神様のひとさじ

いんげん

文字の大きさ
上 下
28 / 73

クイナと、鳩。

しおりを挟む
 

 気を利かせて、その場を離れたクイナと鳩は、共に廊下を歩いていた。

「前々から疑問だったんだけど、どうして貴方は、いつもやられる一方なの?」
「えっ……」
 クイナに問われ、鳩は気まずそうに言葉を詰まらせた。

「やられてばかりでは駄目よ。貴方の方が、大きくて強いはずよ」
 鳩は、人一倍、力仕事の雑用をしている。持って生まれた体格の良さと、仕事で作られた体は、驢馬や取り巻きぐらいなら何とか出来ると、クイナは思っていた。

「クイナさんは……強い方が良いと思いますか?」
「それは、時には必要だと思うわ」
「そうですよね……」

 鳩には、寄り添って生きる相手が誰も居ない。
 血の繋がった家族も、兄弟も。幼い頃から驢馬に目を付けられた為に、友人も居ない。
 常に孤独だった。唯一の身の置き所が、驢馬の下僕という役どころだった。
 もしも、それすら失ってしまったら……。

 しかし、最近では新たに話しかけてくれるラブも現れた。
 彼女がヘビと上手くいけば、彼女の此処での地位は、それなりのものになる。
 そうなったら、ラブが自分を友人にしてくれないだろうか、そんな想像が鳩の頭を巡った。


「まぁ、私も男性達のコミュニティーには理解が薄いから、あまり勝手なことは言えないけど」
「……ありがとうございます。嬉しいです、気にしてもらって。あの、もしも俺が……」
 鳩が立ち止まり、何かを言いかけると、通りがかったドアが開いた。

「フクロウ!」
「おっ、丁度良いところに。クイナ、手伝ってくれないか」
 グローブを真っ黒にして、工具を手にしたフクロウが、クイナに向かって微笑んだ。

「ええ、良いわよ」
「鳩? 悪い、邪魔したか?」

「いいえ、全然何でもありません。じゃあ、俺、もう行かないと」
「そうか?」

「一体、今度は何を始めたの?」

 クイナは、鳩に会釈し、早々とフクロウの横を通り、室内へと足を踏み入れた。


 鳩は、クイナの後ろ姿に、目を伏せて足早に歩き出した。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

チートなタブレットを持って快適異世界生活

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,015pt お気に入り:14,313

相手に望む3つの条件

恋愛 / 完結 24h.ポイント:333pt お気に入り:332

みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:163pt お気に入り:7,540

Looter [略奪者]

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

【完結】契約妻の小さな復讐

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,149pt お気に入り:5,879

空想科学小説-蘇り転生の魔王、絶滅寸前の魔族を救う!

SF / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:578

突然の契約結婚は……楽、でした。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:85,952pt お気に入り:2,526

ちょっと復讐してきます。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:269pt お気に入り:33

【R18】あなたのデカチンが私の心を掴んで離さない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:369pt お気に入り:26

処理中です...