48 / 49
ジフ×ポチ 好き
しおりを挟む春の日の、昼下り。
「ジフ? 屋上で寝てたよ」
レッドに言われ、屋上までやってきた。
「うわぁ、あったかーい」
眩しいほどの日差しと、温かい空気。うん、絶好の昼寝日和だ。
ジフはすぐに見つかった。
屋上の、1メートルほど盛り上がった所に、足首がはみ出て寝転んでいる。
逞しい体は、胸筋でTシャツがパツパツだし、頭の後ろで組んだ腕も、筋肉質だ。 顔は、渋くてカッコイイ。
細くて高い鼻。切れ長の目、細めの顎。左の唇に走る傷も魅力でしかない。
黙っていれば、クールで色気溢れる、大人の男だ。
でもやっぱり、アウトロー感が凄い。 屋上の古いコンクリートに寝そべる姿は、反社会的な男の一時の休息か、刑務作業をサボる囚人のボスだ。
蒼陽と豹兒なら、ハイブランドの撮影だし、レッドなら……雨漏りして修理しに来たアメコミヒーローの日常ターンだな。
俺は、ジフのそばで、うんうん頷いた。
そして、ジフの隣に膝をついて、その逞しい左腕を引き抜いて枕にして寝転んだ。
空で輝く太陽が、瞼を通過してくる。 眩しくて、ジフの肩口に顔を埋めた。
ジフは、誰かが階段登ってきた時点で起きてるはず。
でも、まだ目を開けない。
「ねぇ、実は隣で寝転んだのが豹兒とかだったらどうするの、ちらっと確認しないの?」
面白半分で聞いてみた。
「あぁ……足音でわかるだろ……」
黙ってろ。 ジフが、俺の頭を抱き込んだ。 囚人の王様は、起きる気がないみたいだ。
俺の髪に鼻を寄せて、それからまた動かなくなった。
なんか、良いな。
こういう、無言で心地よさを共有できるの。
幸せだなぁ。
嬉しくなって、むくりと顔をあげて、ジフの頬に口づけた。
「おー、ありがとよ」
半分寝言のようにつぶやくジフに、笑ってしまった。
「好き、凄い好き」
思わずつぶやいたら、ジフが三白眼気味の目を見開いてた。
「ポチさん、今日はサービスデイですか?」
「うん、たまにはね」
「よし、じゃあ褒め称えていいぞ」
「ジフは、誰よりも強くて、頼もしくて、魅力的だよ」
春の日差しに、ネジが外れて、素直に伝えてみた。 恥ずかしいし、なんか悔しいけど、たまには良いか。
「……」
ジフは、呆然と俺を見つめたあと、再び眠りの体制に入り、目を開けた。
「夢か?」
「うん、夢だよ」
「ちげーだろうが。しょうがねーな。よし、俺のポチへの気持ちも言葉にするぜ」
「え?」
俺は、起き上がったジフの足の間に抱き寄せられ、散々愛を囁かれた。
「もういい!!聞きたくない!!あー!あーーー!!」
「言わせろよ、まだ序章だぞ」
ジブの腕と足に閉じ込められ、耳元に顔を寄せられた。
「ひいいいい、恥ずかしい!恥ずかしいってば!!」
「あれ?ポチ、顔真っ赤だよ、どうしたの?」
階段を駆け下りる俺に、蒼陽が心配して声をかけてくれたけど、俺の足は止まらない。
「大丈夫!!日焼け、日向ぼっこしてたからぁぁ」
「そう? 気をつけて、走らない方がいいよ」
「うん!ありがと」
ダッシュから、早足にかえて進んだ。
あぁーーー!!
耳が……脳が……溶ける。
目が、開かない!!
あーーー! ムカつく!!
絶対、モテてた!!
ジフ、恋愛強者だった!
許さん……明日は、一日、嫌いって言ってやる。
「ジフのこと……嫌い寄りの好きくらい。割と、好き風味」
「ああ?」
言えなかった。
嫌いは言えなかった。
だって、ジフが愛しそうな目で見下ろすのが悪い。
悪い……。
わる……くない
好きだあああ!!
47
あなたにおすすめの小説
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
【完結済】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜
キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」
平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。
そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。
彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。
「お前だけが、俺の世界に色をくれた」
蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。
甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
完結·氷の宰相の寝かしつけ係に任命されました
禅
BL
幼い頃から心に穴が空いたような虚無感があった亮。
その穴を埋めた子を探しながら、寂しさから逃げるようにボイス配信をする日々。
そんなある日、亮は突然異世界に召喚された。
その目的は――――――
異世界召喚された青年が美貌の宰相の寝かしつけをする話
※小説家になろうにも掲載中
推し様たちを法廷で守ったら気に入られちゃいました!?〜前世で一流弁護士の僕が華麗に悪役を弁護します〜
ホノム
BL
下級兵の僕はある日一流弁護士として生きた前世を思い出した。
――この世界、前世で好きだったBLゲームの中じゃん!
ここは「英雄族」と「ヴィラン族」に分かれて二千年もの間争っている世界で、ヴィランは迫害され冤罪に苦しむ存在――いやっ僕ヴィランたち全員箱推しなんですけど。
これは見過ごせない……! 腐敗した司法、社交界の陰謀、国家規模の裁判戦争――全てを覆して〝弁護人〟として推したちを守ろうとしたら、推し皆が何やら僕の周りで喧嘩を始めて…?
ちょっと困るって!これは法的事案だよ……!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる