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島へ
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早朝、突然、刑務官が独房の前へ来た。
「移動するぞ。出ろ。」
いつもの横柄な言葉に素直に従う。両手を万歳の形にあげさせられボディーチェックを受ける。その後、その場で手錠を掛けられる。
様子がおかしいことに気が付く。そしてついにその日が来たのかと悟る。死刑であればこのまま執行され、1時間後にはあの世に旅立つのであろう。身の毛がよだつ。
車に乗るよう指示された。次々と人が入ってくる。
15人ほど乗せた車は、出発するとしばらくの間走り続けた。外には田園風景が広がる。この風景を見るのもこれが最期なのだろうか。
全員無口のまま。全員、自分の運命を悟っているのだろう。何度もため息が漏れるのが聞こえる。うつ向き泣いている者もいる。中には開き直った様子で平然としている者もいた。目が合うとそいつはニヤッと笑った。気持ち悪くすぐに目をそらした。
3時間近く走ったのち、一行は船に乗り換えた。乗り換える際に、足に鉄でできた重りをつけられた。
船の中は物々しかった。刑務官はざっと10人以上はいた。数人の刑務官は銃を構えあたりを警戒している。この国でこのような風景を見るとは思わなかった。
船の中は、水上バスと同じような作りだった。全員が席につくと刑務官の一人が説明を始めた。
「本日、法務省より流刑執行の命令が下った。これから島へと向かう。島についたら速やかに降りる事。全員が降りたことを確認したら、手錠と重りの鍵をわたす。後は自由にすると良い。」
極めて事務的な説明に言葉を失う。船はやがて汽笛を鳴らし出航した。
出航して少しすると、全員に弁当振る舞われた。刑務所では見たこともない豪華な弁当で、開いた瞬間全員から歓声が上がった。
またしばらく船での移動が続いた。トイレの際も刑務官の付き添いのもと扉を閉める事も許されなかった。自殺、血迷った行動を警戒しているのだろう。
奥に座っている同じ年ぐらいの男がずっと小さな声で「もう終わりだ」とつぶやいていた。
隣に座った自分より5から10歳以上年上思われる男が話しかけてきた。その男は、気落ちした様子もなく堂々とした態度をしていた。刑務所内ではあなり見たことのない男だった。ギロッとした目、剃られた眉毛、少しキレ気味の態度に怖さを感じた。自分が殺めた彼らに近い印象があり、嫌悪感を覚えた。
「おい、お前、名前は?」
「シン・・・。シンイチ、ツチダシンイチです。」
小さな声でボソボソと答えた。
「そうか。俺はヨシアキだ。よろしくな。いよいよだな。で、お前は何をしたんだ。」
思わず、答えるのを躊躇した。思い出したくなかった。「あ、いや・・」とだけ答えた。
「言いたくねえのかい。まあいいや。ぜんぜん想像つかねえけど、島じゃ仲良くやろうな。」
見た目よりもいい人なのだろうか。小さな声で「はい」と答えた。
周りの人もお互い会話していた。
「島はバカンスが楽しめるらしいぜ。釣りがしてえなあ。」
「いや、生活なんてできるような島じゃみたいですよ。」
「他にも、人がいるのかねえ。」
「最期にジビエが食いてえなあ。」
「火と水の確保が必要ですね。」
しばらくすると刑務官がいつもの調子で、「うるさいぞ、無駄口は叩くな。」と怒号が飛んだ。しかし今更、懲罰など恐れる者はいない。また少しすると雑談が始まった。
4時間以上経っただろうか。やがて島が見えてきた。
■
島が見えてくると刑務官の動きが慌ただしくなった。
双眼鏡で辺りを見渡し、銃を構え警戒している。乗車時とは比較にならないほど厳重だ。
「物騒ですねえ。島の生き残りが襲ってくるんですかい?」
一人の恰幅の良いやくざ風の男が刑務官に話しかけた。刑務官は険しい顔で黙っていた。
船は減速し、障害物のない見晴らしの良い砂浜のほうへと近づいた。より一層、刑務官たちが騒がしく「異常なし」などの点呼を繰り返す。
「だって、流刑になった者には、全員ICチップ組み込まれて遠隔で監視してるんでしょ。うちらだって早々に入れられてさあ。手に取るようにうちらの状況なんてわかるんでしょ。警戒なんてする必要なんざあるんですかい?」
「うるさいぞ。少し静かにしていろ。」
男の言う通りだ。我々をそこに降ろすだけの作業にしてはあまりにも過剰な行動に見える。
「どうせ、うちらはその島に捨てられるんでさあ。何を警戒してるんか教えてくれてもいいじゃないですかい?」
「わからないのだよ。ただ、数回、得体の知れないものに襲われたことがある。」
「はい?」
聞いていた者たちは、口々に噂話を始めた。
化け物でもいるのか?亡霊でもいるのか?怨霊の呪いか?
船は砂浜の少し手前に停泊した。一人一人来いとの指示のもと、先頭から一人ずつ出口のほうへと向かった。手錠と重りを外されていた。あとはそれぞれ水の中を泳いで海岸まで行くよう指示されているようであった。一人一人に対し、声を掛けている様子で、一人5分以上時間がかかった。
「次!」
いよいよか。腹をくくり出口のほうへと向かった。手錠と重りを外しながら、丁寧な口調で刑務官は声を掛けてくれた。
「本当に、お前のようなやつが模範囚が流刑に処されることに胸が張り裂けそうな気持だ。このような状況でいう言葉ではないが元気でな。」
「はい、ありがとうございます。」
「皆に伝えていることだが、あの島は一般に言われているような島ではない。生活には苦労するであろう。その上、島の監視の話では詳しいことは知らないが受刑者が妙な亡くなり方をするようだ。監視官は、あの島を亡霊島、獄島、墓場島などとも呼んでいる。我々も数度、妙な経験をしている。受刑者を降ろしている最中に刑務員の一人が殺されたり、大怪我を負ったことがある。何か不気味な島なのだよ。どうか不幸のないことを祈る。」
言葉が出ない。背筋が凍り付く。いったいあの島に何があるというのだろうか。
「あの島には、誰かまだいるのですか?」
「いいや。監視官の話では生き残りはいないそうだ。」
「この世の中はどうにかしているよ。幸運を。」最後にそう言うと刑務官は敬礼した。僕は再度お礼を言い、海の中へとゆっくりと足をつけた。
数分置きに砂浜へと上陸する。刑務員に同じ事を言われたのだろう。島を眺めながら、お互い会話をしている。
「聞いたかい。不気味だなあ。化け物に殺されるなんて俺はもう嫌だよ。」
「ほんとだ。最期ぐらい自由に逝きたいもんだ。」
着いた者たちの様子は様々だった。島の中央を眺め呆然とする者。海で顔を洗い始める者。中には全裸になり海水浴し始める者もいた。
僕は島の様子を少し散策することにした。
砂浜は島の右のほうに位置しているようだ。とても広い。貝殻や流木、瓶やプラスチックごみが散乱していた。生活に利用できそうな物がないかと探した。広い砂浜を少し歩くと、小さな川が流れている。そこでも顔を洗いだす者がいた。砂浜の奥先には、雑草や木々が生い茂っている。その奥は船からも見ることができたが岩山となっているようで、尖った岩先が確認できる。岩には、苔のように薄っすらと木々が茂っている。岩山の方や、島の海に面した側のほうも岩山となっていて、その先を除くと断崖絶壁が見える。岩伝いに進めば少しは先には行けそうだが、おそらくその先は海しかないだろう。そこまで散策し、また最初上陸した辺りへと戻ることにした。刑務官が言った通り、何もない島だ。ここで何とか生活しなければならない。
15名。恰幅の良いやくざ風の男、チンピラ風の男、痩せこけた一般人と変わらない中年、何もしゃべらず皆から距離をとってブツブツっている若い同年くらいの男。様々だ。
全員が途方に暮れている中、やくざ風の男が全員を近くに呼び集め声を掛けた。彼の自分の名をリュウジと名乗った。
「同志たちよ。まあ、こんな状況になっちまったが、皆、最期くらい仲良くやろうじゃないか。
なんか、この島にゃ、化け物か猛獣か怨霊の類がいるらしいが、とりあえず一緒に行動しよう。まずは水、食料、寝場所がないか探ろう。」
無言のまま頷くもの、「賛成だ」と叫びついて行くもの、渋々従うものとそれぞれだったが、皆、気持ちは同じだ。一緒に島の探索をすることになった。
「移動するぞ。出ろ。」
いつもの横柄な言葉に素直に従う。両手を万歳の形にあげさせられボディーチェックを受ける。その後、その場で手錠を掛けられる。
様子がおかしいことに気が付く。そしてついにその日が来たのかと悟る。死刑であればこのまま執行され、1時間後にはあの世に旅立つのであろう。身の毛がよだつ。
車に乗るよう指示された。次々と人が入ってくる。
15人ほど乗せた車は、出発するとしばらくの間走り続けた。外には田園風景が広がる。この風景を見るのもこれが最期なのだろうか。
全員無口のまま。全員、自分の運命を悟っているのだろう。何度もため息が漏れるのが聞こえる。うつ向き泣いている者もいる。中には開き直った様子で平然としている者もいた。目が合うとそいつはニヤッと笑った。気持ち悪くすぐに目をそらした。
3時間近く走ったのち、一行は船に乗り換えた。乗り換える際に、足に鉄でできた重りをつけられた。
船の中は物々しかった。刑務官はざっと10人以上はいた。数人の刑務官は銃を構えあたりを警戒している。この国でこのような風景を見るとは思わなかった。
船の中は、水上バスと同じような作りだった。全員が席につくと刑務官の一人が説明を始めた。
「本日、法務省より流刑執行の命令が下った。これから島へと向かう。島についたら速やかに降りる事。全員が降りたことを確認したら、手錠と重りの鍵をわたす。後は自由にすると良い。」
極めて事務的な説明に言葉を失う。船はやがて汽笛を鳴らし出航した。
出航して少しすると、全員に弁当振る舞われた。刑務所では見たこともない豪華な弁当で、開いた瞬間全員から歓声が上がった。
またしばらく船での移動が続いた。トイレの際も刑務官の付き添いのもと扉を閉める事も許されなかった。自殺、血迷った行動を警戒しているのだろう。
奥に座っている同じ年ぐらいの男がずっと小さな声で「もう終わりだ」とつぶやいていた。
隣に座った自分より5から10歳以上年上思われる男が話しかけてきた。その男は、気落ちした様子もなく堂々とした態度をしていた。刑務所内ではあなり見たことのない男だった。ギロッとした目、剃られた眉毛、少しキレ気味の態度に怖さを感じた。自分が殺めた彼らに近い印象があり、嫌悪感を覚えた。
「おい、お前、名前は?」
「シン・・・。シンイチ、ツチダシンイチです。」
小さな声でボソボソと答えた。
「そうか。俺はヨシアキだ。よろしくな。いよいよだな。で、お前は何をしたんだ。」
思わず、答えるのを躊躇した。思い出したくなかった。「あ、いや・・」とだけ答えた。
「言いたくねえのかい。まあいいや。ぜんぜん想像つかねえけど、島じゃ仲良くやろうな。」
見た目よりもいい人なのだろうか。小さな声で「はい」と答えた。
周りの人もお互い会話していた。
「島はバカンスが楽しめるらしいぜ。釣りがしてえなあ。」
「いや、生活なんてできるような島じゃみたいですよ。」
「他にも、人がいるのかねえ。」
「最期にジビエが食いてえなあ。」
「火と水の確保が必要ですね。」
しばらくすると刑務官がいつもの調子で、「うるさいぞ、無駄口は叩くな。」と怒号が飛んだ。しかし今更、懲罰など恐れる者はいない。また少しすると雑談が始まった。
4時間以上経っただろうか。やがて島が見えてきた。
■
島が見えてくると刑務官の動きが慌ただしくなった。
双眼鏡で辺りを見渡し、銃を構え警戒している。乗車時とは比較にならないほど厳重だ。
「物騒ですねえ。島の生き残りが襲ってくるんですかい?」
一人の恰幅の良いやくざ風の男が刑務官に話しかけた。刑務官は険しい顔で黙っていた。
船は減速し、障害物のない見晴らしの良い砂浜のほうへと近づいた。より一層、刑務官たちが騒がしく「異常なし」などの点呼を繰り返す。
「だって、流刑になった者には、全員ICチップ組み込まれて遠隔で監視してるんでしょ。うちらだって早々に入れられてさあ。手に取るようにうちらの状況なんてわかるんでしょ。警戒なんてする必要なんざあるんですかい?」
「うるさいぞ。少し静かにしていろ。」
男の言う通りだ。我々をそこに降ろすだけの作業にしてはあまりにも過剰な行動に見える。
「どうせ、うちらはその島に捨てられるんでさあ。何を警戒してるんか教えてくれてもいいじゃないですかい?」
「わからないのだよ。ただ、数回、得体の知れないものに襲われたことがある。」
「はい?」
聞いていた者たちは、口々に噂話を始めた。
化け物でもいるのか?亡霊でもいるのか?怨霊の呪いか?
船は砂浜の少し手前に停泊した。一人一人来いとの指示のもと、先頭から一人ずつ出口のほうへと向かった。手錠と重りを外されていた。あとはそれぞれ水の中を泳いで海岸まで行くよう指示されているようであった。一人一人に対し、声を掛けている様子で、一人5分以上時間がかかった。
「次!」
いよいよか。腹をくくり出口のほうへと向かった。手錠と重りを外しながら、丁寧な口調で刑務官は声を掛けてくれた。
「本当に、お前のようなやつが模範囚が流刑に処されることに胸が張り裂けそうな気持だ。このような状況でいう言葉ではないが元気でな。」
「はい、ありがとうございます。」
「皆に伝えていることだが、あの島は一般に言われているような島ではない。生活には苦労するであろう。その上、島の監視の話では詳しいことは知らないが受刑者が妙な亡くなり方をするようだ。監視官は、あの島を亡霊島、獄島、墓場島などとも呼んでいる。我々も数度、妙な経験をしている。受刑者を降ろしている最中に刑務員の一人が殺されたり、大怪我を負ったことがある。何か不気味な島なのだよ。どうか不幸のないことを祈る。」
言葉が出ない。背筋が凍り付く。いったいあの島に何があるというのだろうか。
「あの島には、誰かまだいるのですか?」
「いいや。監視官の話では生き残りはいないそうだ。」
「この世の中はどうにかしているよ。幸運を。」最後にそう言うと刑務官は敬礼した。僕は再度お礼を言い、海の中へとゆっくりと足をつけた。
数分置きに砂浜へと上陸する。刑務員に同じ事を言われたのだろう。島を眺めながら、お互い会話をしている。
「聞いたかい。不気味だなあ。化け物に殺されるなんて俺はもう嫌だよ。」
「ほんとだ。最期ぐらい自由に逝きたいもんだ。」
着いた者たちの様子は様々だった。島の中央を眺め呆然とする者。海で顔を洗い始める者。中には全裸になり海水浴し始める者もいた。
僕は島の様子を少し散策することにした。
砂浜は島の右のほうに位置しているようだ。とても広い。貝殻や流木、瓶やプラスチックごみが散乱していた。生活に利用できそうな物がないかと探した。広い砂浜を少し歩くと、小さな川が流れている。そこでも顔を洗いだす者がいた。砂浜の奥先には、雑草や木々が生い茂っている。その奥は船からも見ることができたが岩山となっているようで、尖った岩先が確認できる。岩には、苔のように薄っすらと木々が茂っている。岩山の方や、島の海に面した側のほうも岩山となっていて、その先を除くと断崖絶壁が見える。岩伝いに進めば少しは先には行けそうだが、おそらくその先は海しかないだろう。そこまで散策し、また最初上陸した辺りへと戻ることにした。刑務官が言った通り、何もない島だ。ここで何とか生活しなければならない。
15名。恰幅の良いやくざ風の男、チンピラ風の男、痩せこけた一般人と変わらない中年、何もしゃべらず皆から距離をとってブツブツっている若い同年くらいの男。様々だ。
全員が途方に暮れている中、やくざ風の男が全員を近くに呼び集め声を掛けた。彼の自分の名をリュウジと名乗った。
「同志たちよ。まあ、こんな状況になっちまったが、皆、最期くらい仲良くやろうじゃないか。
なんか、この島にゃ、化け物か猛獣か怨霊の類がいるらしいが、とりあえず一緒に行動しよう。まずは水、食料、寝場所がないか探ろう。」
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どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
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