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後篇
ダリア・クロック再び
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僕、時任計希は、毎朝家族で最初に起きて、朝食を作る。その後、妻と娘を起こしてごはんを食べさせ、仕事に出勤する。帰ってきたらまた家事育児――という日々を送っていた。
けだるい日々だったが、ダリア・クロックのおかげで過去の恋愛を夢で体験することができた。もう壊れてしまったが、夢の出来事を支えに生活している。
その半年後――妻が娘を連れて実家に帰ってしまったのだ。
きっかけはささいなけんかだった。
ある日、妻が子供の衣替えを一緒にやってほしいと言ってきた。正直、仕事と家事育児に追われ、できないと思っていたのだが…。
「私だって一生懸命やってるんだから!」と、いつもの調子でふくれ面をされ、しぶしぶ引き受けた。
しかしなかなか時間がとれない。で、数日後に帰宅すると衣替えが終わっていた。
「あなたっていつも口先だけよね」
それにカチンときて思わず反論した。
「僕だって頑張っているよ! 仕事だって、朝の家事だって! それでもできないことがあるんだからしょうがないだろ!!」
それが引き金になった。
「じゃあ私はがんばっていないわけ!?」
「そんなこと……」
ある、と言いかけて何とか「言っていない!」と反論する。その後はお互いにヒートアップしてどうなったか覚えていない。
翌朝、朝食を作っても起きてこない妻と子をほったらかしにして出勤した。
帰ってきたら――二人はいなくて、「実家に帰る」との置き手紙だけが残っていた。
――家族を大事にしてね。
ダリア・クロックで再会した女性たちに言われたのに……。このまま別居になって離婚するのだろうか?
翌日。呆然としながら朝のルーティンをこなし、出勤した。いつもは子供の泣き声や笑い声、妻の不機嫌そうな声に心が乱れがちだ。しかし、今朝は気味が悪いほど静かで調子が狂ってしまう。
――なんで、こんなことになったんだ?
そのもやもやの矛先は妻に向く。そもそも、あいつがあんな心ない台詞を言わなかったら、僕も反論しなかった。あの女はいつもそうだ、気に入らないこと、都合の悪いことはすべて夫である僕に責任を転嫁してくる。何かをするにしても優柔不断で僕に意見を求めて、失敗したら「あなたが言ったから!」なんてこともザラだ。利己的で地に足が付いていない、母親としても失格だろう!
あんな女に育てられた子供は、どんな人間になるんだろう? 子供だけでも取り戻すか? あいつをこのままのさばらせておいていいのか?
仕事中もそんなことが頭の中をぐるぐる回っていた。
気もそぞろなまま、会社を後にする。すると、見たことのある風景の中にいた。
「あれ、あの骨董屋は……」
そう、ダリア・クロックを買った店である。気が付くと、何かに吸い寄せられるように扉を開けていた。
「こんばんは……」
以前会った老婆である。
「何かお探しで……?」
「い、いや、以前伺ったことがあって、何となく入ってしまいました……」
バツが悪そうに頭をかく。すると老婆は目を少し見開き、
「ああ、以前、ダリア・クロックをお買い上げいただきましたね」
「そ、その節はどうも……」
少し恥ずかしい。すると老婆は鋭く指摘してきた。
「お客様、まだダリア・クロックが必要のようですね」
ぎくっとした。が、本当のことなので弁解できない。
「面目ないです……」
「何、かまいませんよ。ちょうど一つ、在庫があります」
老婆は、カウンターの下から懐中時計を取り出した。ダリアの花が刻印された時計――ダリア・クロックだった。しかし、以前のものは金色だったが、これは銀色である。
「値段は以前と同じです。ただ、これは使用回数は無制限です」
「無制限!?」
「はい。メンテナンスのため、定期的にご来店いただくことになりますが……」
「買います」
僕は即答した。
その晩、早速、ダリア・クロックを使った。以前の四人の女性には会えないが、僕には懇意だった女性が他にもいる。その人たちに会えるのだろうか……?
けだるい日々だったが、ダリア・クロックのおかげで過去の恋愛を夢で体験することができた。もう壊れてしまったが、夢の出来事を支えに生活している。
その半年後――妻が娘を連れて実家に帰ってしまったのだ。
きっかけはささいなけんかだった。
ある日、妻が子供の衣替えを一緒にやってほしいと言ってきた。正直、仕事と家事育児に追われ、できないと思っていたのだが…。
「私だって一生懸命やってるんだから!」と、いつもの調子でふくれ面をされ、しぶしぶ引き受けた。
しかしなかなか時間がとれない。で、数日後に帰宅すると衣替えが終わっていた。
「あなたっていつも口先だけよね」
それにカチンときて思わず反論した。
「僕だって頑張っているよ! 仕事だって、朝の家事だって! それでもできないことがあるんだからしょうがないだろ!!」
それが引き金になった。
「じゃあ私はがんばっていないわけ!?」
「そんなこと……」
ある、と言いかけて何とか「言っていない!」と反論する。その後はお互いにヒートアップしてどうなったか覚えていない。
翌朝、朝食を作っても起きてこない妻と子をほったらかしにして出勤した。
帰ってきたら――二人はいなくて、「実家に帰る」との置き手紙だけが残っていた。
――家族を大事にしてね。
ダリア・クロックで再会した女性たちに言われたのに……。このまま別居になって離婚するのだろうか?
翌日。呆然としながら朝のルーティンをこなし、出勤した。いつもは子供の泣き声や笑い声、妻の不機嫌そうな声に心が乱れがちだ。しかし、今朝は気味が悪いほど静かで調子が狂ってしまう。
――なんで、こんなことになったんだ?
そのもやもやの矛先は妻に向く。そもそも、あいつがあんな心ない台詞を言わなかったら、僕も反論しなかった。あの女はいつもそうだ、気に入らないこと、都合の悪いことはすべて夫である僕に責任を転嫁してくる。何かをするにしても優柔不断で僕に意見を求めて、失敗したら「あなたが言ったから!」なんてこともザラだ。利己的で地に足が付いていない、母親としても失格だろう!
あんな女に育てられた子供は、どんな人間になるんだろう? 子供だけでも取り戻すか? あいつをこのままのさばらせておいていいのか?
仕事中もそんなことが頭の中をぐるぐる回っていた。
気もそぞろなまま、会社を後にする。すると、見たことのある風景の中にいた。
「あれ、あの骨董屋は……」
そう、ダリア・クロックを買った店である。気が付くと、何かに吸い寄せられるように扉を開けていた。
「こんばんは……」
以前会った老婆である。
「何かお探しで……?」
「い、いや、以前伺ったことがあって、何となく入ってしまいました……」
バツが悪そうに頭をかく。すると老婆は目を少し見開き、
「ああ、以前、ダリア・クロックをお買い上げいただきましたね」
「そ、その節はどうも……」
少し恥ずかしい。すると老婆は鋭く指摘してきた。
「お客様、まだダリア・クロックが必要のようですね」
ぎくっとした。が、本当のことなので弁解できない。
「面目ないです……」
「何、かまいませんよ。ちょうど一つ、在庫があります」
老婆は、カウンターの下から懐中時計を取り出した。ダリアの花が刻印された時計――ダリア・クロックだった。しかし、以前のものは金色だったが、これは銀色である。
「値段は以前と同じです。ただ、これは使用回数は無制限です」
「無制限!?」
「はい。メンテナンスのため、定期的にご来店いただくことになりますが……」
「買います」
僕は即答した。
その晩、早速、ダリア・クロックを使った。以前の四人の女性には会えないが、僕には懇意だった女性が他にもいる。その人たちに会えるのだろうか……?
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