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クイナと、鳩。
しおりを挟む気を利かせて、その場を離れたクイナと鳩は、共に廊下を歩いていた。
「前々から疑問だったんだけど、どうして貴方は、いつもやられる一方なの?」
「えっ……」
クイナに問われ、鳩は気まずそうに言葉を詰まらせた。
「やられてばかりでは駄目よ。貴方の方が、大きくて強いはずよ」
鳩は、人一倍、力仕事の雑用をしている。持って生まれた体格の良さと、仕事で作られた体は、驢馬や取り巻きぐらいなら何とか出来ると、クイナは思っていた。
「クイナさんは……強い方が良いと思いますか?」
「それは、時には必要だと思うわ」
「そうですよね……」
鳩には、寄り添って生きる相手が誰も居ない。
血の繋がった家族も、兄弟も。幼い頃から驢馬に目を付けられた為に、友人も居ない。
常に孤独だった。唯一の身の置き所が、驢馬の下僕という役どころだった。
もしも、それすら失ってしまったら……。
しかし、最近では新たに話しかけてくれるラブも現れた。
彼女がヘビと上手くいけば、彼女の此処での地位は、それなりのものになる。
そうなったら、ラブが自分を友人にしてくれないだろうか、そんな想像が鳩の頭を巡った。
「まぁ、私も男性達のコミュニティーには理解が薄いから、あまり勝手なことは言えないけど」
「……ありがとうございます。嬉しいです、気にしてもらって。あの、もしも俺が……」
鳩が立ち止まり、何かを言いかけると、通りがかったドアが開いた。
「フクロウ!」
「おっ、丁度良いところに。クイナ、手伝ってくれないか」
グローブを真っ黒にして、工具を手にしたフクロウが、クイナに向かって微笑んだ。
「ええ、良いわよ」
「鳩? 悪い、邪魔したか?」
「いいえ、全然何でもありません。じゃあ、俺、もう行かないと」
「そうか?」
「一体、今度は何を始めたの?」
クイナは、鳩に会釈し、早々とフクロウの横を通り、室内へと足を踏み入れた。
鳩は、クイナの後ろ姿に、目を伏せて足早に歩き出した。
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