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前篇
仕事の最中に
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しまった、今日だったか。皆さん、ピザやチキンをとってテレビで応援するんだろう。
今、四トレイを作っているが、それもあっという間になくなる。揚がったら次のターンでさらに四トレイいってもらおう。今日はベテランのバイトだから大丈夫だ。サイドメニューはというと、デリバリーの伝票にはポテトやサンド、サラダ、ビスケットパンが多く記載されている。こりゃ忙しくなる。
今日の布陣は、厨房はベテラン一人、カウンターは由希姉と新人の四宮さん、あともう一人。デリバリーは僕を含めて三人だが、副店長が「フライヤーで指揮しろ」と言っていたから、ほとんど配達には行けないだろう。実質、二人で配達を回す。
僕は四宮さんを呼んだ。
「今日は忙しくなりそうなんだ。店内でもドライブスルーでも、とにかくパックミスに気をつけて焦らずにやってほしい。チキンがすごい早さでなくなるから、できるだけキャビネットを見て数を気にしておいて」
「そうなんですね、分かりました」
笑顔が少し強ばる。
「あ、笑顔はそのままにね」
緊張がほぐれ、さっきまでの笑顔に戻った。もう一人の女の子にも同様に伝える。
デリバリー二人には様子見ながら「配達には四十~五十分かかる」ことをお客さんに伝えるようにさせる。厨房には、これから十九時までに、一時間あたりチキン二百ピースは出るだろうと伝え、売れ残らないよう気をつけつつ作らせる。
「由希姉! フライヤー入って」
ここは僕ら二人で回す。オーダーがどんどん入ってくるので、ポテトもビスケットもサンドもフル稼働で作った。
サッカーの試合はキックオフが十九時頃のことが多い。ここから二時間、僕はサイドメニューを作りながらパックをし続けた。
結局十九時半まで、僕は一度もデリバリーに出ずにフライヤーにいた。ピークは過ぎたのか、店内もドライブスルーもあまり来なくなった。キャビネット内のチキンは二トレイ。デリバリーが三つあって、チキンは合計で二十ピース。サイドメニューもだいぶ減ったが、ここから作る時は数をぐんと減らして回せばよい。ああ、乗り切った……。壁に寄りかかって息をつくと、四宮さんが目をきらきらさせてやってきた。
「時任さん、すごいですね」
「え?」
「だって、パックしながらフライヤーやって、デリバリーの電話とって、ドライブスルーもとって、商品の数をコントロールして……」
ああ、それは副店長に鍛えられたからだ。僕も二年前に入った時は、たいしたことができなかった。初めてのバイトだったし。それで副店長に怒られていた。そこで辞める人間も多いらしいのだが、僕は負けず嫌いなので見返す気持ちで仕事を覚えた。それで「骨のあるヤツ」と評価され、いろいろ教えてもらえるようになったのだ。
でも、今振り返ると、社員が楽できる人材を育成していただけのような……まあ、いいか。「何事も継続さ」としたり顔で返した後に
「さて、片付けられるところから片付けるか……」
と、フライヤーの片方を掃除しようとした時、ポテトを揚げる網が油の中に落ちた。
「危ないっ!」
と僕は、とっさに四宮さんの体を抱き寄せる。油がはね、僕の腕にかかった。
「つぅ!!」
「だ、大丈夫ですか!?」
幸い、油がかなり冷めていたから火傷には到っていない。それでも少し痛かった。
「大丈夫大丈夫。四宮さんは?」
と言ってから気付く。彼女と体が密着していた上に、手で彼女の胸を軽くわしづかみにしていた。
「あ、ごめん……」
「い、いいえ」
お互いに顔を赤くする。その様子を、由希姉がじーっと見ていた。
今、四トレイを作っているが、それもあっという間になくなる。揚がったら次のターンでさらに四トレイいってもらおう。今日はベテランのバイトだから大丈夫だ。サイドメニューはというと、デリバリーの伝票にはポテトやサンド、サラダ、ビスケットパンが多く記載されている。こりゃ忙しくなる。
今日の布陣は、厨房はベテラン一人、カウンターは由希姉と新人の四宮さん、あともう一人。デリバリーは僕を含めて三人だが、副店長が「フライヤーで指揮しろ」と言っていたから、ほとんど配達には行けないだろう。実質、二人で配達を回す。
僕は四宮さんを呼んだ。
「今日は忙しくなりそうなんだ。店内でもドライブスルーでも、とにかくパックミスに気をつけて焦らずにやってほしい。チキンがすごい早さでなくなるから、できるだけキャビネットを見て数を気にしておいて」
「そうなんですね、分かりました」
笑顔が少し強ばる。
「あ、笑顔はそのままにね」
緊張がほぐれ、さっきまでの笑顔に戻った。もう一人の女の子にも同様に伝える。
デリバリー二人には様子見ながら「配達には四十~五十分かかる」ことをお客さんに伝えるようにさせる。厨房には、これから十九時までに、一時間あたりチキン二百ピースは出るだろうと伝え、売れ残らないよう気をつけつつ作らせる。
「由希姉! フライヤー入って」
ここは僕ら二人で回す。オーダーがどんどん入ってくるので、ポテトもビスケットもサンドもフル稼働で作った。
サッカーの試合はキックオフが十九時頃のことが多い。ここから二時間、僕はサイドメニューを作りながらパックをし続けた。
結局十九時半まで、僕は一度もデリバリーに出ずにフライヤーにいた。ピークは過ぎたのか、店内もドライブスルーもあまり来なくなった。キャビネット内のチキンは二トレイ。デリバリーが三つあって、チキンは合計で二十ピース。サイドメニューもだいぶ減ったが、ここから作る時は数をぐんと減らして回せばよい。ああ、乗り切った……。壁に寄りかかって息をつくと、四宮さんが目をきらきらさせてやってきた。
「時任さん、すごいですね」
「え?」
「だって、パックしながらフライヤーやって、デリバリーの電話とって、ドライブスルーもとって、商品の数をコントロールして……」
ああ、それは副店長に鍛えられたからだ。僕も二年前に入った時は、たいしたことができなかった。初めてのバイトだったし。それで副店長に怒られていた。そこで辞める人間も多いらしいのだが、僕は負けず嫌いなので見返す気持ちで仕事を覚えた。それで「骨のあるヤツ」と評価され、いろいろ教えてもらえるようになったのだ。
でも、今振り返ると、社員が楽できる人材を育成していただけのような……まあ、いいか。「何事も継続さ」としたり顔で返した後に
「さて、片付けられるところから片付けるか……」
と、フライヤーの片方を掃除しようとした時、ポテトを揚げる網が油の中に落ちた。
「危ないっ!」
と僕は、とっさに四宮さんの体を抱き寄せる。油がはね、僕の腕にかかった。
「つぅ!!」
「だ、大丈夫ですか!?」
幸い、油がかなり冷めていたから火傷には到っていない。それでも少し痛かった。
「大丈夫大丈夫。四宮さんは?」
と言ってから気付く。彼女と体が密着していた上に、手で彼女の胸を軽くわしづかみにしていた。
「あ、ごめん……」
「い、いいえ」
お互いに顔を赤くする。その様子を、由希姉がじーっと見ていた。
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