ゾンビBL小説の世界に転生した俺が、脇役に愛され過保護される話。【注、怖くないよ】

いんげん

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ポチ、ハウス。

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 俺達は、レッド達が持ち帰ってくれた食事を食べて、それぞれ今日のことを報告しあった。

「ダリウス……」
 蒼陽は、いつもは爽やかな顔を嫌悪に染めて屋上の床を睨み付けている。
「下野に無線で連絡をしたが、仲間割れを起こして取り巻きを数人引き連れて出て行ったらしいぞ」
 ジフが、目を細め立ち上がると、ポケットに手を突っ込んで、フェンスから外を眺めている。
「でも……来た時は、一人だった」
 豹兒の言葉に、隣に座る俺もうんうんと頷いた。
「蒼陽と野良生活するって言ってた。とんでもない勘違い野郎だった!」
 思い出すだけでイライラする。蒼陽はあんな男に渡さない。蒼陽はこの世界の主人公なんだから。蒼陽がアイツと結ばれたら……絶対に碌な結末じゃ無い。
「アイツは周囲の人間に興味の無い男でした。一人ではなく、取り巻きも連れて出てくるなんて……何か目的があるはずです」
 ダリウスは、彼の恋心とは裏腹に蒼陽に凄く嫌われているのが表情からも伺える。あの男……ここまで嫌われていて勘違い出来るって凄くないか?それとも蒼陽の気持ちなんてどうでも良いのか?手に入ればいいの?
 あんな男に惚れられた蒼陽が不憫で仕方なくて、俺は豹兒とは反対の隣に座る蒼陽の背中を撫でた。背が大きいから背中が広い……。
 蒼陽が俺の方を向いて、少しだけ表情を綻ばせ笑ってくれた。
「戦力とか、雑用につかうとかっすか?」
 レッドが聞いた。
「どうでしょうか。あいつも外見はあんなだから、周囲の人間に不必要な感情を抱かれやすかった。そんな取り巻きたちを鬱陶しいと思ってましたから……」
「あんな胡散臭い男の何処が良いのかサッパリ分からない!」
 俺は蒼陽の背中から手を離して、拳を握って力説した。
「ポチ。それだけ顔面の破壊力とか強さのカリスマ性とかって強いんだよ!このグループは異常に顔面偏差値高いから、割と普通な俺がいなかったらヤバいし、ポチが居なかったら身長と体格的にもバグってる。きっと下野の普通の人達の中にいる蒼陽とダリウスは凄い目立ってたんだよ」
 レッドが自分の顔を指さして言った。
 いや、レッドもかなり格好いい部類だと思う。ゴツイ系が好きな人には大いに需要がある……ん?あれ?俺今、ちびをディスられている??
「レッド、俺、まだ成長期かも!」
 俺が立ち上がって主張すると、皆の生温かい微笑みが一斉に向けられた。
「おい!皆!俺が小さいんじゃなくて、皆が巨人だからね!」
 もう何度言ったか分からない主張を繰り返した。
「……まぁ、犬のいつもの戯れ言はさておき、あの芋野郎がこのまま諦めるとは思えねぇな」
 ジフはフェンスに背中を預けて、頭を掻いている。
「そうですね。俺が行って話を付けてきます」
 蒼陽が颯爽と立ち上がった。
「駄目だよ!アイツ絶対に碌な事考えて無いから危ないよ!」
 俺は、蒼陽の長い足にしがみついた。
 行かせてなるものか!

「ポチ……大丈夫、アイツに負けるつもりは無いよ」
 蒼陽の手が俺のピンクの髪を撫でた。すると、ソレを見た豹兒が、俺を蒼陽の足から引き剥がそうと、腰を抱き寄せた。

「まぁ、待てよ。わざわざ出向くな、相手の根城に乗り込むなんて悪手だ。お前も此処の仲間だ。ここで戦え。あの芋野郎が来るまで準備を整えるぞ」
「良いこと言うね、ジフ!」
 俺は蒼陽の足から腕を離して、ジフに親指を立てた。そしたら、ジフが呆れた顔をして俺を見た。
「犬……お前、戦闘で役に立つどころか、足手纏いなのに……すげぇな……」
「うっ……」
 真実すぎて胸が痛い。

「しかし、皆さんを危険にさらすわけには……」
 蒼陽は眉をハの字に曲げている。基本的に男らしいハンサムな蒼陽の困り顔は、とても可愛いかった。

「黙れ、此処では俺の指示が絶対だ」
 ジフが相変わらずの悪い顔でニヤっと笑った。
 やばい……めちゃくちゃ格好いい!これでこそ、ジフ!

「ジフ格好いい!惚れちゃうよ!」
 これでジフ×蒼陽のフラグ立ったんじゃ無い!?もう原作の悲劇起きないんじゃ無い?俺は大興奮してジフに突進しようとしたけど、ズボンのウエスト部分をグッと掴んだ豹兒に止められた。
 振り返ってみると、豹兒が凶悪な顔をしている。
 あっ……目線から……尻軽かっ!て聞こえてくる気がする。違う!違うよ!惚れるのは蒼陽だよ。

「犬、黙ってろ……俺の一番良いシーンをぶち壊すなっ!」
 ジフが三流のチンピラみたいに怒って、俺を指さしている。
「壊してないよ!」
「お前がいるだけで、緊張感が無くなるぞ!俺達はこれから作戦会議をする。お前はアッチに行って寝てろ」
 犬を追い払うように、ジフの手が振られた。
 なんてこった……戦力外通告の上を行く、邪魔者扱い!でも、何も言い返せないから、グッと唇を噛む。

「豹兒、ハウスに連れてけ」
「はい」
 豹兒が俺の手を取って歩き出した。前を通り過ぎる時に蒼陽が、お休みって優しく声をかけてくれた。優しさ溢れる爽やかな笑顔は、二百点満点で……絶対にあのダリウスには渡しちゃ駄目だ、と強く思った。
 頼むぜ、ジフ!と屋上のドアをくぐる時に振り返って見つめると、意外と真剣な顔をした顔のジフが俺に微笑んだ。
 どうした……今日のジフはイケオジだ……やっぱり、ジフは、原作で俺が人間として惚れた男だ。
 ぼーっとジフを見ていると、豹兒に「ポチ!」と手を強く握られた。




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