ゾンビBL小説の世界に転生した俺が、脇役に愛され過保護される話。【注、怖くないよ】

いんげん

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恋敵 豹兒視点

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 ポチと想いが通じ合った後、ポチを寝室に送った。
 その足で、蒼陽と手合わせしたときに出した物を片付ける為に中庭に戻った。

 薄暗い中庭のベンチには、蒼陽が座っていた。
 何だか、気まずい。ポチを譲る気は無いが、蒼陽がポチを大切に思っていることは知っている。
 ただ、ポチは俺のだから手を出すなとも言いたい。

 でも、ポチが俺の恋人であるのも、俺が生きていてこそだ。もしも、自分に何か有ったときは……ポチにはコイツや仲間が必要だ。凄く気分は悪いが、ポチが誰かに大切に思われることは……ポチにとっては悪いことでは無い。だから……ポチを想うなとは言えない。

「……ポチは大丈夫そう?」
 蒼陽が前を向いたまま、俺に聞いた。俺はベンチの側に置いたナイフや銃を装備する。
「……ジフに聞いたのか?」
 返事の代わりに、蒼陽が頷いた。
「ポチは……子供の頃一緒に居た芳親そのものだけど……今は全く印象が違う」
 蒼陽は、此方を向いて微笑んだ。俺は、他人の感情を表情から読み取るのが苦手だ。蒼陽が何を感じているのかは、わからない。ポチぐらい顔に出れば分かるけれど。
「駄目なのか」
 俺は、今のポチしか知らない。素直でちょっと突拍子も無いことをする明るいポチしか……。

「ううん。凄く素敵になったよ。見ているだけで幸せな気持ちになる。すごく愛おしいよね。でも……芳親だったポチは、他の最後の世代の子供と同じで、意思のない……どこか人間っぽく無い子だった。何を考えて居るのか分からなかったし……心此処にあらずだった」
 蒼陽の話を聞いて、心臓が軋むように痛んだ。ポチは……時々、何か違う世界に行っているようにぼーとしていることがある。脳裏に焼き付いたボートの男が気になる。
「せっかく、あんなに生き生きと、明るく生きられるようになったのに……また、あの頃のようになって欲しくない。例え……俺がポチに選ばれなくても、隣にいるのが君でも、ポチには幸せでいて欲しい」
 グッと手を握りしめ、ポチを想う蒼陽に胸を打たれる。

 俺は、ポチが好きだ。ポチが現れて、俺は初めて生きることを楽しいと思えた。
 そして、少し死ぬことが怖くなった。
 これからもポチと一緒に居たい、ポチを守りたい。少なくとも俺が生きている間は、ポチが他の奴を好きになるだなんて我慢出来ない。蒼陽のようには大人になれない。ポチにキスして良いのは俺だけだ。ポチを抱きしめるのも俺だけが良い。

「ジフにも話したけど、少し前だけど……ゾンビの研究施設に腕の良い医者が居ると聞いた。施設は、もう存続していないけれど……生き残りもいるらしいから探してみる。話を聞いてみたいんだ」
「……俺も」
 探す。と言おうとしたが、蒼陽が殴り掛かってきた。
 俺は一発目をかわして、二発目を受け流す。蒼陽は戦うのに恵まれた体格をしている。身長もそうだが手足が長い。デカい分、体が重くて遅いということも無い。

 ただ、いつもジフを相手にしているから……勝てない気はしない。さっきの手合わせで、多少戦闘の癖も掴んだ。
 冷静に動きを読んで焦らずに隙を狙い、仕留める。

「……」
 蒼陽の背中を取り、頸動脈にナイフを突きつけた。
「……君は……ポチの側でポチを守って……多分、ソレが適材適所だから」
 蒼陽は両手を挙げて動きを止めた。ソレが言いたいだけだったのか。俺はナイフをしまった。
「明日、レッドが近くのグループに手伝いに行くらしいから、俺もそっちに行ったことにするから。よろしく」
 恐らく、ジフともう色々と話が済んでいるのだろう。

「……よろしくお願いします」
 俺は、蒼陽に向かって深く頭を下げた。俺は、何よりポチが大事になった。そのポチの為に動いてくれる蒼陽は……俺にとっては、目の上のたんこぶだけど……仲間だ。
 仲間には、礼儀を尽くす。

「……ふっ……何だろうね……恋敵なのに、全然悪く思えない。君たちは。最高の二人だね」
「……何故だか……凄く腹が立ちます」
 蒼陽の顔を睨み付けた。
「ごめん。まぁとにかく命に代えてもポチを守って。その後釜は心配しないで」
 朗らかに笑う蒼陽が手を振って歩き出した。
「俺は死なない。ポチと居る」
「……それが大事だね。俺に足りなかったものだ」
 小声で何か言った蒼陽の言葉は、俺の耳には届かなかった。


 
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