26 / 49
恋敵 豹兒視点
しおりを挟むポチと想いが通じ合った後、ポチを寝室に送った。
その足で、蒼陽と手合わせしたときに出した物を片付ける為に中庭に戻った。
薄暗い中庭のベンチには、蒼陽が座っていた。
何だか、気まずい。ポチを譲る気は無いが、蒼陽がポチを大切に思っていることは知っている。
ただ、ポチは俺のだから手を出すなとも言いたい。
でも、ポチが俺の恋人であるのも、俺が生きていてこそだ。もしも、自分に何か有ったときは……ポチにはコイツや仲間が必要だ。凄く気分は悪いが、ポチが誰かに大切に思われることは……ポチにとっては悪いことでは無い。だから……ポチを想うなとは言えない。
「……ポチは大丈夫そう?」
蒼陽が前を向いたまま、俺に聞いた。俺はベンチの側に置いたナイフや銃を装備する。
「……ジフに聞いたのか?」
返事の代わりに、蒼陽が頷いた。
「ポチは……子供の頃一緒に居た芳親そのものだけど……今は全く印象が違う」
蒼陽は、此方を向いて微笑んだ。俺は、他人の感情を表情から読み取るのが苦手だ。蒼陽が何を感じているのかは、わからない。ポチぐらい顔に出れば分かるけれど。
「駄目なのか」
俺は、今のポチしか知らない。素直でちょっと突拍子も無いことをする明るいポチしか……。
「ううん。凄く素敵になったよ。見ているだけで幸せな気持ちになる。すごく愛おしいよね。でも……芳親だったポチは、他の最後の世代の子供と同じで、意思のない……どこか人間っぽく無い子だった。何を考えて居るのか分からなかったし……心此処にあらずだった」
蒼陽の話を聞いて、心臓が軋むように痛んだ。ポチは……時々、何か違う世界に行っているようにぼーとしていることがある。脳裏に焼き付いたボートの男が気になる。
「せっかく、あんなに生き生きと、明るく生きられるようになったのに……また、あの頃のようになって欲しくない。例え……俺がポチに選ばれなくても、隣にいるのが君でも、ポチには幸せでいて欲しい」
グッと手を握りしめ、ポチを想う蒼陽に胸を打たれる。
俺は、ポチが好きだ。ポチが現れて、俺は初めて生きることを楽しいと思えた。
そして、少し死ぬことが怖くなった。
これからもポチと一緒に居たい、ポチを守りたい。少なくとも俺が生きている間は、ポチが他の奴を好きになるだなんて我慢出来ない。蒼陽のようには大人になれない。ポチにキスして良いのは俺だけだ。ポチを抱きしめるのも俺だけが良い。
「ジフにも話したけど、少し前だけど……ゾンビの研究施設に腕の良い医者が居ると聞いた。施設は、もう存続していないけれど……生き残りもいるらしいから探してみる。話を聞いてみたいんだ」
「……俺も」
探す。と言おうとしたが、蒼陽が殴り掛かってきた。
俺は一発目をかわして、二発目を受け流す。蒼陽は戦うのに恵まれた体格をしている。身長もそうだが手足が長い。デカい分、体が重くて遅いということも無い。
ただ、いつもジフを相手にしているから……勝てない気はしない。さっきの手合わせで、多少戦闘の癖も掴んだ。
冷静に動きを読んで焦らずに隙を狙い、仕留める。
「……」
蒼陽の背中を取り、頸動脈にナイフを突きつけた。
「……君は……ポチの側でポチを守って……多分、ソレが適材適所だから」
蒼陽は両手を挙げて動きを止めた。ソレが言いたいだけだったのか。俺はナイフをしまった。
「明日、レッドが近くのグループに手伝いに行くらしいから、俺もそっちに行ったことにするから。よろしく」
恐らく、ジフともう色々と話が済んでいるのだろう。
「……よろしくお願いします」
俺は、蒼陽に向かって深く頭を下げた。俺は、何よりポチが大事になった。そのポチの為に動いてくれる蒼陽は……俺にとっては、目の上のたんこぶだけど……仲間だ。
仲間には、礼儀を尽くす。
「……ふっ……何だろうね……恋敵なのに、全然悪く思えない。君たちは。最高の二人だね」
「……何故だか……凄く腹が立ちます」
蒼陽の顔を睨み付けた。
「ごめん。まぁとにかく命に代えてもポチを守って。その後釜は心配しないで」
朗らかに笑う蒼陽が手を振って歩き出した。
「俺は死なない。ポチと居る」
「……それが大事だね。俺に足りなかったものだ」
小声で何か言った蒼陽の言葉は、俺の耳には届かなかった。
23
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
俺の異世界先は激重魔導騎士の懐の中
油淋丼
BL
少女漫画のような人生を送っていたクラスメイトがある日突然命を落とした。
背景の一部のようなモブは、卒業式の前日に事故に遭った。
魔王候補の一人として無能力のまま召喚され、魔物達に混じりこっそりと元の世界に戻る方法を探す。
魔物の脅威である魔導騎士は、不思議と初対面のようには感じなかった。
少女漫画のようなヒーローが本当に好きだったのは、モブ君だった。
異世界に転生したヒーローは、前世も含めて長年片思いをして愛が激重に変化した。
今度こそ必ず捕らえて囲って愛す事を誓います。
激重愛魔導最強転生騎士×魔王候補無能力転移モブ
異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた
k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。
言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。
小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。
しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。
湊の生活は以前のような日に戻った。
一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。
ただ、明らかに成長スピードが早い。
どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。
弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。
お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。
あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。
後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。
気づけば少年の住む異世界に来ていた。
二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。
序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる