愛用の大剣が銀髪美少女になった元傭兵は魔獣を狩る

日諸 畔(ひもろ ほとり)

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第2章 魔獣狩り

第32話「魔獣狩りですね!」(第2章 魔獣狩り 完)

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 部屋に取り残され男二人の間には、微妙な空気が漂っていた。少なくともリュールは、このままさぐり合うような会話をする気分にはなれない。

「結論だけ言うぞ」
「ああ、助かるよ」

 どうやらマリムも近しいことを考えていたようだ。男同士の不可思議な合意が、話を前に進ませた。

「魔獣狩りと言ったやつ、引き受けてもいい」
「そうか。嬉しいよ」

 リュールの言葉に、マリムは顔をほころばせる。やっと本音が見えた気がした。

「ただし、あんたの手下になるつもりはない。あくまでも契約だ。あんたは俺に情報を提供して金を出す。俺は魔獣を斬る。それだけだ」
「ふむ……」
「問題でも?」

 首を傾けるマリムに、リュールは不穏なものを感じた。何か不利な条件でも突きつけるつもりなのだろうか。

「リュール殿には、私の騎士団に入団してもらおうと思っていたのでね」
「あ? それは嫌だね。群れるのはごめんだ」

 かつて身を寄せていた傭兵団を思い出す。レミルナも雑用係として働いていた傭兵団だ。あんな喪失感は二度と味わいたくない。

 リュールのような傭兵は、騎士団に良い印象を持っていない。マリムが率いるゼイラス騎士団が他と違うのは理解できる。しかし、騎士団は騎士団だ。貴族の次男で構成された騎士団が出す酷い命令で、何度死地に放り込まれただろうか。積み重なった恨みを忘れることはできない。

「入団といっても、形だけのものだから安心してもらいたい」
「どういうことだ?」
「説明させてほしいが、いいかな?」
「ああ」

 マリムの説明によると、騎士団の組織は一枚岩ではないらしい。名誉職である通常の騎士団はふたつあり、それぞれ権力を争っているとのことだ。
 マリムは戦争中からその構造は変わっていないと言う。そんなことにまったく興味がなかったリュールは、全て初耳だった。

「くだらねぇ話だな」
「私もそう思うよ」

 平民で構成されたゼイラス騎士団は、その派閥争いから外れたところにある。一応は正規軍との名目だが、実戦のみに特化した集団の扱いは傭兵と大差なかった。

「我が騎士団は、軍事管理府からの許可がなくては動けなくてね。今は魔獣の駆除を一任されている」
「ほぅ」
「何か事態が動けば報告の義務があるというわけなんだ。でも、幸いにも団員の管理は一任されていてね。例えば、レミィやレピアのこととか」
「そういうことかよ」

 剣が人になるなんて貴族共に知られたら、必ず面倒なことになる。ましてや、傭兵出身の者であるなら、無茶に利用されるのは明白だ。

「どうだろうか? 我が騎士団に入団するというのは。報酬と情報は保証するよ」
「下手くそな勧誘だな」
「交渉は苦手でね」

 リュールはにやりと笑ってみせた。先程までの不快感はどこかに消えていた。今は姿を隠しているあの三人のおかげかもしれない。

「俺が欲しい情報はみっつだ」
「聞こうか」
「魔獣の居場所、魔獣の正体、剣が人になる意味」

 リュールは指を三本立てた。マリムは興味深げにそれを見つめた。

「ふむ、後ろふたつは我々も知りたいところだね」
「知ったら共有だ。この約束を守る条件で、形だけ所属してやる」
「ああ、わかったよ」

 マリムが右手を差し出した。リュールは乱暴にそれを握った。
 それと同時に、応接室のドアが勢いよく開く。

「リュール様! この人たち意外と話が通じます……あれ?」
「おう」

 手を握る男同士を見て、ブレイダは驚いた様子だ。それもそうだろう、リュール自身も不思議な光景だと思う。

「俺達は今日から魔獣狩りというわけだ」
「魔獣狩りですね! よくわかりませんが、わかりました!」

 応接室に、少女の元気な声が響いた。


第2章 魔獣狩り 完
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