50 / 73
捜索
しおりを挟む結局、外での捜索は大人数になった。ヘビにフクロウ、土竜と、その取り巻き、驢馬の取り巻き、鳩で周囲を捜索した。
雨の後の地面は、グチャグチャになっている。この山の付近は水分の多い地層と、南に広がる比較的乾燥した荒野があり、その先は海になっている。
犯人が海に遺体を捨てていれば、発見は難しいかもしれない。ヘビとフクロウは、目を見合わせ海の方を眺めた。
「この足跡はなんだ? 何の動物だ?」
フクロウが、白馬の蹄の痕を発見し、しゃがみ込んで眺めている。
「向こうの林の方までずっと続いてますね」
鳩が、大きな体を伸ばして、遠くまで眺めた。
「コレは……馬か? 相当大きいな」
「馬は、人間を食べますか?」
鳩が手を上げた。
「いいや、気に食わないことをすれば攻撃はされるかも知れないが……そもそも、この足跡だと、暴れてなさそうだ」
ヘビの頭には、アダムが浮かんだ。
移動手段があるならば、遠くからラブの実を取って、すぐに戻る事が可能だ。コロニーにも、バイクや車の製造方法や工具、部品になりそうなものがある。フクロウが、趣味でこっそり作っている。
近い将来、馬や驢馬の繁殖は構想されている。しかし、アダムはもう、それを手にして、飼い慣らしているのに、今までずっと隠し続けていたのか――やはり、信用ならない。
ヘビは、目を眇めてコロニーを見た。
「やっぱり、アダムが怪しいんじゃないか? アイツが驢馬を殺して馬に乗せて何処かへ運んだんだろう!」
「アイツの女が襲われたんだろ、だから動機は有る」
「アイツらをやってやろうぜ!」
驢馬の取り巻き達が騒ぎ出した。
土竜は、静かに事の成り行きを見守っている。
「待て、証拠もないのに憶測で暴力事件を起こせば、お前達が裁かれる番だぞ」
ヘビは、拳を振り上げた男の腕を強く掴み、下げた。
「そーだよ、こうゆう疑心暗鬼は良くないよ。それに、驢馬が連絡をした相手っていうのが気になるよね」
フクロウが、まぁまぁ、落ち着いてと笑っている。
「驢馬の腕輪だけでも見つかれば、驢馬の行動が見えてくる」
「ひぃ……」
「うるせぇぞ、鳩」
「す、すいません……バンビの母親を思い出して、変な想像しちゃって……」
鳩は、体を震わせ、ペコペコと頭を下げた。
バンビの母親が亡くなったあと、数日後に腕輪だけが発見された。
「お前達が、驢馬を呼び出したんじゃないのか?」
土竜が、歩み出た。彼の取り巻きが、ヘビとフクロウに威嚇するように睨んでいる。
「何の為に?」
「処理する為にだ。アイツは、仕事もしないし問題ばかり起こす、女達にも嫌われていて、繁殖できるとも思えん。邪魔だったんだろ?」
「俺達は、コロニーの人間を増やすことを使命にしている。減らすような事はしない。殺す意味も、意義もない」
「お前らは、そう考えたとしても……あの機械はどうかな。アイツには血も涙もない、鉄屑だ。人間じゃない。なのに、俺達はいつまで、支配されているんだ」
「……」
「俺たちは、このコロニーを出て行く検討をしていた。それに一番、乗り気で周りを誘っていたのが驢馬だ。お前らが、消したんじゃないのか?」
「出て行くとはどう言うことだ。どうするつもりだ」
「アダム達が居た場所だ。そこで暮らす」
男達が、土竜の後ろに集まった。
「アダムが、了承したとは思えない」
「まだ言っていない」
土竜が不敵に笑った。土竜達は、アダムの住処を奪うつもりだ、ヘビは気がついた。
「ちょっと良いか? そのアダム達が居た場所が、そんなに多くの人間が食って暮らしていける場所だと確証があるのか? それに、元々少ない人間たちが二手に分かれたら、お互いに暮らしにくくなるし、衰退の一途だろう」
フクロウは、流石に笑ってられず、困った顔で頭を掻いている。
「繁殖も、再びの繁栄も、我々の義務じゃない。俺達の自由だ」
「その、お前達の自由とやらに、他の人間を巻き込むな」
「何も全員連れて行くなんて思って居ない。まぁ……ただ、俺達の移住が成功すれば、他の奴らも移転に興味を持つだろう。そうなったら、お前らも、機械も用済みだな」
土竜は、自らの耳に手を当てて、薄ら笑いを浮かべた。
「考えが、楽観的すぎる……調査も検証もなく、リスクの説明もなく、希望論だけで人を先導するな。俺達も此処に固執している訳じゃない。今の最善の策なだけだ」
「一人も人間を増やしてない頭だけのお前ららしいな。考えてばかりだ。何事も、手をだしてみなければ分からないだろ。失敗して何が悪い。そのリスクを負うから面白いんだろう」
「……」
ヘビは、溜め息をついて首を振った。土竜に付き従う男達が、ニヤニヤと笑っている。
「まぁ、待て。とりあえず、今は驢馬の事件を解決しよう。話はそれからだ」
フクロウが、ヘビの肩を叩いた。
「そうだな、そいつの耳をコロニーの思い出として持って行くとしよう」
0
あなたにおすすめの小説
私たちの離婚幸福論
桔梗
恋愛
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
【完結】記憶が戻ったら〜孤独な妻は英雄夫の変わらぬ溺愛に溶かされる〜
凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【完全完結しました。ご愛読頂きありがとうございます!】
公爵令嬢カトリーナ・オールディスは、王太子デーヴィドの婚約者であった。
だが、カトリーナを良く思っていなかったデーヴィドは真実の愛を見つけたと言って婚約破棄した上、カトリーナが最も嫌う醜悪伯爵──ディートリヒ・ランゲの元へ嫁げと命令した。
ディートリヒは『救国の英雄』として知られる王国騎士団副団長。だが、顔には数年前の戦で負った大きな傷があった為社交界では『醜悪伯爵』と侮蔑されていた。
嫌がったカトリーナは逃げる途中階段で足を踏み外し転げ落ちる。
──目覚めたカトリーナは、一切の記憶を失っていた。
王太子命令による望まぬ婚姻ではあったが仲良くするカトリーナとディートリヒ。
カトリーナに想いを寄せていた彼にとってこの婚姻は一生に一度の奇跡だったのだ。
(記憶を取り戻したい)
(どうかこのままで……)
だが、それも長くは続かず──。
【HOTランキング1位頂きました。ありがとうございます!】
※このお話は、以前投稿したものを大幅に加筆修正したものです。
※中編版、短編版はpixivに移動させています。
※小説家になろう、ベリーズカフェでも掲載しています。
※ 魔法等は出てきませんが、作者独自の異世界のお話です。現実世界とは異なります。(異世界語を翻訳しているような感覚です)
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる