし、蒼陽を自分のものみたいに言ってて、凄い嫌な感じだった!」
「……ポチのものでも無い」
俺が拳を握って怒っていると、俺の濡れそぼったタオルを引き抜いて、自分の汗を拭きだした豹兒が言った。
「確かに!」
「そんなこと無いよ、俺はポチの物で良いよ」
完璧なイケメンが、欠点の無い笑顔で、サラっと、とんでもない発言をした。蒼陽の切れ長だけどクッキリしている綺麗な目は真剣だ。
えっと……コレって主人公スキルなの?近くの男、全員落とすみたいな?
危ない。気を引き締めないとすぐ持って行かれそうだ。なにせ、顔、スタイル、人柄、能力全てが最高到達点みたいな男だから。
「蒼陽……」
俺が、呆然としていると、豹兒がスッと窓枠を飛び越えて窓を閉めて鍵をかけた。
まさに一瞬の早業で、俺も蒼陽もポカーンだった。
「豹兒?」
「……行くよ」
豹兒は、俺の腕を掴むと走りだしたので、俺もつられて足を動かす。
「おっ…おやすみ、蒼陽!また明日!」
寝るまでにまた会えるか分からないから、窓の外の蒼陽に手を振った。蒼陽は、驚いた顔を笑顔に変えて、俺に手を振り替えしてくれた。
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