ゾンビBL小説の世界に転生した俺が、脇役に愛され過保護される話。【注、怖くないよ】

いんげん

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この世界の主人公

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朝、目が覚めたら、蒼陽が俺のベッドに入って来ていた。
所謂、添い寝状態だ。
少し大きめの二段ベッドなんだけど、流石に二人で寝ると狭い。俺が上から見た右側で、蒼陽が左側に居て、お互いに向かい合って横向きに寝そべっている。

「おはよう、ポチ」
 蒼陽は相変わらず、爽やかに歯を見せて微笑んでいる。朝だけど髭は生えてないし、毛穴は目視できない。まぁ、俺のこの体も、豹兒もそうだけどね。もういっそ、ジフの無精髭とか荒れた肌とか見ると、そうそうコレが見たかった!と思うようになってきた。
「蒼陽、場所間違えているよ」
「うん。ご飯だから起こしに来たんだけど……幸せそうに寝ながら笑ってたから、起こせなくて」
 蒼陽が、もっと笑顔になって、顔がくしゃってなった。
 うん、顔面がお美しい。シャープだけど意外としっかりした顎が豹兒より男っぽい。豹兒の方が笑わないから男っぽくみえるけど、パーツでいうと蒼陽のが雄っぽいよな。まぁ豹兒は、これからもう少しゴツくなる可能性あるけど。
「恥ずかしいから起こしてよ……」
 それに、このシーンを豹兒に見られたら、きっとまた尻軽呼ばわりされるんだ。
 もういっそ尻軽でいいから、蒼陽の雄っぱい揉んだら駄目かな?豹兒より面積広めのツルッとモチモチしてそうな雄っぱいに触れたい。駄目だろうな……蒼陽は笑顔で「どうぞ」って言ってくれるだろうけど、豹兒が怒るな。ジフにはくっついても割と怒らないのに、この差は何だろう?不思議だ。
「じゃあ……起きて、ポチ。朝だよ」
 蒼陽の少し青みがかったTシャツの向こうの雄っぱいを凝視していたら、大きくて指の長い手に、頬をペチペチと叩かれた。

 おい…蒼陽!それは無自覚か!無自覚で男を落としているのか!こんな美形に、朝から添い寝されて、そんなことされたら、違う意味で目覚めるわ!

「蒼陽、そういうとこだよ。誰にでも惚れられちゃうの、そのせいだよ」
 俺は、蒼陽の肩にポンと手を置いて説教をした。俺に豹兒という恋人いなかったらヤバかったよ。
「誰にもこんなことしないよ」
「そっか、なら良いけど、気をつけてね」
 じっと蒼陽の目を見て、頷いてから起き上がった。すると蒼陽もベッドから起き上がって、掛けていた布を畳み、靴を揃えて置いてくれた。
 あれ?なんか、さっきの会話……引っかかったような?気のせいか?

「ポチ、今日の体調は?」
 先に立ち上がった蒼陽が振り返って聞いた。
「え?うーん、絶好調!」
 なにせ……昨日、久々に夢精以外の射精しましたしね。思い出すだけで恥ずかしいけど。
 エロかった……豹兒が俺の股間に、ペニス擦りつけてくるの……凄いやばかったよ。
「少し顔が赤いけど……熱?大丈夫?」
 昨日の事を思い出して真っ赤になった俺の額に、蒼陽の手が当てられた。蒼陽の手は、ちょっと冷たくて気持ち良い。
「大丈夫!このチームで俺が一番元気!なにせ、一番寝てるから」
「そう?でも、無理しないでね」
「俺に出来そうなこと何でも言って!今日もバリバリ働くから!あっ……そういえば、作戦会議どうなったの?」
 蒼陽の手をどかして、俺も立ち上がった。二段ベッドの間に立つ俺達。
 上の段が見える蒼陽と、見えない俺。身長差が明白すぎる。
「色々とジフが用意してくれて、レッドが取りにいったりして、俺は周辺整備とかしながら、皆で警戒して過ごそうって感じかな?」
 
凄く優しく話してくれているけど、蒼陽の心中を思うと複雑だ。だってあんな怖いヤバい奴に追いかけ回されて、襲ってくるかもしれないんだよ。それに、一応は仲間だったわけだし……大丈夫かな?
「蒼陽……俺、蒼陽が心配だよ。何かあったら話してね」
 触ると豹兒に怒られそうだから、一歩近づいて蒼陽の顔をしたから覗き込んだ。
「……ポチ……可愛い」
「え?」
「このピンクの髪の毛梳かしていい?」
 意外と明るい雰囲気の蒼陽が、俺の髪を掬って言った。なんだろう……頑張って明るく振る舞っているのかな?なんて、なんて健気なんだ蒼陽。

 そうだよね、主人公だもんな。メソメソしたりする姿は周りに見せないんだよ。
 はっ!そうか!きっと原作通り、月夜の下でお花とか眺めながら悲しい顔をしているんだ!
 泣ける…想像するだけで泣ける。
「いいよ」
 花、今あんまり咲いてないから、このピンクの髪で心慰められるなら、ちょっとくらい豹兒に怒られても良い。
 
俺は向かいのジフのベッドからジフのブラシを取って、なんとなくクンクン匂いを嗅いで「クサくないな…」と呟いて、そのままベッドに座った。
 むむ……ジフのベッドが俺の毛だらけになったら怒るかな?……まぁ良いか。犬ってそういうものだし。
「じゃあ……はじめるね」
 背が大きい蒼陽は、床に膝をついて、ベッドに胡座かいて座る俺の背後から、俺の長めのショートの髪を梳かし始めた。蒼陽の左手は肩に添えられ、優しくブラシをされて、俺はちょっと犬の気分を味わっている。
「気持ち良いかも」
「そう?俺も楽しいよ」
 飼い主にブラシを掛けられて蕩けている犬も、こんな気持ちなのだろうか?
「極楽である」
 これは、ぜひ豹兒にもやらないと。あの艶々の黒髪は、とても手触りが良い。うん、楽しみだ。
 ジフの髪は、よく梳かしてあげるけど、うねっていてパサパサだからなぁ。
「ポチは不思議だね。一緒に居ると笑ってばかりいるよ」
「え?」

 あれ?蒼陽って元からニコニコしているキャラじゃ……無いわ。そうだ、自分のせいで行方不明になった友人を想う、割と静かな色気のあるキャラだった!
 いや、今でも色気はあるけど、小説から伝わる雰囲気は、愁いを帯びたキャラだったのに……今は、笑顔が爽やかな好青年。すごいな、ポチ……じゃなくて芳親の存在。いや、俺、芳親成り代わりなのかは分からないけど……蒼陽が悲しみから救われるなら、もうそれで良いよな。

 たとえば……平凡な俺は、あの世界から居なくなっても、大して誰も困らないし悲しくないと思うけど、もう俺に戻れないなら、誰かが成り代わっていても構わない。これは人によって感覚が違うかもしれないけど。もしも、俺が本当は、あの時事故にあって……脳死とかしているなら、俺は臓器提供に同意しているから、手術が始まったら夢は終わるのだろうか? それはちょっと悲しいな。俺は、もう少しこの夢を見ていたい。

「ねぇ……蒼陽、この世界って……夢じゃ無いよね」
 俺は、蒼陽を振り返って尋ねた。
「……ポチ?」
「俺も皆も、ちゃんと生きてて……これからも、ずっと一緒だよね?」
 そうだと言って欲しい。かっこ悪く震える手で蒼陽に手を伸ばした。
「もちろん……俺が、全部守るよ。ポチも、ポチの大事なものも全部」
 この世界の主人公が、俺の手を強く握って笑った。

 凄く……頼もしかった。

 大丈夫。主人公が笑っている。きっとこの世界は、ハッピーエンドだ。

「俺も……俺も頑張る!蒼陽も皆も大事だから!」
「……頼りにしてるよ、ポチ」







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