僕、逃亡中【BL】

いんげん

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最後にセックスをしておこう【性描写】

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「あー、このアパートとも今日でお別れかぁ」
 何もなくなった部屋を見渡し、夕太郎が畳の上に寝転んだ。

 今日、僕らはこの部屋を引き払って、新しく契約したマンションに引っ越す。

 僕らは、それぞれ今までとは違う未来を見ている。将来、児童養護施設で働く為に、この春から保育の専門学校に通っている僕と、国家公務員として秘密のお仕事をしているらしい夕太郎。

 僕は、そんなに変わっていないけれど、夕太郎は激変した。まず、トレードマークだったウルフカットの金髪は、黒髪になり、好青年みたいな短めショートになった。たったソレだけなのに、実は凄く美青年から、だれもがポカンと口を開く高貴な美しさに変わった。しかも、スーツを着て出て行くようになったから、もう……道行く人々が一瞬で恋に落ちちゃう感じで、凄く……凄く、気に入らない。

 毎朝「理斗、行ってらっしゃいの、ちゅーして」と、完璧なビジュアルで、間抜けな声を出す夕太郎を、ふんって顔を背けて無視している。

「理斗との思い出、いっぱい吸い込んでおこう」
 高級スーツに古い畳のいぐさを一杯くっつけながら、深呼吸する夕太郎を、呆れた顔で見下ろす。
「別に僕は、この部屋のままで良かった。夕太郎だけ引っ越せば良いのに」
 ここの家賃は、すごく安い。学生の僕でもアルバイト代で何とか払える。勿論生活はカツカツになるけど。学費は頑として譲らない兄に出して貰ったお陰で、苦学生という括りではない。

 兄の過保護さは、以前の比ではなくなった。
でも「十年失踪して、五歳下だった弟が十五歳年下になったうえに、妙な男に捕まったから仕方ない。付き合ってやれ」と桜川さんが苦笑していたのが印象深い。迷惑と心配を掛けた分、出来る限りは兄の希望に添いたい。

「理斗! 最近、冷たくない⁉ 俺は理斗の恋人でしょ。ずっと一緒でしょ」
 夕太郎が上半身を起こして、僕の腰を抱きしめるように抱きついた。
「でも、あんな凄い部屋、性に合わないよ」
都心の高級マンションは、壁も分厚くて、他の部屋の生活音など何も聞こえそうもなかった。
「住めば都だよ」
「……」

「理斗のピアノも注文しておいたよ」
 顔を上げて僕を見る夕太郎の目が輝いていた。
「は?」
「だって、授業であるのに弾けなくてヤバいって言ってたでしょ」
「そ、それは確かに言ったけど! それって昨日だし! えっ……ピアノ? キーボードとか安い電子ピアノだよね⁉ そもそも買うとも、買って欲しいとも言ってないよ!」
 最近、お金の使い方が親父さんみたいになりつつある夕太郎の肩を掴んだ。

「え? ピアノですって感じのピアノ注文したよ。コンサートホールの殿堂入りみたいなヤツにした。言わなくても買うもんでしょ。ほら、俺、プロのヒモだったじゃん? 大体話題にするだけで皆買ってくれたし、親父もすぐ用意してくれたし。これからは俺が買う方かなって。楽しいね。人に物買うのって」
 謎の国家公務員になった夕太郎の稼ぎは、幾らなのか。僕には知るよしも無い。

「馬鹿! 夕太郎のアホ! 何でもホイホイ買ったら駄目! 何やってんの⁉」
 両耳をびよーんと引っ張ったけれど、夕太郎はヘラヘラ笑っている。
「えー、良いじゃん」
「もー! 僕が就職したら、その仕事辞めなよ! 此処でまた僕のヒモ犬になって!」
「あれ? 理斗は、わんわん結構気に入ってた?」
 怪しげに微笑んだ夕太郎は、僕のズボンの股間部分に高い鼻を擦り合わせた。

「ちょっ! ち、違うよ!」
「ねぇ、最後に此処で、わんちゃんごっこ、しよーよ」
 夕太郎の唇が、ゆるっとした薄い生地のズボンの上から、僕のペニスを探るように食んでくる。

「やっ、駄目……なにやって」
 僕は、夕太郎の頭を引き剥がそうとするけれど、手で睾丸部分まで転がされて、驚いて動きが止まった。
「だってぇ、昨日は久々に起きてる理斗に会えたのに、疲れてるからってセックスさせて貰えなくて、わんわん性欲が爆発しそうで、お風呂で腰振ってたんだよ」
 恨めしそうな目で見上げられ、ズボンの中に手が入ってきた。

「そっ、そんなの、知らないよ!」
 そう言いながらも、お風呂でマスターベーションする夕太郎を想像してしまい、物理的に股間を撫でられている刺激と相まって、僕のソコが兆し始めた。

「オンボロなアパートで、必死に声を殺して喘ぐ理斗が、もう見られないのは、惜しいよねぇ」
 この部屋で、何度か大きな声で喘ぎそうになって、夕太郎の口で塞がれた。思い出すだけで恥ずかしいし、夕太郎の深いキスを思い出して、つい口がモゴモゴと動いてしまう。
 そんな僕を、意地悪な笑顔で見ている夕太郎に、悔しさでむっとした顔をする。

「怒らないで、理斗。ね、ほら……」
 僕の怒りを静めるように、隆起したペニスを取り出して、優しく撫ではじめた。
「あっ、や……あぁ」
 妖しいほど美しい男に、巧みにペニスをしごかれ、先端を舐められ、僕は自分の口を抑えながら快感に悶え始めた。

 最近の夕太郎は、果実の皮を剥くように、段々と本性を現している。僕の尻に敷かれているように見せているけど、僕は、夕太郎の掌の上で踊らされているんだ。
 僕の犬だなんて言っておいて、実は支配しているのは夕太郎の方だ。
 もちろん、ソレはセックスにおいても変わらない。僕は、深い沼にハマるように、快楽に沈められて、呼吸も出来ないし、此処が何処かも忘れてしまう。

「ふっ、うわっ! ああー!」
 ちんちんの気持ちよさに喘ぎ、精液を吐き出している間に、押し倒されて後孔を解されていた。
「理斗、もう俺の形、此処で覚えたかなぁ? 浮気すると、入れた感じが変わって分かるんだって」
 夕太郎の長い指が、僕の気持ち良い所を刺激しながら、くちゅくちゅとナカを広げている。
「んっ! な、なに? やだっ……あぁ、きこえない……ああ!」
 コリコリと痼った乳首が、夕太郎の服に擦れて、不意打ちのように気持ち良くて、自分で触りたくなるのに、禁止される。

「わんわんは、執着心強いし、嫉妬深いから、理斗に触るヤツ全員に噛みつくからね」
 そう言うと、夕太郎が僕の乳首を甘噛みした。
「うああ! あっ、ひぃ……も、もう、やぁ」
 絶頂を迎えそうだった僕のペニスは、軽く圧迫されて起ち上がれなくされて、イケない。行き場の無い快楽に悶えて「早く、入れて」と懇願すると、満面の笑みで微笑んだ夕太郎が、僕の後孔にペニスを宛がった。

「は……はやく……んっ……して」
 我慢出来ずに、強請るようにヒクヒク口を動かしているソコが、夕太郎のペニスを食べていく。
 知らなかった。こんな所にペニスを入れられて、気持ち良いなんて。
 快楽が、強すぎて、怖い事も有るなんて。

「理斗。絶対、俺以外としちゃ駄目だからね」
 今日の夕太郎は、五月蠅い。最近、同じクラスの友人宅に泊まった事を、凄く、凄く根に持っている。相手は同じクラス同士でカップルが成立している方の男子で、僕にそんな気は、無いのに。
「しない……しつこい! はやく動いて」
 ペニスを挿入しただけで、動きを止めた夕太郎の背中を叩いた。

「理斗の危機意識、死んでるからね、マジで。お兄ちゃんの野蛮さを半分くらい貰った方が良いよ」
「ひゃあ!」
 夕太郎の腰が、少し強引に打ち付けられて、突然の刺激に声が大きくなる。慌てて塞ぐけど間に合わない。
「今度の休みは、一緒に学校行くね」
「えっ……あっ……ああ、なに、言って……ば、ばか! 今、ちんちん駄目……ああー!」
「理斗の彼氏ですって、絶対的な、存在感出しておかないと……ね」
 本気で腰を使い始めた夕太郎が、支配者の顔で微笑んだ。怖くて、美しくて格好いい。
 それに、薄らと汗ばんで気持ち良さそうにしている姿は、性的な魅力が溢れすぎている。

「ゆう、たろ……良い……うっ、ああ……んっ、気持ちいいよ」
「理斗……俺も……すごく、良いよ。理斗のナカ……チンコとけそう」
 溶けそうなはずの夕太郎のペニスは、凶器かと思うほど大きくて硬い。ぷっくり膨れた僕の前立腺が、薄い膜を通して、何度もひき殺されている。

「ああー! だめっ……もう無理! やぁあ、だめっ、無理!」
 逃げ出したいのに、体格差が大きすぎて広い胸板は押し返しても、ビクともしない。どうしようもなくて、歯を食いしばって、夕太郎の腕をぎゅーっと握りしめた。
「理斗、んっ……気持ちいいね……良い……イキそう……」
「ああー! あっ、ああー!」
 自分の声とは思えないような、気持ち悪い、高い声が止まらない。もう、声……止まらない。それに、ちんちんから、漏らしているかのように精液が零れ出る。

「理斗っ……俺のちんちん絞らないで……うあ……止まんねぇ……あはは」
「ゆうたろう……やだ……やだぁ」
 絶頂したばかりの痙攣するナカに、パンパンに射精されて、熱くて広がって、ドロドロになる。頭の中まで、くる。脳みそまで犯されて、馬鹿になる。

「……」
「理斗、理斗? 大丈夫? 理斗? 戻ってきて」
 汗にまみれて髪を掻き上げた夕太郎が、僕の目の前で手を振っている。呆けている僕のナカから、何故かまだ萎えていない夕太郎が、出て行った。

「理斗、次は、狭いお風呂か、押し入れ、どっちがいい?」
「……」
 僕は、夕太郎から逃げるべく体を反転させて、うつ伏せになった。ノロノロと脱がされた服を探す。
「理斗、俺の精液に濡れたお尻が……やばいよ。このまま、もう一回」
「ちょっと黙って! 馬鹿なの⁉ もう、やっぱり別居する! 兄さんと住む!」
「理斗! 言ったでしょ。一度飼った犬は捨てちゃ駄目だよ!」
 だから捨てないで。ごめんね、ごめんね、と夕太郎が僕の背中に抱きついた。

「……お風呂入りたい」
「はい! すぐに用意します!」

 まだ、水道もガスも止めてないからね。と言った夕太郎に……最初から、今日もやる気だったのか、と呆れてしまった。
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