35 / 49
使命感
しおりを挟む無線にダリウスとゾンビが接近してきたと連絡が入った。俺は、窓から最後に外を確認する。
外は、数台の発電機が作動させられ、少し明るくなった。それでも、現代の夜のグラウンドのような明るさはない。物陰は完全に闇だし、柵の向こう側は、俺には何も見えない。
「……この暗さで戦うの?こっちが見えているゾンビと?」
此方の劣勢な状況に気がついて、心配で胸が苦しい。只でさえ数が、四対十数人。相手は、撃っても撃っても動き続けるゾンビ……。噛まれたらお終いだ。本当に大丈夫なのだろうか……。
「ポチ、窓から離れててね」
外に居る蒼陽が窓をノックして言った。こんな時でも、蒼陽は爽やかに微笑んでいる。きっと俺を安心させようとしてくれているんだよね。
「うん。気をつけてね、蒼陽」
「ありがとう」
□□□□
ダリウスのバイクの音が聞こえてきたと思ったら、大きな衝撃音が響き渡り、戦闘が始まった。
呼吸が荒くなって、全身がガタガタ震えている。俺、ここに居るだけで何もしていないのに、こんなに怖い。
銃撃の音が聞こえる。ゾンビの呻くような叫びが、ここまで届いた。
「……みんな……」
怪我しないで欲しい、死なないで欲しい!
どうか無事に戦闘が終わって欲しい。
この世界に神様がいるなら、どうか彼らを守って欲しい。
しかし、願いもむなしく、大きな爆発音と衝撃が走った。ガラスがビリビリと揺れている。
「……真っ暗」
外の大きな投光器が消えた。元々暗かった外が、更に暗く……もはや、俺には皆の姿もゾンビも確認できない。ただ、直ぐ側の発電機が倒れ、コードが抜けているのだけはわかった。
「……ど……しよう」
近くに居た蒼陽は、もう居ない。
どう考えても、この灯りは必要だと思う。窓から外へ出れば、ほんの数歩で手が届く。
まだ、ゾンビは近くまで来ていない。
おれが……
やらないと。
装備している拳銃を手にして、安全装置を外す。窓を静かにあけて、外を確認し……窓枠を乗り越えた。
恐怖よりも、使命感の方が強かった。
発電機まで走り寄り、しゃがみ込んで起こした。飛ばされたコードを掴んで、気づいた。
コレを付けたら……恐らく皆が、こっちを見る。
そしたら、俺が標的になる。それは……足を引っ張る行為につながる。
隠れられそうな場所は……あった。直ぐ側に腰丈くらいの物置がある。
コレを繋いで、直ぐに隠れる。
俺は深呼吸をし、左手に拳銃を持ち、投光器のコンセントを差すと物置の影に走った。
「っ!!」
眩しい程の光が周囲を照らした。
一気に銃声が響き渡り、ゾンビの呻く声が、いくつも聞こえた。
隙を見て戻らなきゃ……物置の影から少しだけ顔を出すと、ジープの車体に体を隠していた蒼陽が見えた。
そして、その車体の上から飛び降り、蒼陽にナイフを振り下ろすダリウス。蒼陽は降り立ったダリウスから距離をとりつつ、拳銃を撃った。ダリウスは飛び退き、拳銃を構える。
なぜ……好きな人に、あんな風にナイフを向けられるのだろうか……なぜ銃口を向けられるのだろうか。
そんな事が頭に浮かびながら、俺もダリウスに向かって銃を構えた。近くに蒼陽がいるから……俺の腕じゃまだ撃てない。静かに機会を窺う。
「っ蒼陽……」
蒼陽の後ろから、ゾンビが一体現れた。すると、ダリウスが腰のホルスターから抜いた拳銃を、ゾンビの方に投げた。
嘘だろ……なに……考えているんだよ。
俺は、ゾンビを撃ったら良いのか、ダリウスを撃ったら良いのか……。ただ、ゾンビは狙える角度じゃないし、ダリウスは蒼陽と接近戦を始めた。ゾンビが、ダリウスの拳銃を拾って、二人の方へと銃口を向けた。
蒼陽がダリウスよりも素早く動き、ナイフでダリウスの喉を切りつけた。
ダリウスの首から血が勢いよく吹き上げて、そのまま後ろへ倒れていく。
蒼陽は、ダリウスに背を向けて、今度はナイフを捨てて銃を構え、ゾンビの銃を持つ腕を撃った。
蒼陽が倒れたゾンビに、とどめを刺すために両手で銃を構え、撃った。
ゾンビの体が衝撃で跳ねている。
そのとき……俺の視界の端に倒れていたダリウスが……動いた。
暗くて真っ黒に見える血の海の中に倒れている、ダリウスが……ゆっくり起き上がって……
蒼陽の背中に向かって、銃を構えた。
「蒼陽!!」
11
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
俺の異世界先は激重魔導騎士の懐の中
油淋丼
BL
少女漫画のような人生を送っていたクラスメイトがある日突然命を落とした。
背景の一部のようなモブは、卒業式の前日に事故に遭った。
魔王候補の一人として無能力のまま召喚され、魔物達に混じりこっそりと元の世界に戻る方法を探す。
魔物の脅威である魔導騎士は、不思議と初対面のようには感じなかった。
少女漫画のようなヒーローが本当に好きだったのは、モブ君だった。
異世界に転生したヒーローは、前世も含めて長年片思いをして愛が激重に変化した。
今度こそ必ず捕らえて囲って愛す事を誓います。
激重愛魔導最強転生騎士×魔王候補無能力転移モブ
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!
モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。
その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。
魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。
その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?!
ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる